減収減益企業が業績回復に向けて今やるべきこととは?
今日は「減収減益企業が業績回復に向けて今やるべきこと」についてお伝えします。
これを全社挙げて行うことで業績回復はもちろん、人材力の強化につながる内容です。
内容をお伝えする前に、まずはフィットネス事業などを展開する主なフィットネス上場9社の'20年4~9月期(カーブスHDは3~8月期)決算概況をご説明します。
結論から言えば、コロナ禍の影響を受け、過去に類を見ないほどの厳しい決算となりました。
9社合計の売上高は939億円となり、前年同期の1,485億円から約37%減収。営業利益は約145億円の営業損失となり、全社とも「減収減益決算」となりました。
各社の売上高と営業利益は以下の通りです。
新型コロナの収束が見通せない状況のなか、フィットネスクラブをめぐる事業環境は依然として先行き不安定な状態が続くとみられます。
とくに、コロナ禍で一変した消費者の意識と行動を変えることは難しく、また、ソーシャルディスタンスによるキャパシティ制限は来年も続く見通しで、従来のような会員数拡大戦略による収益回復は当面難しいでしょう。
とはいえ、コロナ逆境を革新のチャンスととらえて業績を回復させることは可能です。
フィットネス各社は、コスト構造の抜本的見直しをすでに終えているでしょうから、課題はやはり売上高(営業収益)の拡大になるでしょう。
そこでカギとなる戦略の1つが、売上高を構成するもう1つの要素である「客単価アップ戦略に取り組む」ことです。ですが、コロナ禍ではそれよりも重要、と言いますか、より優先する戦略があります。
それは、「個店経営」の徹底です。
私が上場フィットネス各社の決算書を読んで感じたことは、「個店経営は出来ているだろうか?」ということです。
上場会社ほど難しい「個店経営」
個店経営とは文字通り、「1店舗ずつ経営する」ということです。
そのための必要条件として、店舗の動きを「数字で把握する」こと。また、絶対条件として、「店のキャッシュが底を突かない」ことです。
1社で数店舗を経営する企業にとっては当たり前のことなのですが、それ以上、とくに数十店舗から100店舗を超える企業の場合は、個店経営が非常に難しくなります。
分かりやすい例で言いますと、1社で数十店舗から100店舗を超えるフィットネスクラブを経営している企業の場合、全店舗黒字経営ということはまずありません。
普通はものすごく利益を上げている店もあれば、わずかな利益しか上げていない店、赤字寸前の店、なかには万年赤字で債務超過店(負債が資産よりも多い店)もあります。
ですが、物件オーナーとの契約期間がまだ残っている債務超過店の場合、多くの会社はよほどのことがない限り「撤退」や「事業譲渡(や業務移管)」を行いません(今後は違ってくるかもしれません)。
とくに上場企業の場合は、会社全体で「減収したくない」「会員数を減らしたくない」という考えを持つ経営者も少なくないため、仮に債務超過店があってとしても、全体の利益にさほど影響がなければ大抵はそのまま経営を続けます。
一方で、1社で数店舗経営の会社は、そのうちの1店舗が黒字経営から大幅赤字に転落。毎月数百万円、年間数千万円の現金がなくなっていくようなら、閉鎖や売却を含めてすぐにでも手を打とうと考えるでしょう。
つまり、上場会社のような規模の大きな会社ほど個店経営が難しくなるということです。
会社の命運を握っているもの
会社経営を続けるには、キャッシュ(現金)が不可欠です。
会社は赤字経営でもつぶれませんが、PL(損益計算書)上では黒字経営であったとしても、キャッシュが尽きれば簡単につぶれます。
会社の命運は従業員や顧客はもちろんなのですが、本質的には「キャッシュ」が握っているのです。
キャッシュが会社の命運を握っているということは、経営者は会員数や売上高(あるいは株価)よりも会社のキャッシュを最優先で管理する必要があると言うことです。
(個店経営の場合は、各店舗の店責任者が店のキャッシュを最優先で管理する必要があります)
実際、コロナ禍の影響で大幅減収となり、会社のキャッシュが一気に減ってしまった(あるいは尽きてしまった)経営者はそのことを否が応でも実感されたと思います。
一方で、キャッシュが潤沢にあれば一時的に赤字に陥ったとしても、すぐに従業員の給与削減をする必要もありませんし、入会者を増やすための広告投資もできます。
キャッシュが尽きて廃業する会社が増えれば競合が減るうえに、キャッシュが潤沢なら企業買収をすることもできますので、有利なポジションを築けるのは間違いありません。
店長はPLの上から、経営者はPLの下とBSを見る
経営者はBSを見ると言っても、会社のテレビでビーエス放送を見ると言うことではありませんよ(笑)
一般に、店長はPL(の一番上)の「売上高」から見て、経営者は一番下の「純利益」やBS(バランスシート/貸借対照表)の「現金預金」から見ると言われます。
