いきなりですが、以下の2つの写真をご覧ください。どちらも「万引き」防止を呼びかける垂れ幕です。

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   さて、①と②のどちらの方が子供の心ブレーキをかけることが出来ると思いますか?
   おそらく、②の方ではないでしょうか?なぜなら、万引きをすると自分にとってどんな“不利益”が待っているかについて「罰金50万円」と具体的に示されているからです。
   ①のような「犯罪」という言葉は、学校の教師を含め、大人がよく使うものです「万引きは立派な犯罪なんだよ!」)「犯罪」という言葉を使って、信ぴょう性を持たせようとするのだと思うのですが、これは“大人的発想”だと思います。大人の頭の中には「『犯罪』=『法律違反』=『逮捕』」と言うイメージがあると思いますが、人生経験の浅い子供にとっては、「犯罪」と言われてもまだピンとこないことが多いと思います。
   それに対して、②の方は「50万円の罰金」という子どもでも分かる具体的な罰がしめされているので、「それは大変だ!」と感じるのです。

   また、子供の頭には「人から見つからなければ大丈夫」という意識もあります。そんな時は「監視カメラ」と言う監視機器の存在を知らせます。もちろんお客さん達は、常にカメラによって監視されていますが、仮にその日に摘発されなくても、その後不審な点が少しでも見つかれば、さかのぼって日にちと時間まで正確にカメラの映像を分析することもできます。事実、私が在職中も、数日後になって子供の万引きが発覚し、監視カメラの映像が印刷された写真が警察を通して学校の方に送られてきたと言う事がありました。
   実は、万引きの最も怖いところは、そこにあります。たとえすぐには見つからなくても、「いつバレるかもしれない」という不安感の中で生活する事になります。「からどれだけ叱られるだろう」「先生から何て言われるだろう」そして子供にとって最も怖いのは、「友達にしられたら仲間外れにされるかもしれない」という友人との関係です。これらの何とも言われぬ不安恐怖とに苛まれながら生活しなければならなくなるのです。

   ところで、学校が関わらない事例の場合、子供が起こす問題の責任は、子供に法的な責任能力が認められれば、子供が損害賠償責任を負います。また、“いじめ”は学校の中で行われる行為ですが、今の司法では、いじめ行動の責任は基本的に親にあると言う考え方のようです(国立教育研究所の滝充氏が主張する「いじめが発生するメカニズム」の考え方と一致)。因みに概ね12歳程度になると法的な責任能力が認められるそうです。しかし、子供に法的な責任能力が認められなければ、親が損害賠償責任を負います。しかし、いずれの場合であっても、子供に損害を賠償する“経済能力”はありませんから、最終的には親が賠償する事になります(詳細は「悪質ないじめ…加害側の親に法的な責任を問うことはできる?〜弁護士に聞く“本当のところ”〜」を参照)。

   また、裁判になれば、焦点は「が普段から子供の問題行動を防ぐための指導をしていたかどうか」と言う点に集まるようです。神戸市の自転車事故事例の判決では、少年が坂道を時速20~30キロというスピードで走行し、少年の前方不注視が事故の原因と認定。事故時はヘルメット未着用だったことなどを挙げ、「指導や注意功を奏しておらず、監督義務を果たしていない」として、母親に計約9500万円の賠償を命じました。つまり、仮に指導や注意をしていても、それが功を奏して(子供行動に移して)いなければ監督義務を果たしていない」と認定されるのです(詳細は子どものいじめ、自転車事故で親に賠償金 〜神戸の自転車事例では9500万円!〜参照)。
   私が以前勤めていた学校で、「もっと厳しい自転車の決まりを学校で作ってください」と懇願したり、「学校で自転車教室をしてくれているから自転車指導については学校に任せています」と考えたりしている親御さんがいらっしゃいました。このように、もしも「自転車乗りの問題に関する責任学校にある」と勘違いされている場合は、裁判では「親の責任意識の欠如」と指摘されるでしょう。ですから、時には休日を使って、子供が正しい自転車の乗り方をしているかどうかを子供の後ろを自転車で追いかけながら点検するのも親の役目と言えるでしょう。

   まとめです。
   先にお話ししたがしっかりと教え子供がその教えを行動に移す」。この双方が揃う為には、親からの教えを子供が守ろうと思うような教え方を親がする必要があるという事が言えそうです。その意味で、その行為をした後にどんな不利益が待っているのかきちんと教えておくことは、有力な抑止力の醸成に繋がるものだと思います。
   また先の9500万円の損害賠償を求められた自転車事故での「スピードの出し過ぎ」「前方不注意」「ヘルメット未装着」等は、どの子供でもしがちな行為です。このような他の子供による何かしらのトラブルが起きた時には「対岸の火事」と思ったりせず、「我が子は大丈夫だろうか?」と振り返ることも大切な事だと思います。言い古された言葉ですが「人の振り見て我が振り直せ」ですね。