「ごめん」



「……」



「……」



「どうしても、ダメ……?」



「……うん」



「……」



「お前のこと、嫌いとか、そういうんじゃなくて。

 普通の女友達としては、

 オレみたいなやつに優しくしてくれて、いいやつだって思ってて」



「……」



「だから、その、お前が悪いんじゃなくて……。

 悪いのはオレだから」



「前の彼女さんのことが忘れられないの?」



「……」



「私じゃだめかなぁ?」



「……ごめん」



「どうしても忘れられない?」



「うん……」



「……」



「……」



「……わかった。

 うん。

 ごめんね。変なこと言って」



「いや」



「また、今まで通りでお願いね」



「ああ、うん」



「なんかお腹空いちゃった。

 ご飯食べに行こうよ。

 ……そんくらい、いいでしょ?」



「ああ、えっと、うん」



「ほら、いこいこ」

「やっぱ、おかしいと思うんだよ、リーダーの言うことは」



「だよねぇ」



「だってさ、お客なんかほっといても来るんだから

 適当に相手しておけばいいんだよってさ、

 それは違くない?」



「でも、そうしないと、お店まわんないじゃん」



「だけど、私は、やっぱり1人1人のお客様と

 ちゃんと話をして、納得して買ってもらいたいの。

 それにそっちの方が、口コミで広がると思うし、

 何より、そのお客様がまた来てくれるかもしれないじゃん?」



「それはそうだけど……。でもねぇ」



「でしょ?」



「でも、大変だよ? 今だって、1人1人を、

 言い方悪いけど、適当に見てるから回せてるところもあるんだし

 それぞれの人にあった、なんて言い出したら

 半端じゃなく辛いと思うよ。肉体的にも精神的にも」



「じゃあ、今のままでいいと思う?

 今のままのやり方で、お客様が増えていくと思う?」



「それは……、たぶん、今が精一杯で、

 頭打ちだと思うけど」



「私もそう思う。

 決めた。

 やっぱり、明日リーダーに言う」



「ケンカになるよー?

リーダーって結構オレ様な人だから」



「でも言う。

 ホントのことを言わなくちゃ。

 自分の気持ち隠して、イライラしながら仕事してたって全然楽しくないもん。

 それに」



「それに?」



「私の考えは、正しいと思うから。

 もしかしたら間違っているかもしれないよ?

 でも、今の私にとっては、一番正しいことだと思うから」

「出会いがなーい」



「出会いがなーい」



「もう、こっちはさ、むちゃむちゃ彼氏作る気になってるのよ!」



「うんうん!」



「誰でも、とは言わないけど、

 そこそこ顔が良くて、そこそこお金持ってたら

 それでいいのよ」



「そうだ、そうだ」



「なのに、なんで?

 なんで、こんなに出会いがないの?」



「もー、ねぇ」



「このままじゃ枯れちゃうっつーの」



「そうだよー」



「出会いがなーい」



「出会いがなーい」



「てか、あんたも!

 こんなところで、あたしと飲んでる場合じゃないよ?」



「そうだよー……ねぇ」



「ねぇ、じゃないってば

「それで。

 今回はどうして浮気したわけ?」


「ごめんなさい……」


「今回は、っていうか、今回も、だけど」


「ごめんなさい……」


「謝ってないで、理由教えてよ」


「……」


「相手の男から誘ってきたわけ?」


この前、飲み会で一緒になって、その後メールやりとりして、

 何回か会って、すごく優しい人で」


「そのままホテルに誘われて、のこのこついて行ったと」


「のこのこじゃないけど……」


「なぁ。この前浮気したとき、『もう絶対しないから』って言ったよな?」


「……うん」


「言ったよな?」

「……言った」

「それはウソだったわけ?」


「そんなことないよ!」


「でも、浮気してるじゃんかよ!」


「それは、向こうが優しいから、そんな人だとは思わなくて……」


「なんで、優しいからってほいほいついていっちゃうんだよ……。

 オレはそんなに優しくないか?

 他人に目がいっちゃうような、優しくない彼氏か?」


「ううん! 優しい! 優しいよ……」


「だったら、頼むからもうこんなことやめてくれ

 このままじゃ、オレ、お前のこと信じられなくなっちまうよ」


「ごめんなさい……」


「謝らなくていいからさー」


「ごめんなさい……」


「……」

「ありがとう、って言うのは大事なことなんじゃね?」


「そりゃあ、うん」


「オレは何も言わないやつよりも、ちょっとしたことでさ、

 何かをとってあげたとか、扉を押さえてくれたとか、

 そういうことをしてくれたら、ありがとうって言ってくれる子の方が好きだけどな」


「あたしだって、そうだよ」


「だしょ?」


「んー、でも、あんまり、ありがとうって言うの、好きじゃない」


「どして?」


「好きじゃないっていうか、言うのはいいんだけど、

 何かにつけて、ありがとうって言われるのは何だかイヤだ」


「えー、いいじゃん(笑)」


「なんかさー、ウソみたいんだよね。その、ありがとうって」


「そんなことないっしょ」


「条件反射でありがとうって言ってるだけで、

 心の底からありがとうって思ってないじゃん、って思う」


「まあ、常にありがたいって思うわけじゃないだろうけど」


「だったら、言わない方がいい。

 そんなウソみたいな『ありがとう』なんて聞きたくないし」


「よくわかんねぇなぁ(笑) 別にいいと思うけど」


「あたしは、ホントに感謝してるときにだけ言って欲しいの。

 どうでもいいときにまで挨拶代わりに言われると、

 その人は結局、あたしには『ありがとう』って言っておけばいいんだ、って

 思っているように思えて、寂しくなるの」