さて、私が訪問した学童保育で出会った自閉症スペクトラム(ASD)の男の子。見た目は全く普通の子供と変わらないのですが、心はASD特有の初めての環境に強い緊張を抱いてしまう“感覚過敏の持ち主です。
   この子は現在通常学級に在籍していますが、世の中には同じように、見た目は普通の子供と変わらず通常学級に在籍している感覚過敏のASDの子供がたくさんいます。
   実は、そういう感覚過敏の子供が不登校に陥るケースが増えています。私も以前勤務していた学校で、担任していたわけではないのですがそういう子供と複数人出会ってきました。学級替えがあり新しい担任の先生強い言葉で子供を叱る先生だったり、それまで子供たちの間では問題なく使われており中学生でも流行っていたからかい方を担任の先生から「それはいけない行動です」と急に禁止されたりした為に、不登校に陥ったのです。いずれもそれまでの環境から急に厳しい変更を余儀なくされたために、感覚過敏の特質がその環境に拒否反応を示した結果です。ASDの傾向の弱い他の子供達は多少の変化や強い言葉にも対応できるので、「子供によって感じ方が違う」という考え方がなかなか浸透していない教師は、それ以外の子供と同じ様に接してしまうのです。
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   以前は障害を抱える子供は“特殊学級”だけにしかいないとされて来た「特殊教育」だったのですが、平成19年からは、“通常学級”にも発達障害の子供がいて、その子供たちのニーズに応じた支援をするという「特別支援教育」に変わっています。ですから、見た目は普通と変わらなくても感覚過敏のASDという障害を持った子供が不登校に陥ってしまうという状況は、「特別支援教育」の趣旨とは逆行するものなのです。
   しかし、現実には教師の基本的なスタンスは「特殊教育」の頃と変わりはなく、発達障害の子供も「問題のある困った子」という扱われ方をされているのが現実です。本当は「問題を抱えて困っている子」なのですが…。

   では、ASDの子供でも安心して登校できる学校にする為には、どの様にすればいいのでしょうか?実は、過去にそのことに関わる投稿を以下の記事から3回に渡って行っています。

   これらの記事で示している学校づくりの柱は次の3つです。
①子どもの特性を理解しそれに配慮した支援
②子どもに情報を伝えるときは、はっきりと具体的に伝える支援
③子どもが安心できる教師のオーラを作る支援

   なおこれらの支援は、ASDの傾向の強い子供だけに施すということではなく、ASDの子供が安心できるこれらの支援を全ての子供に対して行うというユニバーサルデザインの考え方に立って行うものです。俗にいう「特別でない特別支援教育」と呼ばれる考え方です。詳細は上記記事(①〜③)をご参照ください。