大学で担当している経営情報論。教える立場ではありますがこの授業に関して私が一番学ぶ立場でもあります。その目線で金融機関を見てみます。

 

 いろいろな業界で今同時に起きているのはデジタル化です。

 

 代り映えのしなかったこの30年間の日本経済で唯一目覚ましい発展を遂げたのは情報分野です。スピード、価格、容量が10倍、100倍、1000倍という尺度で向上しました。

 

 その結果、いろいろな産業でAI化、ロボット化が進展しています。その効果は今までがローテクであればあるほど目覚ましいものになります。

 

 2020年11月19日の日経記事から。

 

 熟練工の不足と人件費高騰に悩まされる建設会社の答えはロボット化でした。

 

 

 

 これは建設会社の例ですが、それを図式化すると、

 

 

 という感じになります。クリックで少し拡大します。

 

 今、地銀の収益力の低下が指摘されています。

 

 2020.11.16日経「地銀の6割が減益・赤字 4~9月期、与信費用増加」から

 低収益性の改善のため地銀を含め金融機関にはこのあと間違いなくデジタル化が進みます。

 

 仕事、と思っていたもののうち「作業」にあたるものはどんどん自動化されていくのです。

 

 支店の役割は?と考えると、

 

 「キャッシュレス化でATM利用が減少」

 「諸手続きはスマホでオンライン化」

 「融資審査はAI化で本店一括審議」

 

 が進んでいくと支店の役割はほとんどなくなります。

 

 個人法人問わず借入の審査など集約できる業務は本店一括で行うスタイルになっていくのではないでしょうか。

 

 その一方で、金融機関の中にはデジタル化できない仕事もしっかり残ります。

 

 2014年、オクスフォード大の「10年後に消える職業」が発表されました。99%なくなる、に口座開設担当者、98%なくなる、に融資担当者が上げられています。

 

 同じレポートの中で消えない職業もいくつか挙げられていますが、すべて「イマジネーション、インスピレーション」が必要な仕事です。なぜならロボットには「イマジネーションがないから」。

 

 同じ融資担当者でもニーズを掘り起こし経営コンサルティングを行いながら融資をつける、というスタイルの方は淘汰されません。

 

 横道にそれますが事業再生コンサルティングは「できることは何か」と知恵を絞る仕事ですのでイマジネーションがないとできない仕事です。

 

 クラウドファンディングなど他の融資手法も興隆する中で金融機関に事業再生セクションだけが残る、という笑えない状況になるかもしれません。

 

 これからの銀行業のあるべき姿は中国のアントグループ(直前の上場中止で話題になりました)の手法が参考になります。

 

 2020.11.3日経「データで稼ぐ異形の金融帝国アント」から

 

 アントグループには銀行はありません。顧客のニーズをつかみ、AIで与信審査を行い、融資の実行のみを提携銀行にさせているのです。

 

 銀行にすれば何も考えず、延滞率も低く、利息が稼げます。

 

 前回の記事で「Amazon銀行が」と書きましたがあながち絵空事ではないとお気づきになられると思います。

 

 業際をひらりとまたいで銀行業に参入する企業がでてくるはずです。

 

 地域金融機関が生き残るとすれば、「デジタル化の進んだコンサルティング会社に融資機能がついたような企業体」ということになるのではないでしょうか。

 

 ここで示したようにその流れは金融機関だけに起きているものではないのです。

 

 金融機関の効率化アップ、というと合併を思い浮かべますがそうではありません。低収益の会社がほかの低収益の会社と合併しても効果はないからです。

 

 記事を引用した鹿島建設が他社との合併を生き残り手段として考えなかった、というというところが重要だと思います。 

 

 

 

 

 

 拙著「倒産のリアル」発売になりました。

 

 コンサルタントを始めていままで見てきた再生の現場をなまなましく描きます。

 

 「ビジネス書とも、経済小説の短編集とも取れる内容。普段あまり本を読むことのない自分でも一気に読めた」

 「文体や段落、行間やダッシュの使い方がミステリー小説の文体に近くつい引き込まれた」

 などのご感想をいただいています。

 今まで、事業再生関連の本は、ガイドブック的な造りだったり、解説書風だったり、あまり読んでいて面白くない文体のものが多かったので、そうでないものを、ということで書き下ろしました。

 

 札幌市内ではコーチャンフォーさん、ジュンク堂さん、札幌駅横の紀伊国屋書店さんなどに置いていただいています。

 

 お手に取っていただければ幸いです。

 

 

 

 

 非常に刺激的な本でした。

 

 

 

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