協栄ジムは先輩、後輩の絆が強い。たくさんの世界王者が育ち、多くの無名選手が血の汗を流した。
昭和38年(1963年)。デビュー4年。苦労の果てに栄光にたどりついた笑顔。
二人のスタートは道場もなく、ささやかなものだった。菓子折り下げて、練習に歩く。
度重なる左拳の骨折。
苦節6年、涙の世界王座奪還。勝利のリング上、初めて涙した海老原先輩。
右拳は試合前麻酔を打ち、左拳は9回に折れていた。
10年間リングで戦い続け、協栄ジムの礎が築かれた。
人間性もある。自分だけよければであったなら、以後の繁栄はない。
ラストファイト。
公開スパーで左肩を痛めていた。
鎮痛剤の注射も功をなさず、4回にはもう動かない左。 これでは試合にならない。
「タオルだけは絶対投げないで」
皆さん、ありがとうございます。- 感謝 - 【女子ボクサーのカカアコジム日記】
5回以降、打たれ続けた長い15回だった。
「タオル投げないで」
試合中どんなに打たれても、そう言い続けた。
エディ・タウンゼント氏は、泣きながらタオルを握っていたという。
海老原先輩は、清く、美しく、最後の戦いを終え、グローブを置いた。
これが協栄ジムの教えであると思う。
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