BRM703北海道600km宗谷岬 18時間48分完走 | 桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

北海道のサイクリング好きのブログ。

7月3日から4日にかけて開催されたオダックスジャパン北海道の宗谷岬600に参加し、18時間48分で完走した。

ゴールオープン時刻での完走なので、これ以上時間短縮することは出来ない。

PCも全てオープン時刻ちょうどでのチェックとなり、これ以上時間短縮としてやることは一切無い形になった。

 

【ライド方針】

今回の宗谷岬600はAndeanを使ってTTとして走った。

本来自分は景色のいい場所を適度に休んでアイスなどを食べながら走るのが好きなのだが、ファストライドも好きだ。

その日その日で自分が最大限に楽しめる走り方、充実感を得られる走り方をすると、ファストライドになることも多い。

ブルベに出た時も時期が経つと「あそこでバテなければ」だとか「あそこで中途半端なことをしなければ」だとか、ファストライド的な方向であれこれやりたい事や後悔が出てきてしまう事があり、そうなると「次こそは」という気持ちが際限なく沸いてきてしまい抜け出せなくなる。

それに縛られるのが嫌なので、フレッシュな気持ちをもってブルベを楽しむためにも、納得いく形で、可能ならゴールオープン時刻に完走してしまって自分の中の気持ちにケリを付けたかったのだ。

 

宗谷岬600のコースは年によってバージョンが変わってきているが、今年のコースはスタートからPC1鬼鹿(78.1km)、PC2天塩(165.4km)、PC3稚内(235.3km)とめぐり、PC4は一気に230km程飛んで名寄(464.3km)となる。その間宗谷岬と豊富温泉が通過チェックとなっているが、PCではないので通過時刻の制限がない。PC4からPC5の沼田(577.8km)は距離にして110km程で、PC5からゴール(605.1km)までは27km程の短い区間となる。

コースの総距離は605.1kmだ。

 

TTをする上で気になるオープン時刻はスタートからPC1、PC2まではグロス34km/h程、PC2からPC3は33km/h程での到達時刻で設定されているが、PC3からPC4は31km/h強、PC4からPC5は30km/h弱での設定となる。

今年自分がAndeanで遠征している時のペースは平坦基調の無風で30km/h台後半ほどだ。向かい風の中でブルベのオープン待ちペースを刻む事が出来るように備えてきた。

これを前提とすると、PC3までの区間も休憩し過ぎなければ十分にオープン時刻で到着可能だ。それ以降は想定ペースが下がるので、天候が悪くなければPC5でのオープン待ちは恐らく行ける。

問題はPC5からゴールまでの27.3kmだ。

区間距離が短いところに605.1kmの5.1kmの部分が影響したのだと思うが、37km/h強の設定となっている。

夜間であまり信号につかまらないとしても、向かい風になった場合はかなりハードだ。

通常のロングライドでは1時間以内のTT能力が直接効いてくる事は少ないと思うが、このコースでゴールオープン待ちをするには、PC5までのペース配分と体調管理で踏める脚を残した上で、最後の27kmは空力と出力で実際に速度を出す、まさにTTとして突破しなければならないのだ。

 

当日の風向きは次のような感じだった。

前々日くらいからの予報もほぼこういう感じだったので、当日は

 

・スタート~PC3は踏み過ぎない。風があまりにも強い場合はペースが落ちる事も已む無し。後半で取り返せる。

・PC3~PC4は約230kmの全体でグロス31km/h強が出ればいいから宗谷岬までの向かい風は気にしない。休憩や買い物もしっかりして最終区間に向けて脚を残す。

・PC4~PC5ははじめの登り以外は下り基調。力を使わず最終区間に向けて脚を残す。

・最終区間は向かい風が予想されるが、残った脚を全て使い切って最大出力で走る。

 

という形で臨むことにした。

 

機材はAndeanに加え、GRAPHENlubeやBIORACERのエアロワンピース、Nopinzのエアロアームウォーマー、CastelliのFast Feet TT Shoecoverなどフル投入し高岡周回で本気のタイム測定をする時とほぼ同じ内容で行った。

違ったのはライトや反射ベストくらいだった。

 

【走行記】

・スタート~PC1(区間78.1km)

