「悪者」を作って叩いて遊ぶだけでは…… | 偕楽園血圧日記

「悪者」を作って叩いて遊ぶだけでは……

 朝から強い風が続いていたと思ったら、夕方には雨が降ってきた。
 飛んできているという黄砂がこれで落とされたらいいのだが。

 だが天気がよくないと胸にブラックホールが入ったような感覚が生じてくる。


 さて、統一地方選挙の投票がひと段落したと思ったら、衆議院の補欠選挙がいくつか告示された。
 相変わらず野党は「政治とカネがー」と(2018/11/16の記事、彼の仕事を知ってるかい?)で紹介した石平氏の著作にある大陸の「天命論」の「聖人君子こそが指導者として選ばれる」を振りかざしているが、国会で質問まで出た(2011/08/26の記事、逃げ切り、素知らぬふりを許してはならない!)でまとめた「北朝鮮とのつながりのある団体への献金」をほとんどのメディアがスルーしてしまった過去を思い出せば、決して彼らにそんな看板を掲げる資格はないのだがなぁ。

 そういえば今回の地方選では、

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 広島・河井事件の被告5人中4人当選 罰金刑以上の有罪なら失職

 2019年参院選を巡る大規模買収事件の舞台となった広島県では、河井克行元法相(実刑確定)から現金を受け取ったとして公職選挙法違反(被買収)の罪で起訴された現職の県議1人が県議選に、広島市議4人が市議選に立候補。県議選で1人が当選し、市議選では3人が当選、1人が落選した。公判中の1人を含め5人とも被買収の認識を否定して無罪を訴える見通し。当選しても今後罰金刑以上の有罪が確定した場合は失職する。
 県議選安佐北区選挙区(定数3)では、公判中の渡辺典子氏(38)が4選。広島市議選では、中区選挙区(定数6)で木山徳和氏(71)が9選▽安佐南区選挙区(定数11)で石橋竜史氏(51)が4選▽安芸区選挙区(定数4)で三宅正明氏(50)が5選――を果たした。安佐北区選挙区(定数6)に立候補した伊藤昭善氏(72)は落選した。
 5人は無所属で出馬。渡辺、木山、三宅、伊藤の4氏は起訴後に自民党を離党した。【中村清雅、手呂内朱梨、根本佳奈】
 毎日新聞 4/10(月) 12:28

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 あの「河井夫妻事件」で「金を受け取った」側の人間が何人か地方議員として当選をしている。

 この事件ではようやく、

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 河井夫妻事件、町議に有罪判決 広島地裁「供与の趣旨を受け入れた」

 2019年の参院選をめぐる買収事件で、河井克行元法相(59)=公職選挙法違反罪で実刑確定=から現金20万円を受け取ったとして同法違反(被買収)の罪で在宅起訴された広島県安芸太田町議、矢立孝彦被告(69)に対し、広島地裁(石井寛裁判長)は3日、罰金10万円(求刑罰金20万円)と、求刑通り現金20万円を没収する判決を言い渡した。
 一連の買収事件で正式起訴された地元議員ら9人のうち、判決は初めて。
(後略)
 朝日新聞デジタル 3/3(金) 18:30

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 有罪者が出るようになっているが、当時から書いているように、元々こちらから犯罪認定を重ねて外堀を埋めてから河井夫妻に手を付けていかなければ「金の流れの全容」は分からなかったのに、ただはしゃぎたい盛りの「アベガー」さんたちの溜飲下げのために夫妻を「捨て石」にし、彼らが罪をかぶることで蓋をされるという最悪の方向に進んでしまった。

 今回の選挙では、

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 道府県議選、自民が過半数…茂木幹事長「地方の基盤は我が党の強み」

 自民党は、41道府県議選で総定数(2260)の過半数を確保し、堅調な戦いぶりを見せた。ただ、日本維新の会の勢力拡大を踏まえ、衆参5補欠選挙や統一地方選後半戦に向けて、引き締めを図る考えだ。
 自民は今回、道府県議選の議席占有率を51・0%とし、過半数を維持した。
 茂木幹事長は10日の記者会見で、「地方の基盤は我が党の強みだ。堅調な戦いによって基盤を維持、強化することができた」と強調した。
(後略)
 読売新聞オンライン 4/11(火) 16:32

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 茂木自民党幹事長がこんなことを嘯いているが、この「地方の基盤」維持のための大きな道具が「氷代、もち代」といわれる中央からの金の流れ。
「河井夫妻事件」はそれを白日の下にさらしてメスを入れるいい機会だったのに、ただの買収事件に矮小化して「政権叩き」の道具にされてしまったのだ。
 そして「地方の基盤」は盤石のまま、今回のような結果が出る。

