先手、3六銀 | 偕楽園血圧日記

先手、3六銀

 統一地方選挙の後半戦が始まったが、水戸でも市長と市議が告示された途端、朝から選挙カーが行き交っている。
 やれやれ。田舎ということもあるのだろうが、このレベルになるといまだに昔ながらの「○○をよろしく」「汗をかいて頑張っております」が幅を利かせているところがあるから、ただもううるさいばかり。これでは投票率アップどころか「うざい」と思われて選挙に対する意識の低下を招くだけである。

 それを変えるにはまず選挙運動のあり方を変える必要があるのだが、そのためには有権者の意識を改革して「このような絶叫運動は意味がない」ということを候補者にしらしめなければならないし……まるで「鶏と卵」問題のようだ(ため息)。


 さて、北朝鮮がいつものように平気で「約束」破りを行っているが、とりあえずそちらは週明けまで「なんと言い抜けるつもりか」待つことにして(どうせ「アメリカが悪い」というのだろうけど)、今日は公務員の話。

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 公務員制度改革 天下り規制で政府・与党が合意 全非営利法人を対象

 政府と自民、公明両党は11日、国会内で公務員制度改革に関する実務者協議を開き、天下り規制と能力・実績主義の導入を柱とする政府の国家公務員法改正案について基本合意した。再就職(天下り)斡旋(あっせん)の規制対象は政府案通り「全非営利法人」とした。ただ、斡旋の一元管理機関「新人材バンク」については、一定期間後に役割を検証する「見直し規定」を自民党側の要求で盛り込むことになった。
 平成20年中に設置する焦点の新人材バンクに関し、自民党側は、「一定の時期に役割を検証する規定を法案に明記すべきだ」と主張、政府側はこれに応じた。ただ、「見直しは人員規模や業務内容にとどまり、バンクに斡旋を一元化する原則は外せない」とし、バンク設置後3年以内に省庁による再就職斡旋を禁止する点は譲らなかった。
 また、自民党側が求めてきたバンクへの省庁人事担当部局の関与に関しては、政府案通り「(斡旋は)省庁の人事当局などと必要に応じて協力する」ことで一致。バンクは、斡旋希望職員の経験や人事情報などの提供を省庁側から受けるが、斡旋業務には関与させないとした。
 もう一つの対立点だった再就職斡旋の規制対象は、「独立行政法人などは国との関係が深く、人事の延長線上で対象外にすべきだ」と求めていた自民党側が要求を取り下げ、政府案の「全非営利法人」とすることで合意、公明党も了承した。
 一方、定年延長や幹部職員の公募制導入など改革全体の進め方を盛り込んだ新法「国家公務員制度改革基本法」(仮称)は、次期通常国会に提出することで一致した。バンクの名称は、与党側から政府案の「『再就職支援センター』という名では、天下り公認機関と言われる」との指摘が出て「官民人材交流センター」にすることが決まった。
 産経新聞 4月12日8時0分

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 さんざんもめていた公務員の「人材バンク」について、政府と与党の合意がなった。

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 公務員改革の合意を評価=安倍首相

 安倍晋三首相は12日夕、国家公務員の再就職あっせんを「官民人材交流センター」(仮称)に一元化する公務員制度改革で政府・与党が基本合意したことについて「わたしが示した基本方針通り決めていただいた。今後改革が進むと期待している」と評価した。首相官邸で記者団の質問に答えた。
 時事通信 4月12日19時2分

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 安倍総理はこの合意を評価しているようだが、細かく見るとあちこちに「罠・抜け道」が仕掛けられているようで、決して手放しで褒められる出来ではない。

斡旋希望職員の経験や人事情報などの提供を省庁側から受ける」という形を入れておいて、「斡旋業務には関与させない」というのがどこまで徹底できるかこれからの課題になるし、与党の「見直し規定」を盛り込んだのも、

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 人材バンク「見直しは一元化後」で調整…公務員制度改革

 政府は14日、公務員制度改革関連法案に盛り込む「官民人材交流センター」(新・人材バンク)の「見直し条項」について、センター設置後3年以内とされている「国家公務員の再就職あっせん一元化」の数年後に時期を限定する方向で調整に入った。
 政府・与党は、センターの運営方針や組織体制を見直す「見直し条項」を関連法案に入れることで合意している。しかし、政府・与党の基本方針では、「センター設置後、随時、効率性・実効性の観点から見直しを行う」として、見直し時期を明示していないため、与党内では、「2008年中のセンター設置後、あっせんがセンターに一元化される前に制度を見直せば、骨抜きにできる」との思惑もちらついている
 読売新聞 4月15日3時7分

