【今回の記事】

【記事の概要】

   母との抱腹絶倒なメールのやりとりを紹介した『84年製ゲイうっちーと母・みちよのメールが面白すぎる件』の著者であり、Twitterでは10万フォロワーを有する“うっちーさん”が経験した反抗期の出来事

 「うちの母の教育法はすごい」と前置きして紹介されたこの内容は、約6万ものRTをあつめ、「母つよいw」「私も同じ事されました」「将来もし言われたらしてみたい!」「その手があったか」「こんな親子関係私もつくりたい」といった反響がよせられています。他にも「子供が恥ずかしいと思う事をなんでするのかな?」という意見も。

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   反抗期と言うと、子供が精神的独り立ちをするための大切なプロセスと言われていますが、時に反発が大きく家族の悩みとなる事もあります。しかし、一方では「クソババアと呼ばれたら子育て成功の証」とポジティブに捉える考え方もあり、家庭によってはうっちーさんのように盛大に祝われる事も。

 寄せられた意見では賛成、反対と色んな考えが語られています。実際のところ、この方法が全ての子に受け入れられるわけではありませんが、少なくともうっちーさんの場合に限って言えば、その後反抗期が即終了して今では母子仲良しである様子でわかるよう、この対応は決して間違いではなかったようです。された側のうっちーさん自身が「うちの母の教育法はすごい」と言ってるぐらいですし。「子育て方法は一人一人の個性にあわせて」とよく言われますが、息子の個性を知り尽くしているからこそ、逆手にとっての行動だったのかもしれません。


【感想】

   このお母さんの“反抗期教育法”には賛成できる面とそうでない面とがあります。


   まず、賛成できる面ですが、反抗期を発達段階における正しい成長の証と捉えている点です。我が子の成長を喜ぶ姿勢は共感できます。


   次に、賛成できない面ですが、それは、息子さんが自分の考えを主張する場面を奪ってしまっているです。

   確かに、子供が反抗期を迎えた時に、親が高圧的な態度をとると、それに触発されて子供は余計に反発するようになります。それを逆手にとっての「祝!反抗期」作戦だったのだと思います。子供からすれば、自分が親に対して反抗した時に、このような「のれんに腕押し」のような対応をされると、反抗することが無駄な行為に思えてくるでしょう。

   しかし、そもそも反抗期というのは、親に反抗することが目的ではありません。確かに、反抗期以前と同じように子供に接していると、子供が反抗的な態度を示すことが多い為「反抗期」と命名されているだけであり、本来の目的は、第二反抗期が「自我の発達」と言われるように、子供が自分の考えを“成長”させる事です。その為には、その大人に近づいた自分の考えを発信する、つまり主張する場を与えなければならないのです。その主張を受け止め、それを自分と対等の一人の人間の発言として認めてやるのが親の役目です。

   子供は自分が主張した発言を否定されれば反発しますし、「あなたもそんな事まで考えられるようになったのね」「もっとあなたの考えを聞かせてちょうだい」等と認めてもらえれば自分の考え自信を持つことができます。それが“成長”です。親のこの“受け止め・承認行為”が無ければ、子供は自分の考えが正しいのか正しくないのかを自己評価する事が出来なくなる、つまり自身の成長自覚する事が出来なくなるのです。


   更に、された側のうっちーさん自身は「うちの母の教育法はすごい」と言っていますが、もしかしたら「母親の方が1枚上手だった」くらいにしか思っていないかも知れません。その結果、親に自分の考えを主張する機会をたった1日で奪われてしまったのですが、実はそれが自分の成長にとって大きなマイナスであったということ等知る由もなかったと思います。

   子供によっては、赤飯をたかれたり、家のポストに「反抗期の息子がいます」等と張り紙を貼られたりすると、子供は自分が馬鹿にされているという印象を受けるかもしれません。せっかく子供の成長を喜んだ事さえ、ただの“からかい行為”と思われてしまうでしょう。


   反抗期には、子供を成長させる大切な目的があるのですね。

   因みに、今回の記事の事例は第二反抗期でしたが、「自我の芽生え」と言われる「第一反抗期」については、以下の記事を参照ください。

愛着の話 No.57 〜反抗期の接し方①〜

何でも「ぼくがやる!」の息子にあるおばあさんがかけた一言 〜各反抗期おさめる大人の態度〜


   また、今回の「第二反抗期」、さらに「中間反抗期」と呼ばれる時期については以下の記事をご参照ください。

愛着の話 No.58 〜反抗期の接し方②〜


【補足】

   先日、箱根駅伝4連覇を達成した青山学院大学の原監督があるテレビ番組でこう言っていました。
「最近の子供たちは良い子が多いが、自分の“”を出さない子が増えている」
もちろん原氏が言うところの“”と言うのは、自分勝手なわがままを言うことではなく、自分の考えを正しく主張する態度のことです。今回の事例のように自己主張の場を奪われた子供はもちろん、感情的になって親に反抗していた子供にも育たないものです。正しいの出し方を学ばない子供が増えれば、原氏のいう事も当然の結果と言えるかも知れません。