【今回の記事】

【記事の概要】
   息子が4年生のとある秋の日、校庭では児童全員がワイワイと運動会の総合練習をしていました。私はPTAの活動で学校に来ていたので息子の机を抜き打ちチェックするつもりで教室を覗いたのですが、(息子が)総合練習に参加せずに一人教室でイライラしているのを発見!たずねると、運動会の練習がダルい!やりたくない!とふてくされる。
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校庭に椅子を運ぶのがめんどくさい」、「椅子なんてなくても練習できるのに」などいちゃもんの嵐。
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前の私なら「何を言ってるの早く外へ行って参加しなさい!」と言っていたでしょう…。ですがこの頃は、発達障害の診断を受けたこともあり、押し付けは逆効果かも!?と考えられるようになっていました。そこであえて、「イヤならやめちゃおう!また来年参加すればいいんじゃない?」と言ってみたのです。練習で周りとうまくいかないことがあって調子が悪くなるぐらいなら、休んでもいいと実際に思っていたからです。それに、運動会の練習は気が重いもの。運動会の練習について「団体行動超ダルいよね」とか「暑い中4時間ぶ通っし練習って死ぬよね」などと、ついついアレコレ悪く言っていましたら、息子が「うん!うん!」と聞いてくれました。私がやらなくていいと言っているのに「やっぱりやるわ~」と言って乱暴に椅子を引きずって教室から出る息子。私が自身の経験から運動会の練習をけちょんけちょんに言ったことで、スッキリしてくれたように感じました。
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練習を悪く言った私ですが本心は息子に参加してほしいのです!4年生から6年生は一番息子の気持ちが荒れていて、「キチンとしなさい」は逆効果な時期でしたから、こんなときにかける良い言葉は、なかなかみつかりませんでした。だけど、ハッキリしないモヤモヤ、イライラした気持ちを分かってもらうことで、息子はクールダウンしていき、嫌な気持ちから早く抜け出せたのかもしれません…。私の言葉はちょっとぶっきらぼうだったかな?と反省もしましたが、共感してあげることで早く立ち直るのだと気が付いた時でした。

【感想】
   この事例で出てくる男の子はADHD(注意欠陥・多動性障害)という事です。ADHDは注意欠陥と多動性・衝動性の障害です。
   しかし、「校庭に椅子を運ぶのがめんどくさい」、「椅子なんてなくても練習できるのに」といった「いつもやらない作業をやりたがらない」「自分の主張をゆずれない」という特徴を見ると、おそらく自閉症スペクトラム障害(ASD)を合併しているのではないかと考えられます。発達障害はその多くが他の発達障害を合併している場合がほとんどだと言われているのです。

   このお母さんがおっしゃるように「共感」、つまり子供の気持ちを分かってあげるは、特に発達障害の子供を指導する上で必要不可欠な支援です。なぜなら、発達障害の子供の言動は、健常者からすると理解し難いことが多いので、それを理解してくれる大人が現れると、それまでガチガチに緊張していた子供の気持ちが解けやすくなるからです。
   しかし、「共感」するためには本人の障害特性大人が把握しておく必要があります。例えば、湿度に対して敏感な触覚過敏の子供であれば、「じめじめしてやる気出ねぇ!」と不満を漏らした時に、特性を知らなければ「それくらい我慢しなさい!」と叱ってしまいそうですが、ASDの特性を知っていれば、「あなたはじめじめしたのが苦手だものね。大変だね。」と「共感」することができます。因みに、この「共感」は子供を安心・安定に導く支援「セロトニン6」の1つです。
   因みに、ASDの子供は、自分にとって辛い課題を課す相手(学校や担任)に対して強い反発意識を持っています(例えば「警察を呼んできてあの先生を逮捕して!」などと言う事もあります)。この記事では、母親が「団体行動超ダルいよね」や「暑い中4時間ぶ通っし練習って死ぬよね」と言っていますが、こう言ってしまうと、子供が「お母さんもやっぱり学校が悪いと思っている」という学校批判の意識を助長してしまう危険があるので気をつけたいところです。しかし、ASDの「環境の変化への拒否感」の特性を知っていれば、「あなたはいつもと違う活動が苦手だものね。」と、本人の特性に対して「共感」することができ、学校批判にならずに済みます。

   もちろん、健常者でも「共感」はとても大切です。全ての人が大なり小なりASDの傾向を持っているので、どんな人でもやはりどこかに“生活しづらさ”を感じているものです。白梅学園大学教授の増田修治氏は「今の親御さんは、お子さんに強くあること、なんでも自分の力でできること自立すること求めすぎています」「子どもに“ヘルプ”が言える能力を身に付けさせてほしい」と警鐘を鳴らしています。その時の状況や本人の立場・気持ち等をよく考えて、子供が抱いている辛さを分かってあげる事で、不安定な精神状態が緩和され、「お母さんは私の気持ちをわかってくれている」と親への愛着(愛の絆)も高まる思います。