会社が倒産するのはキャッシュが底を突いたときですから、経営者が純利益や現預金から見るのは当然と言えば当然です。私はむしろ、社長はBSを「作る」べきだと考えています。
つまり、あるべきBSから逆算した目標設定、戦略構築、実行計画などを立てる必要があると言うことです。
少なくとも、経営者がBSを理解できないようでは話になりません。BSを理解できない経営者というのは、ナビや地図を持たずに目的地に向かうドライバーのようなものです。
ドライブ自体を楽しむのであればそれでも構いませんが、経営となれば話は別です。
私は、フィットネスクラブのような資産の大きな業種では、店の店長も(PLは当然として)BSを理解する必要があると考えています。
なぜなら、PLが理解できなければ会員数や売上高にばかり目を向けることになりますし、勘定科目の理解なしに経費管理などできはしません。また、BSを理解できない店長に適切な設備投資の起案はできません。
コロナ禍で傷んだBS(やPL)の改善を図るには、まずは個店ごとのPLとBSを作る必要があります。次に、本社の幹部や店長にはPLやBSを含めた計数管理を課題として義務づけることです。
偉そうなことを言っていますが、私が20代後半に総合スーパーの衣料販売課長として働いていた時には、売上高と粗利額(率)が人事評価の対象で経費や営業利益については予算すらありませんでした。
その後、人事異動でフィットネスクラブと映画館を併設する店の責任者になった私の人事評価の数値は、「営業利益」に代わりました。
そのため、売上高や粗利額だけではなく、経費予算管理も行う必要がありましたし、月に2回程度、推定PLを自分で作成して本社に報告する義務がありました。
30代半ばにフィットネス事業の責任者になった時には、店舗の撤退や事業移管、新店開発なども担当するようになったため、(当然ですが)BSの知識も必要になりました。
その過程で身に染みてわかったことは、財務諸表(決算書)の数字に関する知識なしには正しい経営判断はできない、ということです。特に経営の舵取りが難しい今の時代はなおさらです。
コミュニケーションには数字を多く用いる
会社全体と個店のPLとBSを複数年分読めば、その会社の経営状況はほぼ正確につかむことができます。
もちろん財務諸表は「過去」の経営結果であり、「未来」を映し出しているものではありません。
したがって、未来を見通す(あるいは計画を立てる)には、過去の財務諸表を読むだけでは不十分であることを私も理解しています。
ですが、医者が処方箋を出す前に問診や診断をするように、会社の戦略を立てる際には、経営者や(財務・経理担当者だけではなく)全幹部が自社や自店の財務諸表を予め理解しておく必要があるでしょう。
思い出してください。会社が倒産するのは、どんなときでしたか?
PL上で赤字になったとき? ではありませんよね。
収支が赤字でもキャッシュがあれば会社はつぶれません。
会社にキャッシュがどれだけあるかどうかは、PLではわかりません。BS(や小さな会社は通帳)を見る必要があります。
つまり、PLだけではなく、BSを理解できる経営者や幹部がいる会社とそうでない会社は、(とくにコロナ禍では)見える景色が180度違ってくるということです。
これは幹部の危機意識に対する認識の違いにもなってきます。
また、PLとBSを理解しておかないと、取るべき戦略や日々の行動でさえもズレたことをやってしまう、あるいは手遅れになってしまうこともあります。
その逆に、財務諸表を始め経営・運営に関するさまざまな数字を理解し始めると、計画の精度や当事者意識が高まります。また、数字は印象などと違い、誰もが同じように理解することができます。
例えば、「入会者が先月よりも増えました」だけだと何名増えたかわかりませんが、「入会者が先月よりも5名増えました」なら誰が見ても(聞いても)同じように理解できます。
経営者はもちろんですが、社員の「数字力」が高まると改善意識や論理思考が高まる上に、コミュニケーション上の誤解や認識違いも減りますから良いことばかりです。
あなたの会社の幹部や社員の方は、コミュニケーションに数字を多く用いていますか?
本日も最後までお読み頂きありがとうございます。
それでは次号をお楽しみに!
追伸
冒頭、主なフィットネス上場9社の決算数値について述べましたが、次の2つの表現(数字の有無)の違いを感じてみてください。
A:9社合計の売上高は前年同期よりも減収。営業利益も営業損失(赤字)となり、全社とも「減収減益決算」となりました。
B:9社合計の売上高は939億円となり、前年同期の1,485億円から約37%減収。営業利益は約145億円の営業損失となり、全社とも「減収減益決算」となりました。
追追伸
数字は重要です。ですが、それ以上に重要なのは、顧客や見込み客の感情に焦点を当てた思考と行動が取れるかどうか。このことについては後日詳しくご説明します。