自分は8時出走のグループだったが、受付後少し早めの7時55分頃のスタートとなった。

江部乙から道道275号線に入り、碧水を左折して留萌方面に。風向きは向かい風が多かったが、Andeanに空力装備フル投入でエアロバーを握っている状態なので、35km/h以上出ていることも多かったと思う。

天気は良好。同じ宗谷岬600参加者の皆さんと沢山お会いした。

出力は180W台を基本とした。今年自分がロングで出している出力がログ全体の平均で大体170W台後半だったので、それを意識してのことだ。

調子に乗って少し踏むと平坦でも240W程出てしまうので、そういう数値が出たらすぐに修正した。

PC1からPC2の区間でエネルギー不足に陥らない様に早めに炭水化物を入れておきたかったので、留萌通過の時に大福を1つ食べた。

留萌から鬼鹿までは斜め前からの風だった。

PC1にはオープン20分ほど前に到着。オープン前にMONSTERを飲みながら梅おにぎりと豆パンを食べ、オープン時刻には水だけを買ってレシートを受け取って出発した。

冒頭の画像のレシートでPCでの買い物が全て水になっているのはそういう理由からだ。

出発は10時20分頃。

 

・PC1~PC2(区間87.3km)

この区間は苫前~初山別の40km以上のアップダウン区間を含む、このコースで最もボリュームのある区間だ。加えてこの日は斜め向かい風。

ロングを走る時にアップダウンで気を付けているのは、集中を欠いて変速が雑になり、脚に不要なトルクをかけてしまうことだ。

この日もこまめな変速を心掛けながら進んだ。加えて、平坦ではエアロバーを握りっぱなしになるので、体の負荷を分散させるためにも踏まないダンシングを登りで意識的に使って行った。

登り切りでは出力を緩めず、少しトルクをかけて下りの最大速度まで短時間で上げて、平坦と登り始めでその速度を活かす。

これがうまく行ってか、この日はアップダウン区間全体での平均時速が35km/hだった。思っていたより消耗も少なかった。

下りで速度が乗るので路面の舗装状況に気を付けて走ったが、普段自分が走っている道南に比べるときれいだった。

アップダウンが終わり遠別に入る辺りからは向かい風が少し強くなったが、一定ペースで回した。

PC2ではPC1と同様にオープン前にZONeを飲みながら梅おにぎりとアンパンを食べ、オープン時刻の12時51分に水を購入しすぐ出発。

 

・PC2~PC3(区間69.9km)

この区間はひたすらサロベツ原野を走る。何度も走っているのである程度勝手は解っている。

橋を渡って稚咲内まで20km、こうほねの家まで40km、ノシャップ岬方面への分岐まで55km程だ。

この日は稚咲内過ぎまでは斜めの、それ以降は真正面からの強い向かい風が吹いていてあまり速度が乗らなかった。

午後の1番気温が上がる時間帯でもあったので、喉が渇いた。

天気が良かったのでこのコースのシンボルの1つでもある利尻富士がきれいに見えた。とはいえ、利尻富士は殆ど見ず風の中でペダリングを維持することに集中しながら走る形となった。稚咲内をこえて北東へ向かう区間ではアップダウンもあったが、淡々と作業としてこなした。

PC3でもそれまでと同様先にMONSTERを飲みながら梅おにぎりと豆パンを食べオープン時刻には水のみ購入した。

ただ、それまでと比べて到着からオープンまでの時間の余裕が少なく、ゆっくり目に過ごしたという事もあって出発したのはオープン時刻の14時59分から9分後の15時8分だった。店長さんが最近この辺りで熊が出たんだ、という情報を教えてくれた。

ここからPC4までは距離があるので途中どこかで休憩や買い物をするつもりでいたが、なるべく走行中に補給できる様にゼリー飲料を3つバックポケットに入れた。

お尻に痛みが出てペダリングが乱れるのを防ぐためにロキソニン2錠を摂った。

 

・PC3~宗谷岬(区間34.4km)

ここは完全に横風と向かい風であまり速度が出なかった。PC3出発の時点で9分押していたこともあって、距離とグロスの速度を計算した中で、時間的な余裕はそれほど大きくはないと感じながらスタートした。

