正すべきは「公務員世界の掟」だ | 偕楽園血圧日記

正すべきは「公務員世界の掟」だ

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 勤労統計、昨年1月から急変 算出法変更で賃金高い伸び


(グラフ、朝日新聞デジタルより。算出方法の変更で昨年1月から賃金の伸び率が高くなった)

 厚生労働省が不適切な手法で調査していた「毎月勤労統計」をめぐり、算出方法が変わった昨年1月調査分から賃金が前年同月と比べて高い伸び率を示すようになった。一部のエコノミストなどから疑念の声が上がったが、厚労省が同じタイミングで本来の調査手法に近づける補正をしていたことも要因とみられる。
 厚労省によると、調査対象は無作為に抽出した約3万3千事業所。本来、従業員500人以上の大規模事業所はすべてを対象に、5~499人の事業所は抽出で調査が行われている。このうち30~499人の事業所は従来、2~3年に1度全てを入れ替えていた。しかし、政府の経済財政諮問会議などで「入れ替えの際に生じる結果の乖離(かいり)が大きくなる傾向にある」との指摘があり、見直すことになった。
 
2020年1月分から、30~499人の事業所は、毎年3分の1ずつ入れ替える方法に変更する。その経過措置として、昨年と今年1月分は2分の1の事業所が入れ替えられる。そして昨年の入れ替え後、現金給与総額は昨年6月に前年同月比3・3%と21年5カ月ぶりの高い伸び率を示すなどした。一方、入れ替えがなかった事業所に絞った調査では、1・3%の伸びにとどまった。
 朝日新聞デジタル 1/11(金) 6:52

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 本当にメディアの「フェイク見出し詐欺」はひどい。
 この朝日の記事など、自分が記事の中で「2010年から算定方法が変わるための経過措置で統計の手法が変わった」と書きながら、見出しではあたかも「なにか意図があって賃金が高く伸びるように変えた」かのような印象を与えるような書き方になっている。
 データの比較力を維持するためには、「本来の調査手法に近づける補正」を入れるタイミングとしてここはまさにそのいい機会なのは明らかだろう。理系の頭ならば「是正ポイントとしてはここしかない」と直感するのだが、「数学が嫌いだから文系」をいうような人間には「陰謀」が見えるのかもしれない(苦笑)。

 こんなことをやっているから、(2019/01/10の記事、そもそも母数の選び方に偏差があるよね)で取り上げたような「改竄!」とか「隠蔽!」と騒ぐ頭のよくない人間が出てくることになり、そういう人間を狙ってまた、

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 政権、選挙への影響懸念=野党追及、国会の火種に―勤労統計不正

 厚生労働省が毎月勤労統計を誤った手法で調査した問題は、今月下旬召集の通常国会で与野党対立の火種となりそうだ。
 政府・与党は4月の統一地方選や夏の参院選への影響を懸念し、沈静化に向けて対応を急ぐが、野党は安倍政権の失態として徹底追及する方針だ。
(中略)
 主要野党は、安倍政権を追い込む材料になり得るとみて勢いづいている。立憲民主党の長妻昭代表代行は記者団に「国家としての信頼性を揺るがしかねない大きな問題だ」と批判。共産党の小池晃書記局長は「極めて悪質な隠蔽(いんぺい)である可能性が高い」と断じた。
 野党には「通常国会はこれ一色になる」(立憲幹部)との見方もあり、徹底追及によって政権への攻勢を強め、統一地方選や参院選につなげたい考えだ。
 時事通信 1/12(土) 7:03

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 民共系野党が「安倍叩きだ!」と国会で騒ごうとする。

 そして彼らを応援しようと、マスメディアの中には、

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 野党「消えた給付金」問題で厚労相の責任徹底追及へ

 野党は、毎月勤労統計の不適切調査問題を受け、28日召集の通常国会で安倍政権を徹底追及する。根本厚労相の責任問題も不可避とみている。
 根本氏、前任の厚労相、加藤勝信・自民党総務会長はともに首相の側近。「辞任に追い込めれば、政権へのダメージとなる」(立民関係者)。この事態に、自民党の森山裕国対委員長も衆院厚生労働委員会での閉会中審査開催を「当然だ」と主張するなど、早期の事態収拾に動き始めた。4月の統一地方選や夏の参院選を控え、世論の批判を食い止めたいとしているが、先行きは不透明だ。
 日刊スポーツ 1/12(土) 7:00

