この「ダイジェスト記事」とは、私がこれまで投稿してきた数多くの記事の中から、特に重要な内容を取り上げ編集し直したものです。

   今回は、「【愛情の基本】 〜子どもとの愛着を形成する“母性”の働き『安心7支援』〜」です。


 因みに、“父性”については「【子どもの自立】~子どもの活動を見守り自立を促す“父性”の働き「見守り4支援」~」でお話ししています。

 なお、母性が不足すると親子間の心理的距離が遠過ぎる「回避型」愛着不全に、父性が不足すると親子間の心理的距離が近過ぎる「不安型」愛着不全に、それぞれ陥るリスクが高まると考えられます。父母両性のバランスを適切に保つことは、子どもが健全に成長するうえで必要不可欠なのです。


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   精神科医の岡田尊司氏は、「子どもとの愛着形成が最もスムーズに行われる0歳から1歳半の間(⇨以下「7. 『安心7支援』は愛着形成のやり直しができる支援」参照)に適切な養育を受けた子どもは、母親との間に「愛着(愛の絆)」を形成することによって、人間関係能力や自立心等の様々な力を獲得するとともに、一生に渡って安定した人格の下で生活することができる」と指摘しています。
   ところで、この中で言う「適切な養育」とは子どもとどのように接することなのでしょうか?

 
【以下内容目次】
「安心7支援」は子どもと“愛の絆”で繋がり、“安心感”を与える支援
「安心7支援」の7つの支援方法
3. 「安心7支援」は“母性”の働き
4. 「安心7支援」は意識的・意図的に行う支援
5. 「安心7支援」は子どもが大人のことを好きになる支援
(以下、パートⅡ)
6. 「安心7支援」は子どもの自己肯定感を高める支援
7. 
「安心7支援」は発達障害や精神的に不安定になっている子供をも安心・安定に導く支援
8. 
「安心7支援」は愛着形成のやり直しができる支援
9. 「安心7支援」はより”で勝負できる支援
10. 「安心7」は人間対人間の間で愛着を結ぶ支援


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「安心7支援」は子どもと“愛の絆”で繋がり、“安心感”を与える支援
「どのような養育をすれば母親との
愛着(愛の絆)を形成できるのか?」を明らかにするために、先の精神科医の岡田氏をはじめとして、愛着理論の
専門家5人各氏の提案する「愛着」形成の仕方を比較してみたところ、彼らに共通する点、及び、特に重要と思われる点は、主に以下の7つの事柄でした。
   子どもとの間に愛着(愛の絆)を形成し、子どもの脳内に幸せホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」を分泌させ、一生に渡って子どもの人格を支える源となる“安心感”を育むための以下の7つの愛情行為を「安心7支援」と命名したいと思います。

「安心7支援」の7つの支援方法
   以下に「安心7支援」の具体的な支援方法について紹介します。
 なお、それらでは「子どもから◯◯された時には…」という記述をしています。これは、親の方から過度にアプローチしていると、過保護や過干渉になる場合があることに配慮したものですが、子どもの実態によってはその限りではありません。

①子どもからスキンシップを求められた時には、その求めに応じる
  “抱っここそが、子どもにとっての“安心の原点”であると同時に、母子間の愛着(愛の絆)を安定させるうえで最も重要な愛情行為であると言われています。10歳くらいまでなら「5分間抱っこ」等のような毎日のルーティンも取り入れることも可能です。
   また、抱っこ以外にも、ハイタッチ(子どもががんばった時、親子で共感できた時等のルーティンとして)、ハグ(就寝前や登校時など毎日の習慣として、強く叱った後)、手を繋ぐ(外を歩く時)、頭をなでる(褒める時)、じゃれ合う(テレビを見る時)、背中に優しくふれる(子どもを寝室等どこかに誘導する時)、等の様々な方法があります。
   日頃から、子どもに安心感が不足しないように、子どもの年齢に応じたスキンシップを積極的に図りましょう。