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2008年中のセンター設置後、あっせんがセンターに一元化される前に制度を見直せば、骨抜きにできる」などという考えがあるという噂もあるので、要注意である。


 この「公務員改革」については、単に「天下り」を問題視していると思っている人も多いだろうが、そうではない。小泉・安倍ラインが目指しているのは、「公務員の意識改革」である。天下りを規制するのは、彼らの尻に火をつけることで意識を代えさせようという「手段」に過ぎないのだ。

 何度か書いていることだが、「公務員の世界」というのは民間では考えられない意識に支配されている。

 たとえばこの事例、

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 不正入札で失職、有罪の大阪市役所3職員にカンパ8千万円

 大阪市が発注した街路樹維持管理業務を巡る不正入札事件で、偽計入札妨害罪で有罪が確定し、失職した市職員3人の生活を支援するため、幹部らから寄付を募るカンパが行われ、総額が7000万~8000万円に上る見通しとなったことがわかった。
 市役所内に結成された「有志の会」が寄付を募っており、「市の同和行政に絡んだ引き継ぎ業務の一つで、3人は犠牲者」と同情する声が多い。一方、「不正入札が組織的に行われてきた証し」として、改めてトップの責任を問う声も出ている。
 2005年10月、ゆとりとみどり振興局の係長(52)が同業務の指名競争入札で特定の業者に便宜を図ったとして逮捕され、その後の捜査で、大阪府同和建設協会所属業者だけを指名業者に選定していたことが判明。昨年1月には不正を知りながら決裁したとして同局課長(53)と課長代理(43)も逮捕。8月、大阪地裁で課長に懲役1年2月、執行猶予3年、ほかの2人に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。
 読売新聞 4月13日14時46分

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 汚職で首になった職員をカンパで救うなど、およそ普通は考えられないことである(しかも八千万も集まるとは!)。
 彼らは不正入札を誘導したのだから、市役所に迷惑をかけていることになる。本当ならばまじめに働いている職員からは蔑まれてもおかしくない。それが、「『市の同和行政に絡んだ引き継ぎ業務の一つで、3人は犠牲者』と同情」される。これは以前にも書いた、「法に反しても公務員の常識に反していないければ救われる」の好例である。
 公務員の世界では法律よりも上司の言葉(あるいは役所の慣習)が絶対である。法律違反をしても上司(慣習)に従っていれば身は守られるが、法律に従って上司(慣習)を告発すれば、それこそ「天下り」の道も閉ざされて干されることになる
 これが行政の「馴れ合い」と「怠慢」を生む原因でもあるのだ。

 今回の「人材バンクを使った天下り規制」はこの「風土」を変えるための最初の一歩に過ぎない。それが骨抜きにされるようでは、その先にそびえる「官庁」の壁を崩すことなどとてもできないだろう。


 なればこそ、自民党が「悪巧み」をしている現在、野党は「公務員を従わせることができる」ことを示して自らの政権担当能力をアピールする絶好の機会なのだが、

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 新人材バンク「拙劣な構想」=国民新・亀井代表代行

 国民新党の亀井静香代表代行は11日の記者会見で、政府・与党の公務員制度改革案について「新人材バンク自体が拙劣な構想だ。巨大権限を有する新たな官庁がつくられるだけに終わる。『ええかっこしい』では現実の解決にはならない」と批判した。
 時事通信 4月11日19時1分

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 こんなことをいう人がいてはなぁ(冷笑)。
 まあ、自分も警察官僚出身の亀井氏である。この言葉は「公務員の世界観」をよく知っている人の「苦言」として聞いておくこともできるかもしれない(笑)。が、ならば「巨大権限を有する官庁」にならないように縛りをかけるのはあなたたち国会議員の仕事である。

