「個人の口をふさごう」としているのは、誰かな? | 偕楽園血圧日記

「個人の口をふさごう」としているのは、誰かな?

 昨日取り上げた安倍・グレテス会談、事務総長の「必ずしも国連の総意を反映するものではない」という言い回しを「『必ずしもと』いうのだからカナタチの日本非難を否定しているわけではない」と曲解している人間がネットにはいるようで、いやはや。
 もちろんこれは、「国連報告者というのは国連の委員会が調査報告をさせてそれを総会などに持ち上げるために任命するのだが、だからといってその人間のいうことが『必ずしも国連の相違を反映するものではない』。国連の総意にならない個人の発現もある」ということで、今回のカナタチの行為を「国連のもの」としようとする動きに対する否定と警告をしているのである。
 そんな当たり前のことをわかろうともしない/わからない人間が、どうやって人の共感を得られるというのだろう。


 さて、「個人の発言」といえば、毎日新聞が、

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 <政府要人>「個人の見解」なら、何を言っても許されるのか


(表、毎日新聞より。<政府要人>「個人の見解」なら、何を言っても許されるのか)

 安倍晋三首相が9条への自衛隊明記を唐突に提案し、自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長が「ありがたい」と述べた。憲法軽視ともとれる発言だが、菅義偉官房長官は「個人の見解」だとして問題視しない。この表現、最近やたら目につく。政府要人が公の場で「個人の見解」と断れば、何を言っても許されるのか?
 発言は23日、東京の日本外国特派員協会での記者会見で飛び出した。自衛隊法61条は隊員の政治活動を制限し、入隊時の服務宣誓で憲法順守を誓う。憲法学者の木村草太・首都大東京教授は「憲法99条の公務員の憲法尊重擁護義務にも抵触しかねない」と指摘する。
 しかし、菅官房長官は24日の会見で「個人の見解」だと強調。翌25日には稲田朋美防衛相と河野氏本人も「個人の見解で政治的意図はない」と釈明した。
 実は河野氏、23日の会見では「一自衛官として申し上げれば」と述べていた。「自衛官(公務員)」の見解ならなおさら問題だ。それが「個人」にすり替わっている。「飲み屋での会話ではなく、統幕長として臨んだ記者会見です。個人的な発言にはなりえません」(木村さん)
 稲田防衛相も3月、森友学園問題で注目される教育勅語を巡り「(教育勅語の)核の部分は取り戻すべきだ」と国会で答弁。菅官房長官は「所管外で個人的な発言」と釈明した。木村さんは「そう言うなら国会でプライベートな会話をすべきではない」とあきれる。
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「個人の見解」なら何でも許されるのか。
 タレントの松尾貴史さんは「都合の悪い時に『個人の見解だから問題ない』と片付けるのは、『個』の存在を軽んじていることの裏返し」と指摘する。
 国会で審議中の「共謀罪」に、国連のプライバシー権に関する特別報告者が懸念を示した一件でも、政府は「個人の資格による調査。国連の立場を反映するものではない」と反論した。松尾さんは「これも『個人の見解』ということで、問題を矮小(わいしょう)化するいつもの手口だ」と説明する。
 米国在住の映画監督、想田和弘さんは、こうした物言いを「まるで『ブルシット』(牛のフン)。でたらめ、うそ、まやかし、という意味の俗語です。牛のフンをばらまいて問題の本質を隠し、世間をかく乱している」と批判する。
「森友問題で安倍首相は妻昭恵さんを『私人』だと主張し、議論を『便宜供与の有無』から『私人か公人か』にそらした。あれと根は同じ。『個人の見解』を政治家が多用するのは、批判逃れに効果的と気付いたからでしょう」
 トランプ米大統領の登場で「ポスト・トゥルース(真実)」「フェイク(偽)ニュース」という言葉が脚光を浴びている。「米政界でもブルシットは多いが『個人の見解』は聞かない」と想田さん。憲法改正など重大な問題について「個人の見解」を連発し、世論を着々と醸成していく。この点で「安倍政権はトランプ大統領の先を走っているのでは」とも。【小国綾子】
 毎日新聞 5/26(金) 18:15

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 こんな記事を書いていた。

「何を言っても許されるのか」というならば、その人が「個人の意見だ」としていうのならば、別に何を言おうとそれはその個人の自由である。それこそ彼らのいう「表現の自由」というものだ。
 だがもちろん、「個人の意見」でもその意見の内容に責任を持つのもまた個人なわけで、その内容によっては「そんな意見は社会的な、あるいは道徳的に、など、いろいろな理由で許されない」ということはある。
たとえば(2014/04/14の記事、事務所費騒ぎの時の「すり替えバッシング」に乗せられない!)で取り上げた橋下大阪市市長(当時)の「マンションに愛人を住まわせろ」発言などは、ただの下品なジョークということがわからない人間には「愛人というものを認めるのか」と批判されることもあるだろう。
 だが、それは橋下氏の恋愛観に対する反対意見であり、それをもって「だから市長辞めろ」とするものではない。

 安倍氏の九条改憲の意見でも、国会議員を束ねる政党代表として「議員の意見」を口にしたのだから、それに対する意見は提起された問題について出なくてはならない。
拙ブログでは(2017/05/07の記事、加憲ではなく全面改正を!)で「今の条文を残したまま同自衛隊の存在と折り合いがつけられるのか。変えるならば全部変えるべきだ」と意見したし、「条文をうまく考えることで今の憲法との整合性も取れる」という人もいる。