子どもから声をかけられた時には、子どもをきちんと見る
「ねえお母さん、みてみて!」
お母さんからの愛を欲している子ども達は皆そう願っています。つまり「見る」という行為は、子どもに「愛情を注ぐ」うえでとても重要な役目を果たします。超能力者ではないのですから、子どもを見ずして、大人の愛情を伝えることは絶対にできないのです。
   特に、子どもから声をかけられた時は敏感に反応し、そちらに視線を送りましょう。どんなに優しい言葉であっても、スマホ等に気を取られ、子どもを見ないで語りかける親に対して子どもは愛の絆を感じることはないでしょう。

子どもを見る時には、子どもに微笑む
「安心7支援」の行為の中で最も日常的に実践でき、子どもが抱く親の印象を劇的に変えることができる支援です。子どもはいつ親を見るか分からないので、子どもと同じ空間にいる時は、日常的に口角を少し上げることが癖になるようであればベストですが、最低限②のように子どもに声をかけられ視線を向けた時には心がけましょう。
   母親の笑顔は、子どもの自己肯定感を高めると同時に、子どもから次の五つの力を引き出すと言われています。「笑顔が増える」「自信がつく」「積極的になれる」「友達と仲良くできる」「家族の交流が親密になる」。母親の笑顔は子どもにとってはエネルギーの最大の素なのです。

子どもから話しかけられた時には、子どもの話を最後まで否定せず、うなずきながら聞き、その事に共感する
   子どもは様々な不安を抱えていて、そのために生き生きとした活動が出来ないでいます。その不安を取り除くためは、子どもの話に共感することは何より大切です重要なのは話を最後まで否定しないで聞くこと。指導する必要があれば、その後に穏やかに話して聞かせれば子どもは受け止めることが出来ます。
 また、子どもの失敗も否定せず受け止める親でなければ、「いじめられるのは自分が弱いから」と考えがちな子どもはいじめ被害の相談はできません。誰にも打ち明けることができなかった子どもが自らの命を断ってしまったケースも少なくありません。子どもの話を否定しない親は、いざという時に子どもの命をも守るのです。
 その際は“うなずきながら聞く”ことが大切です。うなずく行為が、五感情報の中で最も情報量が多い視覚情報となって子供に届きやすくなります。
 また、親も様々なストレスを抱えていて、つい話したそうにしている子どもに気付かないでいることがあります。しかし「子どもの話を聞くことが大切」と意識していれば、アンテナが敏感に働くようになります。

子どもに指示や注意をする時には、子どもに穏やかな口調で話しかける
   親が何気なく使う「うるさい!」「はやくしなさい!」「何回同じことを言わせるの!」等の子どもに対する否定的な言葉は、家庭生活の中で最も親子間の愛着(愛の絆)を不安定にする行為と言われています。親によるこのような行為は、実は、戦後高度経済成長期に始まった「核家族化」が“母子の密着”や“母親による子の支配”を生み出した頃から見られていたものであり、それが現在の「8050問題」に繋がっていると考えられます。このことは、同様に叱られ続けている今の子ども達が中高年になった頃の姿を占っているとも言えるのです。
    特に注意が必要なのは、どうしても語調が刺激的になりやすい指示注意をする場合です。言い方としては「……しなさい!(命令形)」ではなく、「……しようね(誘導形)」(例:「早く食べなさい!」⇨「早く食べようね」、「もっと勉強しなさい!」⇨「もっと勉強しようね」等)等が適切です。言い方を気をつけることで、語調も自ずと穏やかになると思います。

子どもの中にある良さを探して褒める
    親の価値基準(「ここまで出来ないと褒めるに値しない」等)で子どもを評価せず、子どもの中にある良さや伸びを探して、それを積極的に評価しましょう。
   基本は、日頃からその子なりの良さを褒めたり(「さすがは○○、生き物に詳しいね」「さすがは○○、やさしいね」等)、その子どもの以前と比べてよくなった点を見つけて褒めたりすることです。(「前よりも点よくなったね。」「先週よりも忘れ物が回減ったね。」等)


