「愛着」を形成する1歳半の時期を過ぎたからと言って、まだ安心できるわけではありません。それに続いて「母子分離」という課題が待っています。

◯「母子分離できるか?母子融合に陥るか?
   2歳ごろから、子どもは一旦「母子分離」を始めようとしますが、3歳ごろ再び母親にベッタリになる「最接近期」を迎えます。この時子どもは、外界を探索したいという気持ちと、母親に頼りたいという気持ちとの間で葛藤します。この葛藤を乗り越えられないと、母親との“共生状態”に逆戻りしてしまい、「母子融合子どもがお母さんから離れられない状態の状態に陥ってしまいます。その場合、子どもは母親に執着し依存する一方で、「自我の芽生え」を背景として母親に対して攻撃的になり、“依存”と“反発”の入り混じった状態を示しやすくなります。

◯“母子の密着”によるつまずき
   そこで、この「最接近期」に親が上手に支援し、無理なく「母子分離」を果たさなければなりません。例えば、子どもが困難を感じていないのに、子どもに手をかけ優しくする態度を見せてしまったり、子どもが困って母親に助けを求めている態度を見せた時に、すぐに親が子供を引き寄せてしまったりすると「母子分離」ができません。
   また、「最接近期」での葛藤を乗り越えられない要因が父親にあるケースもあります。本来父親は「母子分離」の導き役を担うとされているため、この時期に父親が仕事の都合などで育児に参加しないでいると、母親にベッタリの「マザコンや、子供にベッタリの「毒親」が生まれてしまう危険があります。父親が子育てから距離を置き、母親と子供が密着する環境を作ってしまったために、子供に対して否定的・支配的な養育をしたために、子供が母親に対する怒りを爆発させて、まるで自分の所有物のように支配してしまった事例もあります。

◯「愛着不全によるつまずき
   逆に、この時期に赤ちゃんが母親の仕事の都合等で無理やり母親から離されるという体験をすると、「愛着」に傷が残り、母親と離れることに対する不安感が強く尾を引きやすくなります。そこで、「お母さんが見ていてあげるから、がんばってごらん」と、「安全基地」の存在を保証したうえで、少しずつ「分離」課題に取り組ませ、できたら褒めてあげるようにしましょう。お父さんが導き役をする場合でも、お母さんが見ている状況下で少しずつ父親と関わる量を増やすような配慮があるといいでしょう。
   また、「愛着形成」が十分になされていない場合も、母親との“愛の絆”ができていない状態で「母子分離」を迎えることになるため、母親から離れることは難しくなるでしょう。
 
母親から離れられない子供達
   これまでにお話ししたように、母子が密着し過ぎたり、無理な「母子分離」を強要した事で「愛着不全」に陥ったりした為に「母子分離」が達成されないと、保育所や保育園などの外部施設に送り出そうとした時に、泣き叫んで母親から離れられなくなったり、小学生になっても母親が学校のどこかにいないと登校を続けられないということが起きる場合があるので注意が必要です。

母子分離が達成されていない時の対策
   仮に、「母子分離」が達成されていないために問題症状が現れている場合、原因が“母子の密着”であれば、父親が子供と沢山遊んだり「自立4支援」で対応したりする事が有効です。また、原因が「愛着不全」であれば、母親との「愛着(愛の絆)」を強める「愛着7」のような愛情行為を意識して子供に接する事が大切になると思います。

◯“マザコン”の大人達
    母子分離が達成されないまま育った子ども達は、大人になっても母親とベッタリの“マザコン”人間になります。街中でも、男子であればまるで“恋人”のように、女子であればまるで“姉妹”のように振る舞い、更に親の意思決定を優先して物事を自分で判断できない人間になってしまいます。