その日の夜には早速、ナオミの歓迎会が開かれる事になった。
普段は仕事に追われている営業所ではあるが、
歓送迎会、忘年会、期末の打ち上げなどの区切りの際には
飲食店経営者の期待に応えるかの様にキッチリと
飲み会がひらかれる事になっていた。
「さぁ、先に行っとくか」 隣の席に座っている同期入社の
藤沢の独り言とも呼びかけともとれぬ声を合図に
ナオミも含めた私たち若手の6人は先に会社を出ることに
なった。
これまで仕事以外に一緒に遊びに出かけることも多かった
このメンバーにナオミが加わるのは間違いないだろう。
今回の幹事役でもある藤沢を先頭に私たち6人は
何でもない話に華を咲かせながら会場に向かっていた。
この時はもちろんナオミと私は完璧な先輩・後輩であり、それ以外の
何者でもなかった。
私には大学卒業間際からつきあっている彼女がいたし、ナオミにも
同じ会社の広島営業所だかの彼氏がいるはずだった。
私は彼女に満足していたし、他に何かを求めている訳ではなかった。
*
ただ、暑い夏はもう始まっていた。
*
この夜もナオミと私の最後を暗示するかのような暑さだった。
昼の間遠慮なく太陽の光を浴び続けたアスファルトの道路が
その身では消化しきれない何かを叫ぶように吐き出しているようだった。
太陽の光に焼かれ、無機質な排気ガスに耐え、何度踏み敷かれようとも
だまって耐えていた鬱積(うっぷん)を吐き出しているようだった。
留め続けることなどできないと叫んでいた。