赤い星雲と天体写真の今昔 | カメキチの星と野鳥写真の部屋

カメキチの星と野鳥写真の部屋

Star and Birdwatching by Kamekichi
かつて天文少年だったカメキチが、長い冬眠を経て、定年退職を機に星と野鳥写真の撮影を再開した記録です

皆さん、お元気ですか? カメキチです。

カメキチは生来の無精者で、天体写真も野鳥写真も撮りっぱなしで放置しておくことが多いのですが、今年の1月に撮影した「バラ星雲」の画像処理を今頃になってやっているうちに、50年前にカメキチがまだ高校生だった時代のことがひしひしと思い出されて、思わず感慨に浸ってしまいました。

 

このブログでも、初回に自己紹介を兼ねて50年前の天体撮影事情について少し書かせていただきましたが、その頃は、そもそもバラ星雲を撮影しようなどとは、思いもよりませんでした。

オールドファンでしたらお分かりかと思いますが、その昔、天体写真で最もよく使われていた白黒フィルムはコダック社のトライXでした。

しかしこのフィルムは、なぜか赤色への感度がものすごく低かったのです。例えばオリオン座の写真なんかを撮ると、ベテルギウスが2等星ぐらいの明るさにしか写りませんでした。

暗くて写りにくいなら露出時間を延ばせばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、当時のガイド撮影は手動で、集中力が続くのは20分からせいぜい30分が限度でした。

それに長時間の露出をすると光害の問題も大きくなって、却って対象が町明かりに埋もれてしまいますし、当時のフィルムには「相反則不軌」という面倒な問題があって、露出時間を延ばしたからといって必ずしも暗い天体が写るわけでもなかったのです。

というわけで、HⅡ領域にも及ぶような赤い光を放つ暗い天体は、そもそも撮影する気にもなりませんでした。

高校を卒業してからのカメキチは天体写真からは遠ざかってしまったので、その後の天体撮影技法の進化の経緯については疎いのですが、80年代には赤色への感度も高く相反則不軌問題も改善された天体写真専用の白黒・カラーフィルムが出回りはじめたようです。更に写真のデジタル化が、革命的とも言える技術革新をもたらしました。

カメキチも半世紀を経て天体写真撮影を再開するにあたって、市街の光害地でも、昔なら初めから撮影を諦めていたような暗くて赤い星雲がそれなりに写せることに、改めて驚きを感じています。

カメラの赤外改造というのも流行っているようで、カメキチもCanon Kiss X-5を天体写真用に改造したものを使い始めました。

これは赤色の星雲が写りやすくなるように、センサーの前に内蔵されている赤外カットフィルターを除去したものですが、オークションで落札した一時代前の中古のカメラに簡単な改造を加えてもらっただけですので、とっても安く手に入りました(●'◡'●)。もちろんこのカメラは天体写真にしか使えませんが。

下は昨年に撮った夏の定番M8(下:干潟星雲)とM20(上:三裂星雲)です。

 

そして赤色星雲と言えばやはりオリオン大星雲は外せませんので、初回に続いての再掲で申し訳ないのですが、最後にアップさせていただきます。

 

いや、今更ながら赤い星雲ってきれいですね!

他にもいろいろ撮りましたが、これまた整理がついたらおいおいアップさせていただきます。

尚、機材はカメラが先にご紹介しましたCanon Kiss X-5の赤外改造機を、望遠鏡はバラ星雲がBorg 71FL(D71mm F5.6)、干潟星雲と三裂星雲がSV-Bony SV-503(D80mm F7)、オリオン大星雲がKenko SE-102(D102mm F5)を、それぞれ0.8倍レデューサー兼フラットナーと光害カットフィルターを装着して使用しました。

いずれも藤沢市内の光害地で撮影したもので、AZ-GTiにて自動追尾し、10秒露出で180コマ、総露出時間30分の画像をStellaImage でコンポジット処理したものです。

尚、画像サイズをアップロードできる制限内におさめるため、適度にトリミングを加えてあります。

 

カメキチ