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 大成功した「消えた年金キャンペーン」よ再びと、その言葉を発掘するところまで出てくる始末。

 その中でこれが「安倍追い落としの一環」であることを白状してしまっているのだからもう爆笑ものなのだが、彼らはその「消えた年金」キャンペーンがその後どうなったかをまるで認識していないのだから、あきれるばかり。
 実は1970年代末の労組との約束から始まっているこの話を「発覚(私は労組からのリークだと思っている)」した時の内閣の責任にすり替えることで参院選で勝利。その勢いで国会を混乱、政治を停滞させて政権交代したものの、その参院選で民主党は「問題を起こした自治労幹部を比例トップに据えていた」ことが選挙後にメディアに取り上げられたり、「一年で紙台帳を全件照会しろ!」と政権に迫っていた「ミスター年金」が、厚労大臣になったとたんに「全件照会無理です」といい始めたり(2009/12/18の記事、「俺が……『国民』だ!」参照)したことがもう有権者に見られた後だというのに、まだ同じ手が通用すると思っているのだから、おめでたい。

 ましてや今回は、その「不適切手法」を続けていた期間に自分たちが政権を取っていた時代も入っているのだから、なにをいってもブーメランになるだけ
 野党が自分たちに火の粉が飛んでくるのを避けたいのならば、ここはこの件を「政権叩き」の道具にするのではなく、真面目に「省庁改革」の話をするべきである。

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 毎勤統計、不適切調査で賃金など実態より低く 厚労相「組織的隠ぺいはない」

[東京 11日 ロイター] - 厚生労働省は11日、賃金や労働時間の動向を把握する「毎月勤労統計」の調査において、実施すべき全数調査の一部を抽出調査で行っていたと発表した。これにより「決まって支給する給与」等が低く出ていたため、雇用保険や労災保険で追加給付が必要な事態となっている。根本匠厚生労働相は会見で「組織的隠ぺいがあったという事実は現段階ではない」>との認識を示した。
 根本厚労相は、自身の責任を問われ、「さらなる調査の実施や再発防止策の取りまとめ、国民への対応に全力挙げて取り組む」と述べた。また、関係者の処分については、さらなる調査を実施した上で行う考えを示した。
 不適切な調査は2004年から行われていた。本来、500人以上の規模の事業所は全数調査を行うことになっていたが、厚労省から東京都に対し、抽出した事業所名簿を送り、これに基づく抽出調査を行っていた。18年の東京都の500人規模以上の事業所は1464事業所だったが、調査を行ったのは491事業所だった。不適切な調査を行っていたことは、総務省からの指摘により精>査したことで発覚した。
 これらの抽出調査については、17年まで、母集団の調査結果とするための「復元」と言われる統計処理も行っていなかった。
 厚労省では、「復元」に必要なデータが存在する12年以降については「復元」し、再集計値として公表する。「決まって支給する給与」の「再集計値」と公表値のかい離は金額ベースで平均0.6%だった。
 なぜこうした抽出調査が行われたのか、また、なぜ18年1月から「復元」が行われたかなどについては、調査中としている。ただ、「意図的にやる意味はない」(厚労省関係者)としている。
 全数調査が実施できる時期については「できる限り早急に」と記すにとどめた。
(後略)
 ロイター 1/11(金) 13:56

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 厚労大臣はこんなことをいっているが、この件が「組織的」に行われたものであることは間違いない。厚労省という官庁組織としてではなく、何度も書いている「公務員社会の掟」によって縛られた組織のものとして。