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 再就職あっせんを全面禁止=民主が対案-公務員改革

 民主党は11日の「次の内閣」で、省庁による国家公務員の再就職先あっせんを全面禁止することを柱とする公務員制度改革の考え方をまとめた。こうした内容を盛り込んだ国家公務員法改正案などを、政府案への対案として国会に提出する方針。
 民主党は昨年の通常国会で、離職後5年間は在職していた省庁と密接に関連する企業や特殊法人などへの天下りを禁止する法案を参院に提出、継続審議になっている。政府が新人材バンクに再就職のあっせんを一元化することなどを盛り込んだ改正案を提出する方針であることから、あっせんの全面禁止のほか、(1) 元職員の口利き行為を規制し、違反者には懲役や罰金を科す(2)国家公務員倫理審査会に公務員の口利きなどの監視機能を付加する-などを追加した。
 また、地方公務員法についても、国家公務員と同様、離職後5年間は関連企業への天下りを禁止する改正案を提出する。
 時事通信 4月11日21時2分

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「安倍総理ばかりに公務員改革の手柄を上げさせて人気にされてたまるか」という思惑からかもしれないが、民主党も与党案をさらに厳しくするべきだという修正案を出してきた。
 審議というのはこういう「俺の方がいい考えがあるぞ」という方向で行うものである。ただ「文句」をつけて「反対! 反対!」というだけならば、議員の資格はいらないのだ。

 亀井(静)氏は、

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 人材センターは「うば捨て山」=公務員制度改革で国民新党・亀井代行

 国民新党の亀井静香代表代行は15日午前のフジテレビの番組で、政府・与党が合意した国家公務員の再就職を一元的にあっせんする官民人材交流センター(仮称)について「うば捨て山」と批判した。亀井氏は「省として要らなくなったと言われた人を、民間が高い給料を払って来てもらうことがあるか」と指摘。その上で、公務員制度改革としては、採用を3分の1程度に減らし、定年まで働く環境をつくるべきだとの見解を示した。加えて、国会議員の定数を半分以下に減らすべきだとの考えも披露した。 
 時事通信 4月15日13時1分

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 こんなことを言っているが、その「省として要らなくなったと言われた人を、民間が高い給料を払って来てもらうことを今までずっとやってきたことが問題なのだ。亀井氏は「人材バンク」構想が出てきた背景や目的が本当に分からないのだろうか? それともしらばっくれて文句だけ言っているのだろうか?
定年まで働く環境をつくるべき」というのはよいのだが、そもそも「一人が次官になったら同期は皆辞める」というのは、どこから出てきた慣習なのだろうか? 単に官僚の「同期の下で働けるか!」というやっかみが元ではないのかとも思うのだが。
 そういう感覚の払拭が、先に指摘したように今度の「改革」で目指すものである。
 氏がこのような「改革意識」を本当に持っているのならば、「テレビ」で考えを披露するのではなく、国会でやってもらいたい。「民、百姓と国会議員は違う」といったのは誰だったっけ?(冷笑)


 本日の授業料。

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 国立大授業料、大学や学部で差…再生会議が提言素案

 政府の教育再生会議(野依良治座長)の国立大学財政に関する提言素案が13日、判明した。
 適切な競争原理と成果・実績主義の徹底を基本とし、予算配分に一段とメリハリをつけるのが柱だ。具体的には、現在は全国ほぼ一律の授業料・入学金について、理系を高くして文系を安くするなど、大学や学部別に差をつけることや、60歳以上の教員の給与を段階的に削減することなどを提案している。
 素案は、第1分科会(学校再生)の白石真澄主査(関西大教授)と小野元之副主査(元文部科学次官)が作成し、13日の第3分科会で提示した。
 素案は、教育財政の基本方針を「教育現場の効率化や、真に実効性ある分野に投資を行う『選択と集中』を考慮すべきだ」としたうえ、大学の統廃合を含め、徹底した合理化の必要性を強調している。
 読売新聞 4月14日10時31分

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 これはとんでもない改悪である。
 私が通った国立大学の理学部では、私を含めてほとんどの同級生が「私学は入学金や授業料が高すぎる」という人間だった。
 理系・文系の差がなく、しかも安い国立大学の学費というものは、裕福ではない家庭にとって強い味方であったのだ。
 小泉改革の「悪い」部分がこの大学の独立行政法人化と成果にあわせた予算配分だったが、それを「強化」する方向に動くことは大学教育のさらなる荒廃と低俗化を生むだけである。

 中には「アニメの製作技術を学ぶ」などというさすがに「それはない」というものもあるが、「真に実効性ある分野」以外にも大学の存在価値はある。いや、そのような分野は私企業でも力を入れるだろうから、「即効性がない分野」や「何になるかわからないが何か役に立つだろう」という研究をやることこそが大学の「価値」というものであり、アカデミズムというものである。
 教育分野での「競争」というのは単に「実効性」だけで計れるものではない。




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