昨日、2021年9月2日の日経記事から。

 

(引用開始)

 「政府の成長戦略会議は2日…(略)検討課題案を公表した。金融面での目玉は、財務体質が悪化した企業が金融機関などとの協議の上で債務を軽減する「私的整理」を進めやすくするための特別立法だ。」

(引用終了)

 

【中小企業に対する私的整理は以前から議論されていた】

 ここ20年、過大債務となった中小企業の債務を機動的に、柔軟にカットできる仕組みを作れないか、という議論が続いていました。

 

 ネックになっているのは、基本的に金融機関全行一致がないと債務免除できない原則をどうするか、というところでした。

 

 今回の議論ではこれを「過半数の承認」で合意成立とする方向です。

 

【なぜ中小企業版私的整理ガイドラインが必要か】

 

 2021年8月27日の弊ブログで、

 

 自然災害ガイドライン・コロナ特例/債務整理成立は3件/自然災害は617件のうち556件成立 | 帽子のコンサルタント - 札幌で中小企業再生/ワイズコンサルティングのブログ (ameblo.jp)

 

 という記事を書きました。

 

 法人である中小企業には私的整理による債務整理の道筋がありません。金融機関を集め、特定調停で債務免除を訴える、という方法があるにはありますが細かいルールが定められておらず、合意成立しなければそれまで。

 

 特定調停の場では、「債務カットがなされないと事業継続できない」と述べるわけですから合意成立しないとなると、結局金融機関としては、

 

 「債務が重くてやっていけない、というのなら期限の利益喪失させて回収を急がねば」というスタンスになりかねません。

 

 ここで一定のルールがあれば、「この条件なら合意すべきなのでは」など交渉の余地が出てきます。

 

 コロナで債務が膨れ上がった中小企業が経営続行していくためにもこの仕組みが必須です。

 

【問題もある】

 債務免除ということは金融機関から見た貸倒発生、ということになります。多額の貸倒が発生すれば金融機関の経営が揺らぐことになります。ただでさえ、地方金融機関の体力が落ちてきている中の話です。

 

 例えば、プロパー貸でその企業を支えてきた金融機関が、貸倒を作りたくない、と思っても他の金融機関の貸付が保証協会付で実損が出ない、となった場合、多数決押し切られて損失計上、という状況が想像されます。

 

 今回、コロナという特殊事情に対応する時限立法で法整備が行われると思いますが、どこまでが「やむを得ない債権カット」でどこからが「放漫経営のため債権カットしない」というものになるのか。線引きが難しくなります。

 

 また実効性という観点から、ある程度まとまった件数の整理を行うことを目標とすると、本来免除すべきでないケースが混入してくることも考えられます。

 

 運用が難しいのです。

 

【成長戦略会議がカギ】

 成長戦略会議は毎年夏頃に「このあと年末、年度末に向けてこのような手を打っていく」というものを総括的にまとめます。

 

 その中の中小企業経営に関するところを拾っていけば今後どのような施策が打たれるかがわかります。

 

 今回の中小企業版私的整理ガイドラインは6月の成長戦略実行計画の中に盛り込まれていました。

 

 先に引用した報道もその延長線上にあるものです。

 

【関連施策】

 ほかにも、

 

1.経営者の個人破産が債務整理に着手できない心理的な壁になっているためなんらかの対応策を考える

2.法的整理についても、簡易再生手続きの導入を検討

 

 とポストコロナを見据え、手を打っていくことが明記されています。

 

 経営者の連帯保証問題は既存の経営者保証ガイドラインと組み合わせ、個人破産をしない/住宅を手放さなくても良い、という対応につなげることが期待されます。

 

 今後の動向をこのブログでも注視していきたいと思います。

 

  債務整理にはどのような方法があるか、それぞれの特徴は、連帯保証との関係は?などご相談には初回相談無料にて対応いたします。このような選択肢があります、という大まかな見極めとしてもご相談は非常に有効だと思います。

 

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 先日亡くなった立花隆氏がぼうこうがんを患った経験をもとに書いた本。死とどう向き合うか。

 

 「人は死なない」というのは、「誰もが他人は死ぬが自分は死なないと思っている」と言うことと、生物としての死ですべておしまいと言うことではない、と言うことのダブルミーニング。

 

 現役の医師と気功師の対談。
 

 

 

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 2020年、新著でました。