「この3年を返して」
この世の全てが憎いというような目をした彼女の口から出た言葉は
もちろん他の誰でもない 私一人に向けられた言葉だった。
「じゃあ死ね」
彼女の言葉を受け止めるでなく 負の感情に任せ
私の口から出た言葉もまた彼女に負けぬ劣らぬものだった。
声に出した言葉が現実のものになるという言霊(ことだま)
というものが現実に存在するとしたならば、
私と彼女で世界中の不幸を引き受ける事ができただろう。
それほど深く、重く、黒いマグマの様な憎しみを込めた言葉が
まだ、かろうじて夫婦だった二人の間に交錯した。
仮にお互いを被告とする陪審員になったとしても
何のためらいもなくお互いに極刑を告げるだろう。
それほど決定的な意志が二人を取り囲んでいた。