「氷代、もち代」は(2008/12/01の記事、口を開けば「怨み節」)で書いたように野党側でもやっている政界の常識だから、「そこに手を突っ込まれないように」という与野党暗黙の上での「悪者つくり」で済ませられてしまった。
 自民は「もともといいイメージなんかないので平気」、野党は「政治とカネ叩きで正義面で来て満悦」。

 なんと馬鹿らしい。



 おまけ。

 選挙が公示されたので触れるべきではないのかもしれないが、

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「安倍元首相の政治を検証」 山口4区補選、有田芳生氏が事務所開き

 安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区補選(11日告示、23日投開票)に立憲民主党公認で立候補を表明しているジャーナリストで前参院議員の有田芳生氏(71)が10日、下関市内で事務所開きをした。
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題やアベノミクスの検証を争点として掲げる有田氏は、安倍元首相について「憲政史上一番長い政治をつかさどってきた人。その政治が私たち、日本にとってどのような意味があったのか公正に検証しなければいけない」と語った。
(後略)
 朝日新聞デジタル 4/11(火) 5:00

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 故・安倍氏の選挙区に元立民の有田前参議が立候補した。

 あー、「ツボツボツボツボ」と連呼するのだろうなぁ。自身が議員の時にはまるで問題にしなかったのに。

「安倍元首相の政治を検証」というのならば国会議員になどならずに「ジャーナリスト」をやっていればいいのに。
 議員の仕事は探偵ごっこじゃないのだから。


 本日の逸話。

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 細川忠興の刀や甲冑など11点 島田美術館で展示会


(写真、朝日新聞デジタルより。織田信長から細川忠興に与えられたとされる脇差し=2023年4月9日午後2時51分、熊本市西区島崎、長妻昭明氏撮影)

 戦国武将・細川忠興の甲冑(かっちゅう)や刀など11点を紹介する展示会「忠興とその愛刀」が熊本市西区の島田美術館で開かれている。6月12日まで。
 忠興は明智光秀の娘の玉(ガラシャ)と結婚、のちに初代小倉藩主になった。展示会では、脇差し2刀が目を引く。
 一つは織田信長から与えられた刀。なぎなたのような長大な刀を仕立て直した珍しい形をしている。宮本武蔵が愛用していた刀よりも太くて厚く、忠興が好んでいたとみられる。
 もう一つは、僧侶を斬殺した刀。忠興がその僧侶の名前から1文字取って命名したとされる。当時、この刀のたたりが起きるとされ、供養するほこらが設置された。ほこらは現在も熊本県立図書館の近くにある。
 開館は午前10時から午後5時まで。火曜と第2・4水曜休館。入館料は一般700円、大学生と高校生が400円、小中生が200円。問い合わせは096・352・4597。(長妻昭明)
 朝日新聞デジタル 2023/04/11 10:00

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 細川忠興といえば「戦国一の短気者」。有名な歌仙兼定などもその気性に関する逸話から名前が付けられていたりする。

 朝日新聞の記事ではなぜか名前が記されていないが、この「織田信長から与えられた刀。なぎなたのような長大な刀を仕立て直した」というのは晴思剣で、「僧侶を斬殺した刀。忠興がその僧侶の名前から1文字取って命名したとされる」は希首座のことだろう。
 どちらのなかなかに血なまぐさい逸話のある刀だ。


 ところで、先日この忠興の父である細川幽斎をNHKの番組が取り上げていた。
 彼が伝えた古今和歌集に関するものを主軸としたもので、関ケ原の戦いに関連して田辺城に籠城した際、「討ち死にか降伏か」と悩んだ話がクライマックスになっていたのだが、ここで「古今伝授を成し遂げるまでは死ねない」という思いが出てくるのが面白かった。
 この「古今伝授」というのは古今和歌集に関する「秘伝」のようなものらしく、これをつないでいくことが彼の人生の一大テーマにもなっていたというもの。「ナショナル・トレジャー」や「バチカンの暗号」のような秘密があるのかもしれないが、表に出ているところでは和歌に関するテクニック指南とかそういうもののようである。

 この和歌に関するもろもろの話というのは、令和の今ではごく普通に「古今和歌集解説」本などで知ることができるようにもなっているのだから、時代の流れというのは面白い。
 学校の授業でも、ただ歌を音読させて「これはこういう意味で」と解説して終わるのではなく、幽斉の生き方などと絡めた授業にすれば、子供たちももっと古典を面白がってくれるのではないだろうか。