これまでのようにみてくると、愛着不全には、大きく分けて「回避」タイプと「不安」タイプの二つのタイプがあることが分かります(子どもの愛着タイプである「混乱」と、大人の「恐れ・回避タイプは、「回避」タイプと「不安」タイプが入り混じったタイプ)。
   これまで見てきた各タイプについて、それぞれ乳幼児期にどのような支援をすればいいのか、各々のタイプが抱える問題の原因をもとに私なりに考えてみました。

「安定型」愛着スタイルに導くために
   まずは「安定型」です。
   この愛着パターンを持つ人は、大人になってから、人のことを信頼し敬意を払うとともに、他者からどう思われているだろうなどと疑わない心の真っ直ぐなタイプになります。また、物事に向かう姿勢も素直で前向きであり、他人と論じ合う時でも、相手への敬意や配慮を忘れません。
   子どもの頃は、母親が「安全基地」としてうまく機能することによって、子どもが母親を信頼して「愛の絆」を作り、安心して探索活動をします。そのためには、母親が普段からできるだけ赤ちゃんの側に居るように心がけ、「愛着7」で世話をすることが大切です。赤ちゃんがどんなに泣いていても「何か困ったことがあったんだな。かわいそうに」と思い、否定的に捉えず問題を解決してあげることが大切です。また、愛着の形成にとって最も大切なことは「抱っこ」です。赤ちゃんが機嫌がいい時にも、できるだけ抱っこをして「愛着7」で接しましょう。

◯「回避型」愛着スタイルに陥らないために
   次に「回避型」です。
   この愛着パターンを持つ人は、大人になってから、距離をおいた対人関係を好むタイプになります。また、基本的に面倒くさがり屋なので、できるだけ葛藤を避けようとする面があり、人とぶつかり合ったりする状況になると、自分から身を引くことで事態の収拾を図ろうとします。更に、何に対してもどこか醒めており、パートナーの苦しみにも平然としています。また、幼い頃から親から受けた否定的・攻撃的な叱責に対する怒りが要因となって、周囲への反抗攻撃性という問題を起こすことが多いです。
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   回避型は、親が子どもにあまり関心がなく放任してしまうことで、親からの助けを求めることをあきらめてしまうことで陥ってしまうタイプです。ですから、赤ちゃんが何かで困って泣いているときは、できるだけ早く駆けつけて問題を解決してあげる必要があります(お母さんが駆けつけるまでの時間が長ければ長いほど「愛着」形成は難しくなります)。そのためには、できれば「愛着(愛の絆)」形成の限界時期(「臨界期」)とされる1歳半までは母親ができるだけ近くにいて世話をしてあげる事が望ましいです。何かの家事でなかなか手が離せないときに、「今行くから、ちょっと待っててね」ということがいつも繰り返されると、たとえその後お世話に駆けつけても、お母さんを求め続けた赤ちゃんの不安とストレスは大きく、愛着の形成にとっては不都合です。赤ちゃんが泣いたときは、できるだけ早く駆けつけて世話をしましょう。そのためには、母親が育児に専念できる生活環境を作る必要があります。お勤めされているお母さんは、仕事との関係は避けては通れないとは思いますが、乳児期に「愛着(愛の絆)」を形成できるかどうかは、子供の一生に関わることなので、出来るだけ「育児休業」をとってお子さんの側にいてあげて欲しいと思います(現在では「育児介護休業法」によって、最低1年間取得でき、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます)。また、「抱っこ」や「微笑み」をたくさん施して、養育の「質」を上げることが大切です。
   また、精神科医の岡田氏が最も多くの家庭で行われている養育」と危惧するのが、常に否定的・攻撃的な言葉(「バカ!」「ちゃんとしなさい!」「何やってるんだ!」)を子供にぶつける養育です。これも、子供の「安全基地」を「危険基地」としてしまい、子供に不満と怒りを蓄積させると共に、“人間不信”な大人にしてしまいます。

   なお、これらの事を妨げると思われるのは、以下の点です。更に、今回は「まとめ」の章という位置付けなので、これまでの投稿の中から、対策となり得る記事を(⇨)として示しました。
「愛着(愛の絆)」形成にとっての1歳半までという期間が持つ意義の認識不足
「愛着(愛の絆)」形成にとっての母親という“特定の存在”の必要性の理解不足
「愛着(愛の絆)」が子供の一生に与える影響の大きさ
1歳半までの養育のポイントの理解不足
否定的・攻撃的な言葉が「愛着」に悪影響を与える事の理解不足
母親が育児に専念できる生活環境作りの難しさ
育児に対するわずらわしさ