それでもやることは変わらず、エアロバーを握って淡々と回すのみ。

何度も走って距離感が解っているので精神的には楽だった。国道40号線から宗谷岬方面に分岐してから12~13km程でペンション亜留芽利亜、それから5km弱でセイコーマート富磯店、それから10km強で宗谷岬だ。

宗谷岬周辺は霧がかかっていた。クイズチェックをクリアして引き返す。16時10分出発。

 

・宗谷岬~豊富温泉(区間68.2km)

宗谷岬から国道40号線までは追い風で平均40km/hを超えて巡航することができた。

ちょうど国道40号線に入る辺りで走行距離が300km程になるのだが、この日は前半300kmがリアルスタートまでの移動で、40号線に入ってからの300kmがリアルスタートだ、というイメージでいた。

自分の場合、600kmを一気に走るイメージよりも2つに分けて考えることで体感時間が短くなり距離を感じにくくなる。

国道40号線の豊富町までの区間は初走行となった。Youtube等で見た感じでは路肩が狭く交通量も多くて危険なのかと思っていたが、全くそんなことはなかった。

大きめの緩やかなアップダウンが少しあったが、豊富町に近づくとほぼフラットだった。

この区間は斜め追い風でオロロンラインと比較すると速度は乗りやすかった。

豊富市街地から豊富温泉までは向かい風で淡々と進んだ。

途中疲労を感じかけたが、この区間でゼリーを等間隔で3個とも飲んだら問題なくなった。クイズチェックをクリアして17時58分出発。

 

・豊富温泉~幌延(区間10.7km)

PC3とPC4のちょうど中間にあたる幌延のセイコーマートで買い出しすることにして停止した。

この区間は追い風で登りも走りやすかった。走るのは数年ぶりだったが、緩いアップダウンで個人サイクリングで来ると気持ちのいい場所だ。

Red Bullを飲みながら梅おにぎりとプリンを食べ、ゼリー3個を携帯した。痛み予防のロキソニン2回目投入。

18時30分頃出発。

 

・幌延~PC4名寄(区間115.7km)

この区間は風向き的には斜め追い風と横風でオロロンラインと比較すると走りやすかった。

幌延から雄信内の辺りを夕暮れ時に通ったが、のどかな雰囲気だった。

国道40号線は交通量が多くて路面が荒れているかと思っていたが、舗装状況は良い感じだった。

音威子府に入る手前のエリアは思いのほかトンネルや覆道が多く、山を縫う谷の様な地形のせいかフロントライトに反応してか虫が雨のように大量にぶつかってきた。Aeroheadのバイザーが全て防いでくれたので問題なかったが、通常のアイウェアでは走行が困難だったかもしれない。

暗くなる前に音威子府辺りまで行けるとの想定とほぼ同じ形で、ちょうど日が沈んで山の輪郭が消えかかっている辺りで音威子府を通過した。

ゼリーは音威子府、美深手前、智恵文で1個ずつ投入した。

この辺りの区間では、停車して食事をした後60km程走り、そのあと20km置きにゼリーを1個食べていたが、スタミナ切れにならずいい感じだった。

名寄ではPCオープンの22時16分まで25分近く待つことになった。稚内~宗谷岬の向かい風の分をそれ以降で挽回して速度が上がった形だ。

これまで全てのコンビニでエナジードリンクを飲んでいて少し控えようと思っていたが、眠気の予兆の様なものを感じたのでここでもMONSTERを投入した。食事は梅おにぎりとどら焼きだった。ゼリー飲料は3つ携帯。最後のロキソニンを投入。

名寄でオープン待ちが出来たというのは当初のイメージが実現しているという事なので安心した。

2017年の宗谷岬600は名寄で体調を崩して大ブレーキとなったが、この日は特に問題なかった。

22時17分頃出発。

 