 公務員の世界では、法や社会的な道徳観よりも「入省年次による上下付け」が力を持つ。
 だから今回は、「厚労省の世界」とは違う、

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 不適切統計、厚労省職員の発言で発覚 「東京以外でも」

 
毎月勤労統計の問題が発覚するきっかけは、厚生労働省の担当職員が総務省の統計委員会の打ち合わせで「東京以外の地域でも従業員500人以上の事業所について抽出調査を実施したい」と発言したことだった。複数の関係者が明かした。
 厚労省と総務省の担当職員、統計委員会の西村清彦委員長らが昨年12月13日、次回の統計委員会開催について協議した。西村氏が毎月勤労統計の調査結果について、かねて正確性を疑問視する声が出ていることを踏まえ、詳細に分析する必要があるとし、次回委員会のテーマにする考えを示したという。
 その時に厚労省職員から、従業員500人以上の事業所について東京都では抽出調査をしており、東京以外への拡大を計画しているとの発言があった。西村委員長は「抽出調査は重大なルール違反」と指摘し、統計の信頼性確保の観点からも危機的状況だとの認識を示した。厚労、総務両省に早急に事実関係を確認するよう求めた。
 今回の問題が発覚するまで、厚労省は神奈川県、愛知県、大阪府でも抽出調査を始める方向で準備していた。
 朝日新聞デジタル 1/11(金) 10:24

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 総務省に話を持って行ったことで発覚することになった。
 これが厚労省の中でだけやられていたら、「それをやった先輩がいる間は絶対に意見は言えない」「意見を言わなかった先輩がいる間も意見が言えない」で続いていたことだろう。まさに15年それが続いていたように。

(2007/04/15の記事、先手、3六銀)で取り上げたが、「公務員社会の掟」に反していなければ、たとえ汚職で失職しても仲間が救おうとしてくれる。そういう「掟」に縛られた世界の改革こそが必要で、今回の件などはまさにそのための道具にすべきものである。

 今回明らかになった「手抜き」は、

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 勤労統計不正、23年前から ずさん対応浮き彫り

 賃金や労働時間の動向を把握する厚生労働省の「毎月勤労統計」の調査が不適切だった問題で、
不適切調査は平成8年から行われていたことが12日、分かった。さらに、500人以上の規模の事業所を全調査しなければならないものを、厚労省は東京都分に加え、昨年6月、大阪、愛知、神奈川の3府県に「抽出」とする不適切調査を要請していたことも判明。統計に対する厚労省のずさんな対応が浮き彫りになっている。
(中略)
 厚労省の担当者は「統計分野ではほとんどが抽出するというやり方だった。実務レベルで淡々と行われていて、統計上(賃金額などを)改竄(かいざん)するという意図はなかった」と説明。不適切調査が始まった動機や背景については今後、職員への聞き取りを進めて解明していくという。
(後略)
 産経新聞 1/12(土) 17:47

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 平成八年、1996年から始まっているという。
 この時期といえば、橋本内閣が行財政改革に力を入れていた時期と重なる
 ならば「どうしてこんなことを始めたか」もなんとなく想像できる気もするわけで。また、それだけ「根が深い」話ということでもある。

 上で挙げた「消えた年金」の時に、それで政権を取った民主党(当時)は(2009/11/28の記事、いつまで従順な羊でいるのだ?)で書いたように、問題を起こした社保庁職員の「公務員身分」をできる限り温存しようとした。
 一方、(2007/06/17の記事、追い詰めろ!)で取り上げたように、「元公安トップ」がらみの案件でも容赦なく摘発に進んだ政権もあった。
 今頑張ってもらわなくてはならないのはどちらの勢力か、わからない人はいまい。


 本日の暴動(笑)。

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 富山県産コシヒカリ使い「米騒動バーガー」


(写真、毎日新聞より。法政大の学生らが考案した「米騒動バーガー」=富山県魚津市提供)

 米騒動発祥の地とされる富山県魚津市の食の魅力をPRしようと、法政大の学生らが「米騒動バーガー」を作った。今年度が米騒動から100周年にあたるため、考案した。
 県産コシヒカリで作ったライスのバンズに郷土料理を挟んだ。「ブリ大根」と「ベニズワイガニのすり身団子」の2種類で、茶わん蒸しと汁物付きのランチセット(1280円)で提供する。
 14日から1カ月間限定で、東京都板橋区の「うおづや」や市内の食堂で発売。学生らは「ライスバーガーを食べて米にまつわる歴史をかみしめて」。【鶴見泰寿】
 毎日新聞 1/11(金) 18:08

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「ライスバーガー」というのはときどき見るが、これっておにぎりとどう違うのだろうなぁ。握っていないで挟んであるだけという物理的なところは別にして。

 それにしても、このネーミングを聞いて「くすり」と笑えるか否か、それがつまり「教養」というものである。
 そういう「知識を知る」という姿勢は、大切にしていきたいものだなぁ。