(この「愛着の話」は精神科医の岡田尊司氏を中心に、各専門家の文献を、内容はそのままに、私が読みやすい文章に書き換えたものです)


○第二反抗期
   第二反抗期は、十三歳前後から始まります。第一反抗期が「自我の芽生え」と表現されるのに対して、第二反抗期は「自我の発達」と呼ばれます。つまりこの時期は、子どもから大人への変化の時期にあたり、「もう自分は子どもではない」「自分なりの考えがあるのだ」という気持ちが生まれます。
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これも発達上、正常な現象ですから、決して頭ごなしに否定したり叱ったりしてはいけません子どもが大人としての主張ができるようになった証と捉え、子どもの考えを尊重して受け止めましょう。また、これまで親や教師に言われてきたことが本当かどうかについて、自分の力で検討し直す力が育ってきたと捉えることもできます。「あなたももう自分なりの考え方ができるようになったのね。お母さんにあなたの考えを聞かせてちょうだい」等と受け止めるといいのではないでしょうか。
   とかく親や教師は外面的なしつけをすることが多いものです。そのことに対して、この時期の子どもは、自分の内面に動いている真実の心の動きがあることに気づき、その内面で動いている自分の心に忠実に行動しようとするのです。これを「内面化の過程」と呼んでいますが、その過程をたどることが本当の意味での健全な姿ですし、それによって子どもの人格は向上するのです。ですから、第一反抗期の時と同様に、思春期に子どもが反抗し始めたことを、やはり親御さんは“成長の証”として喜んでよいのです。思春期が近づいたならば、子どもがどのように反抗するか楽しみ待っていましょう。子どもも、そのような親に対しては、反抗しようとする気持ちが余り湧かなくなる(「のれんに腕押し」と言ったところでしょうか?)ので、反抗の程度軽く、その期間短いものです。
   私事で恐縮ですが、私の母親は昔、中学校の教員をしていました。ところが晩年は慣れない小学校に転勤になり、各教科の指導の仕方について悩んでいたようです。そんなある日、私が高校一年生くらいの時だったと記憶していますが、母は私に向かって「暢宏、この算数の問題、どうやって教えたらいいと思う?」と聞いてきました。その時は、私なりの考えを伝えましたが、初めて母が自分の存在を一人前の大人として認めてくれたような気がしてとても嬉しかったことを今でも鮮明におぼえています。もしも家族の中で何かのトラブルが起きたときには、「あなたはどう思う?」と対等の大人として扱ってあげると、親に対する余計な衝突もあまり起きず、その時期を過ごせるのではないでしょうか。

○中間反抗期
   実は、大妻女子大学名誉教授であり医学博士でもある平井信義氏は、小学校二、三年生の頃に強くなる「口答えについて、「中間反抗期」という言葉を使って、その重要性を強調しています。この「口答え」は、お母さんが子どもに注意を与えたり、子どもの失敗を非難したりしますと、「お母さんだってやってるくせに!」と言って、向き直ってくる状態です。では、どうして子どもが「口答え」をするようになるのでしょうか。その理由について平井氏は、「自発性が順調に発達している子どもには、親たちを批判する能力が育ってくるため」と指摘しています。つまり単なる「口答え」ではなく「批判する能力”の向上」だということです。それまでは、親の言うことを絶対視する気持ちが強かったのですが、の言うことにも矛盾があったり身勝手なことがあったりすることに気づき始めるのです。すなおに自分のしていることを反省できる親御さんは、「ほんとにそうね。反省しなくちゃね」という言葉が出てくるはずです。お父さんについても同じことが言えます。