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１９７１年春、日本には５人の世界王者が君臨していた。フライ級大場政夫（帝拳）、ＷＢＡフェザー級西城正三（協栄）、ＷＢＣフェザー級柴田国明（ヨネクラ）、ＷＢＡ/Ｓ・フェザー級小林 弘 （ＳＢ中村）、ＷＢＣ/Ｓ・フェザー級沼田義明（極東）の５人である。
しかして、日本プロボクシング協会会長に就任した笹崎ジム・笹崎タケシ会長は、「戦後、今ほどボクシング界が危機に立った事はなかった」と発言。７１年時点での問題点とは何か、現在は、を探ってみる。
１月から４人のチャンピオンが防衛戦を行なった。１月３日沼田選手、静岡・観衆４千人、ＴＶ視聴率３０．７％。２月２８日西城選手、宇都宮・観衆７千人、ＴＶ視聴率３４．９％。３月４日小林選手、東京・観衆５千人、ＴＶ視聴率３６．７％。４月１日大場選手、東京・観衆７千人、ＴＶ視聴率３８％。
そろって防衛に成功したが、それぞれ苦言を呈されている。要約すると「高いファイトマネーもらってるんだから、面白い試合を見せなければ」と、言う事になる。ちなみにファイトマネーの最高は５度目の防衛を果たした西城選手で、３，５００万円とあります。
”選手は恵まれすぎている”と大きな見出しの中で、「今の選手には個性がないからドラマが無い」「古くはピストン堀口、槍の笹崎。その後はカミソリパンチの海老原、ラッシュの原田、天才強打者青木、ハンマーパンチの藤猛。皆看板通りに試合を進めて行く。ファンはついて行きますよ」
「今のボクサーはレベルが世界の一流どころと接近してきたせいか、似た感じ。冒険しないところも共通事項、偶像に近い強烈なイメージを持つ世界王者がいない」（評論家・郡司信夫氏）
「ともかくファンあってのボクシングだと言うことを忘れてはならない。そこから出発すれば全てが解決する。一番悪いのは権利だけを主張し、義務をはたさない事だ」
１９５２年５月１９日白井義男選手の世界タイトル奪取を期待し、後楽園スタジアムには４万人の大観衆。試合開始が午後６時なのに正午から集まり始めた観衆は、白井選手の勝利に狂喜し共に涙を流した。試合内容はともかく、「白井、勝て」これだけの時代だった。報道する方も力が入った。（写真）
６５年５月１８日ファイティング原田選手が不敗、無敵の世界バンタム級王者エデル・ジョフレに挑んだ一戦は愛知県体育館に超満員１万２千人の観衆を集めた。フルラウンドを要した好ファイトは、原田選手が大殊勲の王座奪取。ＴＶ視聴率は６５％。人数換算では、１３００万人が見た事になるという。
７１年、この年Ｓ・フェザー級全日本新人王に輝いた岡部 進 （石川）選手の初１０回戦は、神戸ジムの日本ランカーメリケン・森選手が相手だった。ボディ・ビルで鍛えたたくましい体と、ガンガン前進し相手をなぎ倒す力のボクシングはファンに受けた。チケットは前売りと同時に、あっという間に売り切れた。
当時は全日本新人王になってもランキング入りが出来ない時代だったが、全勝のホープに胸を貸す日本ランカーもいた。この試合で森選手は敗れるが、後年日本タイトルをかけて再び対戦することになる。
笹崎協会長（写真）の「冒険がなければ、栄光はやってこない」いい言葉ですね。選手の個性と、マッチメーク両方に当てはまるでしょう。「協会内に好カード促進委員会でも作って、そこには業界代表だけでなく、ボクシングライターズ、ファンも集めて」と豊富を語られています。
世間が大きく変わり、豊になって行く時代の日本。”選手は恵まれすぎている”。現代から見るとほんとにそう思えます。(~~)「キックのようなスポーツに客を奪われるようじゃ、下地を作った先輩に申し訳ない」（キック・ファンの方申し訳ありません）今と同じような危機はとっくにあったのだ。
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