【今回の記事】

【記事の概要】
   アメリカ・ニューヨーク州西部の都市ノーストナワンダで10月から、いじめっ子の親刑務所行きになるという条例が施行された両親子供の行動に対して責任を負うことで、いじめが止むことが期待されているという。AP通信などが報じた。
   地元メディア「WIVB News」によると、新条例は同州では初めてとなる法律で、子供が90日間のうちに2回、いじめをしたり他の生徒を攻撃したりした場合、その子供の両親は250ドル(約2万8000円)の罰金を払うか、もしくは最大15日間刑務所ですごすか、またはその両方が科される。
   ノーストナワンダでは今年の初めから、いじめをめぐる報道が相次いでいた。

   今回の条例は、2016年にウィスコンシン州で可決された条例がモデルとなった。ウィスコンシン州の条例では、警察が子供がいじめていることを両親に書面で通知してから90日以内にいじめが再発生する場合は、両親に336ドル(約3万8000円)の罰金を科すことができる。さらに、1年以内に2回目の違反があった場合には、681ドル(約7万7000円)の罰金が科される。

【感想】
   今回は、他国の事例を通して、「いじめ」について考え直す機会にしたいと思います。

   今回のアメリカ・ニューヨーク州西部の都市ノーストナワンダでの「いじめっ子の親刑務所行きになる」という条例は、「子供のいじめ行為に対して親に罰を与えれば、罰を恐れた親から子供に対していじめをしないように注意がなされるだろう」という意図であることは分かります。
   しかし、私はこの条例によって、更に子供の反社会的行為が増え、事態は更に悪化の一途を辿るのではないかと考えます。以下にその訳をお話しします。
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いじめは、加害者側が自分の置かれている環境に適応できないために生まれるストレスを発散する行為」です。そのストレスを生む環境とは、ほとんどの場合家庭です。日本では法的にも、いじめが不法行為となる場合、原則として加害児童・生徒本人は、被害児童・生徒に対して、不法行為による損害賠償責任を負う」とされており、子供の法的な責任能力の有無にかかわらず、最終的にはその親が損害を賠償することになります。
   いわゆる“いじめっ子”は、自分の家庭、即ち親の養育不適切な為にストレスを抱えていることがほとんどです(例えば、親からいつも厳しく叱られていたり、親の気分で叱られる為に常に親の顔色を伺いながら生活したり、親の虐待に遭っていたり)。
   そんな中、「子供が90日間のうちに2回、いじめをしたり他の生徒を攻撃したりした場合いじめっ子の親刑務所行きになる」という条例が施行された場合、1回目のいじめ行為が明らかになった時、いじめっ子の親は我が子に対してどんな行動に出るでしょうか?端的に言えば「叱る」でしょう。あるいは「怒る」かも知れません。場合によっては「体罰」に走る親もいるかも知れません。なにせ、子どもがもう一度いじめをしたら自分自身が刑務所行きになるのですから。
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   問題は、そうなった時に子供の気持ちがどうなるかです。もともと、家庭内での養育が原因でストレスを溜めていじめに走った子供です。そこに更なる親からの厳しい叱責が加えられるのです。本来ならストレスでパンパンに膨らんだ風船の中からストレスを抜いてあげなければいけないはずが、更に厳しい叱責によって風船の中のストレスは更に増していきます。場合によっては、その風船は家庭内で、親に対する“暴力”や“殺傷行為”として爆発するかも知れません。そうでなければ、家庭外でいじめ以外の行為でストレスを発散しようとするでしょう。いじめをしていた時のストレスに、さらなるストレスが加わった事によって行われるその行為は、いじめをしていた頃よりも更に悪質な反社会行為になるはずです。また、仮に子どもを保護・養育しなければならない親が刑務所に送られるようなことになれば、子どもの生活そのものが崩壊し、子どもが受けるストレスは更に膨らみ、ますます重篤ないじめに走る危険性もあるのです。
   つまり、いじめっ子の親を刑務所に送るという言わば“罰条例”は、「いじめがなぜ起きるのか?」が理解されていない事によって行われる単なる“対症療法(問題の原因には触れず、表面的な症状だけを緩和する方法)”です。これが“”という“”に頼った指導の限界なのです。

   では、我が子がいじめをしないようになるための“原因療法(問題の原因そのものから解決する方法)”とは、どんなものなのでしょう?要は、“ストレス発散”といういじめ行為の元になっている、家庭の中で子供が受けるストレス軽減すればいいのです。
   先に、いわゆる“いじめっ子”は、例えば、①親からいつも厳しく叱られていたり親の気分で叱られる為に常に親の顔色を伺いながら生活したり親の虐待に遭っていたりすることで家庭内でストレスを溜めると述べました(実はこの3つは、それぞれ、不安定型人格の①「回避型」②「不安型」③「混乱型」で見られる養育の仕方です)。このような養育にならないようにする為には、自立4支援(子供に任せて、見守り、諭して、褒める)」によるサポートが最適と考えます。
   ①や②のような親による叱責は、親が子供に“干渉”しすぎることによって生まれるものです。その為に必要なことは、子供に“任せて”親は距離を置いて“見守っている”ことです。子供が何かにつまづいたり失敗したりした時も、厳しく叱ったり③のような体罰を加えたりしないように“諭して”教えます。そして、上手にできた時に“褒めて”あげれば、子どもの自己肯定感が高まり逆にストレスは軽減されるのです。