デビュー戦を引き分けて以来、20連続KO勝ち。小林選手が王座を明け渡した 廉 東均(韓国)を12回KOに破って王座に就いたゴメス。当初1977年8月11日に予定されていた小林戦は、チャンピオンが練習中に左アゴを骨折した為に延期。主催者は延期釈明の為、わざわざゴメスを来日させた。
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すったもんだで決まった試合期日は78年1月19日北九州市。「ケガや病気以外の理由で、1月19日の試合を再び延期するような事があれば、タイトルをはく奪する」WBCも強かった時代。
17連続KO防衛を果たす事になるゴメスだが、当時、そんな未来は予測出来ない。小林選手は、「打ってきてほしいと願っている」と強気。その強打に絶対の自信を持っていた。コンビを組むエディ・タウンゼント・トレーナーも、「やっぱり、小林のパンチを警戒して足を使って来るでしょう」と予測している。
ゴメスは廉の左フックでダウンを喫していた。そして、アゴの骨折によるブランク。一発の威力では挑戦者が勝る。小林選手には大きな期待が寄せられていた。
そんなムードの中、来日したチャンピオンは練習でその強さを存分に発揮する。打たせないのである。足使ってよし、ロープを背にしても、パートナーのパンチは全く当たらない。そして、鋭いショートブローが飛んで来る。
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「小林は大振りでは勝てない。どれだけショートを打てるか・・・」
エディ門下の兄弟子ガッツ石松(ヨネクラ)選手は、プエルトリコのヘスス戦でゴメスと練習を共にした経験を持っていた。ショートブロー。タウンゼント・トレーナーもそこは承知で、必殺のショートブローを小林選手にタップリ教え込んでいた。
減量苦の小林選手が、試合前日200グラムのステーキを摂れるほど減量はスムーズ。調子がいい。それだけに高橋会長は、前半抑えて行くよう指示。だが、待たされた挑戦者は初回から自慢の強打を振るって出る。
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数発挑戦者のパンチがヒットする。だがチャンピオンは冷静に受け止めていた。「小林のパンチは強くない」勝者の発言だけに強がりではないだろうが、小林選手のパンチを強くないとは、たいした自信である。
3回、ゴメスの右ガードが下った。小林選手は、一打必殺の左フックで飛び込む。その刹那、キャンバスにダイビングしたのは挑戦者だった。左ショート・フック一閃。芸術的なカウンター一発。顔面からリングに落ちた小林選手。今なら、倒れた瞬間ストップだろう。
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しかし、あれだけのカウンターを貰いながら元王者は立ち上がった。記憶は飛んでいる。戦う本能だけ。それは王座奪回への執念であったろう。だが、勝負は最初の一発で決していた。3回1分25秒KO。
調子がいいばかりに大振りになってしまった小林選手。少しばかりパンチが当たるので、調子に乗って前に出る。王者は冷静にカウンターのタイミングを計っていた。「狙っていたパンチ」
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小林選手の耳に入ったのかどうかはわからないが、タウンゼント・トレーナーは、試合前夜、チャンピオンが40度近い熱を出し苦しんでいたのを知っている。ベテラン・トレーナーには、勝利への作戦があったようだ。
調子がいいばかりに、コーナーも興奮気味だったこの夜。各々が、良かれと思って様々な指示を出す。
「あれでは私の言う事、何も小林わからない」
タウンゼント氏は、いかにも残念そうに振り返る。そして小林選手も、「調子に乗りすぎた」と、痛むあごをさすりながら話すのだった。「ゴメス強いですよ」ひどいコンデションの中、冷静な一撃を見せたチャンピオンを称えたタウンゼント氏。
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調子がいい挑戦者と、ひどい状態の王者だったからこそ、生まれた芸術的カウンター。スピードとタイミング。研ぎ澄まされた集中力の中から、歴史に残る一打は放たれた。
「調子良かったらいいけど、体が動かず調子悪くても、その時出来る事を考えてやるしかないよ」
試合前、選手には常にそうアドバイスする。それにしても小林選手、アルゲリョ挑戦の後がゴメス。そして次に挑んだのがフェザー級史上最高の防衛記録を持つに至るエウゼビオ・ペドロサ(パナマ)。ある意味、凄い記録を持つ選手です。
「大きなバッグ揺らしてさァ。頭振って左フック、カチーンってそればっかりやってたなァ、小林さん」
小林選手の左フックもまた、破壊力抜群の強烈なパンチでした。
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