⑦以上の中でやると決めたものは、いつも心がける
   以上の①〜⑥の行為から、どれか一つを選んで実践しても効果があります。例えば、「子どもを見る時には子どもに微笑む」を意識するだけでも、子どもが親から受ける印象はガラリと変わります。慣れてきたら、またできそうなことを一つ増やせばいいのです。
   ただし、親の気分でやったりやらなかったりすると、子どもは「あれ?お母さんの様子がこの前と違うよ。次は何て言うんだろう?怒るのかな?」と不安になり、それがストレスとなります。やろうと決めたことは出来るだけいつも心がけましょう。
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 なお、上記の各支援方法では、冒頭に「子どもから〇〇された時には」と言う“条件”を示しているものがあります。
 精神科医の岡田氏は「赤ちゃんがまだお腹が空いていないのに親が無理にミルクを飲ませようとしたり、求めてもなかなか与えてもらえなかったりすると、世話をしてくれる存在に対して、違和感や不快さを感じてしまう」「求められていないのに、口出ししたり、与えたりする事は、本人の主体性を侵害する事になる」として、「求められていないことに応えることは慎む」と指摘しています。
 また、忙しい親にとっては、「常に〇〇しましょう」とされるよりも、場面を限定される方がハードルが下がり、負担も減ることも予想されます。
 そのような理由から、敢えて場面の条件を加えました。

3. 「安心7支援」は“母性”の働き
   親が自分と子どもとを愛着(愛の絆)で繋ぐ、という「安心7支援」による行為は、
「母親が子どもの求めに応じてそれを受け入れ応答する」という“母性”の働きと、“母親が子どもの心と自分の心を結びつける”という点において共通するものと考えられます。
   そこで、本ブログでは「“母性”の働きとは、『安心7支援』の行為によって子どもとの間に安定した愛着を形成することである」とし、「安心7支援」の行為が母親による愛情行為と捉えることにしたいと思います。

   なお、子どもとの間に愛着を形成した母親は、子どもにとって精神的な「安全基地」としての働きを持つことになります。母親に対するこの意識は、日常的に上記①〜⑦の子どもに対してあらゆる肯定的なメッセージを送る愛情行為(①「スキンシップ」は子供に「あなたのことが大好き」と伝える行為、②「見る」は「あなたに関心がある」、③「微笑む」⑥「褒める」は「あなたのことを良い子だと思っている」、④「聞く」は「あなたの気持ちを受け入れている」、⑤「穏やかに話す」は「あなたを攻撃しない」、⑦「いつも同じ」は「あなたへの愛情は変わらない」)を施しておくことで得られる“信頼感”に裏付けられるものです。「お母さんは自分のことを良い子だと思ってくれている」という経験を繰り返すことで初めて「お母さんはいつも安心できる人」という“信頼感”を得ることができるのです。
 子どもは時々、自分から母親に声をかけたり母親の体に触れたりすることがありますが、それこそが、子どもが不安感を抱いた時の安全基地」への緊急避難行動です母親はそういう時にこそ、その求めに応じて対応しなければならないのです。

4. 「安心7支援」は意識的・意図的に行う支援
   先に紹介した行為は、誰もが普段から行っているものばかりですが、それはあくまで無意識です。例えば、ふと子どもを見たとしても、その後またスマホに気をとられればすぐに視線を外してしまうでしょう。また、子どもと話す時にも、「微笑みに気をつけて」と誰かから釘を刺されでもしなければ、微笑んで話すという人は少ないのではないでしょうか。つまり、現実には「え?こんなことが子どもの成長に影響するの?」という人がほとんどだと思うのです。
   しかし、実はそれらの行為が子どもとの“愛の絆”を築くうえで重要なものであると知ることによって、意図的・効果的に愛着形成を行うことができるようになります。

5. 「安心7支援」は子どもが大人のことを好きになる支援
「安心7支援」で接していると、その子どもとの間に愛着(愛の絆)が形成されますが、具体的な効果としては、その大人のことが好きになり、その大人の言うことを聞こう、守ろうと考えるようになることが考えられます。
   
更には、その大人の真似をしようとする場合もあります。例えば、苦手な食べ物があっても、その大人がそれを食べているのを見ているうちに、自分から食べるようになることもあります。

(以下、「パートⅡ」に続く)