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 首相改憲発言は「憲法を軽んじる言辞」 学者らが批判

 5月3日の安倍晋三首相の改憲メッセージをめぐり、法学などの専門家でつくる「立憲デモクラシーの会」は22日、東京都内で記者会見し、「改憲自体が目的であるかのように、憲法を軽んじる言辞を繰り返すことは、責任ある政治家のとるべき態度ではない」と批判する見解を発表した。
 安倍首相はメッセージで、憲法9条1項と2項を残し、自衛隊の存在を明記すると主張した。これに対し見解では、「自衛隊はすでに国民に広く受け入れられた存在で、憲法への明記に意味はない」と指摘。首相が改憲の理由に「自衛隊は違憲」とする学者らの見方を挙げていることについて、「憲法学者を黙らせることが目的であれば憲法の私物化」と批判した。
 青井未帆・学習院大教授(憲法)は会見で「自衛隊を憲法に書き込むと、武力行使の限界がなくなり、9条2項が無効化する」と指摘。石川健治・東大教授(憲法)は「(憲法に自衛隊が書かれていないことで)軍隊を持てるのかということが常に問われ続け、予算などの面でブレーキになってきた。その機能が一気に消えてしまう」と話した。
 長谷部恭男・早大教授(憲法)は「合理的な安全保障論抜きで、もっぱら情緒に訴えて憲法9条を変えようとするのは本末転倒」と語った。西谷修・立教大特任教授(哲学)は「96条の改正や緊急事態条項の新設など、政権側がご都合主義的に手を替え品を替え出してくる改憲の提案に国民が振り回される」。山口二郎・法政大教授(政治学)は「野党から質問されて『新聞を読め』と答える安倍首相に憲法を論じる資格はない」と述べた。
 見解では、高等教育の無償化についても「高等教育を受ける権利を実質的に均等化するために必要なことは、憲法改正を経た無償化ではなく、給付型奨学金の充実などの具体的な政策」として、憲法改正の必要はないと主張している。(編集委員・豊秀一)
(以下見解分、略)
 朝日新聞デジタル 5/22(月) 22:43

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 今まで「違憲だ違憲だ」といっていたことなどすっかり忘れて「自衛隊はすでに国民に広く受け入れられた存在で、憲法への明記に意味はない」と言い出す方文学者の意見も、私はちゃんちゃらおかしいと思うが、一つの意見だろう。
 だが、これをもって「そんなことをいう人間は立法府をないがしろにするものだから総理を辞めろ」というのは、悪質なすり替え。「自分が気に入らない人間の口をふさぐ」全体主義思想の発現である。

 統幕長の発言も、求められたから「あえて」今まで「違憲の継子扱いされていた組織に属する一個人」として感想を述べたもので、「なるほど参考になる」で済む話であるし、教育勅語で答弁したものについて「そう言うなら国会でプライベートな会話をすべきではない」というなど、論点そらしも甚だしい。

 毎日新聞は、総理や統幕長が「その立場を離れて」発言したことに対して「個人」の意見で非難をしているが、その記事は「個人の話」を前に立てることで「毎日新聞の意見ではありませんよ」と逃げているのだから何ともふざけている。
 記者がツィッターなど名書き込むことを「一個人の発言だから」と責任逃れをするような組織が、いったいどういう料簡で「個人の意見」の言葉尻をとって「辞めろ辞めろ」と騒げるのだろうか。

 そういう彼らは、今回カナタチ氏が「国連の相違」ではない個人の意見を言ったからといって「立場の乱用だから辞めろ」とは決して言わないのだから、不思議な話である。


 本日の神業。

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 ロボがスマホ保護シート貼ります ソフトバンク試験導入


(写真、朝日新聞デジタルより。2本の腕を使ってスマホに保護シートをはる「デュアロ」。後方は「ペッパー」=25日午前10時29分、大阪市北区梅田、安冨良弘撮影)

「あなたのスマートフォンに保護シートを貼って差し上げますよ」――。コミュニケーションロボット「ペッパー」が客に呼びかけ、別のロボットがスマホの画面に保護シートを貼るサービスを、ソフトバンクが25日から始めた。大阪市北区の店舗での試験導入で、31日まで。
 サービスは米アップルのiPhone端末6機種向けで、シート代を含めて税込み2千円。客はペッパーの胸の画面で機種を選び、指示された場所にスマホとシートを置く。長さ約1・5メートルの2本の腕を持つ川崎重工業のロボット「デュアロ」が、腕先についた指のような部品で器用に画面のゴミを取り、シートを気泡もなく貼ってくれる。作業は約1分。ペッパーは「うまく貼れるか楽しみですね。デュアロくん頑張れ」と声をかけて盛り上げた。
 両社は今年2月、両ロボットを組み合わせて、産業用に活用することで合意。人手不足の店舗などで使えるサービスを考えている。今回はその一環で、消費者の反応を見ながら、様々な活用方法を探る。(伊沢友之)
 朝日新聞デジタル 5/25(木) 11:53

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 はははっ、これは楽しいイベントだな。

 だけど、公式がこういうことをするということは暗に「スマートフォンなどの画面には保護シートが必要」だということを認めていることにもなるわけで。
 ならば工場出荷の段階で、変なペラペラのビニールではなくてしっかりした保護シートを貼っておけばいいのではないのかな?