・PC4~PC5沼田

この区間は最初の20km弱で名寄市街地から名母トンネルまで登る。走り屋風の車が何台か走っていた。夜間のこの地域はさすがに交通量も少なくて走りやすいのだろう。

名母トンネルからは下りっぱなしだろう、というイメージだったのだが、母子里から朱鞠内の手前まで緩いアップダウンであまり速度が乗らなかった。

この辺りは昼間は自然に囲まれていい雰囲気なのだが、山中で熊も心配で薄気味悪い雰囲気だった。朱鞠内の集落に降りた時は安心した。

朱鞠内からは緩い下り基調で40km/h前後で移動できた。朱鞠内、添牛内、政和、幌加内とゼリーを飲みながらスムーズに進んだ。ゼリーを飲む時は毎回しっかり停車してサドルから降り、体をほぐした。

この辺りは昼間は蕎麦畑等もあって季節によって魅力的な場所なのだが、夜間走行では本当に特筆すべきことが全く無かった。

交通量もほぼゼロで、名母トンネル周辺から幌加内市街地手前まで、追い抜かれた車は1台だけだった。

鷹泊から多度志の間の高橋峠は昔は力任せに踏んで脚を消耗していたが、今回は勾配など解った上でペース走をしたので負担は感じなかった。

沼田に着いたのは午前1時46分頃で、オープン時刻が2時4分なので20分弱待機した。

この時間はまだPCのセイコーマートが開いていないので店舗と自転車の写真を撮ってオープン時刻にスタッフの方に送信して出発する形だった。

名寄で買っておいたラムネを一気食いして2時4分出発。

 

・PC5~ゴール

この区間が宗谷岬600最大の勝負どころだ。

出発時、沼田市街地では南風が強く吹いていて、旗などが真横にバタバタなびいていた。

これから江部乙に向け南下する自分にとってはハードな状況だ。

ゴールのオープン時刻の2時48分に間に合わせるには44分で27.3kmの区間を走り切って買い物を済ませレシートをもらう必要がある。

前述の通りグロスの区間平均37km/h程必要で、実走行ペースはそれ以上になる。

これは厳しいか…ここからは無理せず行っても18時間台は目指せる…という考えも頭をよぎったが、ここでトライせずに逃亡したのでは間違いなく一生後悔が残る。そう思い、自分の体の限界まで速度を出してみるべくエアロポジションを取ってスタートした。

踏み始め、330W前後で踏んで出る速度が41km/h程だった。無風の時と比べるとかなり遅いがこれをキープできれば余裕をもって間に合う。

この出力は万全の状態でTTをしている時に平坦で出す値に近い。当然600の最終区間でそれが延々ともつはずはないのだが、そんな事は無視して踏んだ。自分のコンディションとは関係なく速度は出さなくてはならない。

トルクがキツくなって脚が動かなくなったらギアを1枚下げてケイデンスを上げる。勾配が変化したら即座にギアを変える。

とにかく速度をキープすることを目指した。

速度が乗りにくい緩い登りでももがきながら35km/h程は保つ。

 

アタック開始から7kmの碧水の交差点の信号は青だった。まだ脚は大丈夫だ。

10km、サンフラワー北竜、少し吐き気がしてきたけれどもう3分の1は終わった。

15km、区間最大の登り。苦しいがそれを無視すればまだ行ける。もう半分は終わった。

20km、田園の里うりゅう。あと1km程で江部乙に向けての左折だ。左折しさえすれば風は真向いからではなく横風になる。

21km、東に向かい左折。やっとここまで来た。速度が少し乗りやすい。あとは6km程。

この辺りでゴールオープン時刻の2時48分に間に合う事がほぼ確定的になった。

ただ、深夜の時間帯、コンビニの店員さんがバックヤードで作業しているかも知れない。呼んでもすぐに出てこないかも知れない。

それで自分のトライが失敗してしまうのは悔し過ぎるので時間のマージンを作るために90%位のイメージでペースを保った。

後でパワーカーブを見るとこの区間では40分282Wという数値が出ていた。

 

ゴールのローソン滝川江部乙店に到着したのは2時45分前半だったが、想定していた通り、店員さんがレジにいない。

呼んでもなかなか出てこない。

出てきてくれたのが2時47分。この時点で自分のトライの成功が確定的なものとなった。

 

2時48分、ガムを買ってレシートを受け取り、ブルベカードと一緒に袋にしまった。絶対に失くすわけにはいかない、命の次に大切なレシートを手に入れる事が出来た。

 

 

2018年の夏以降、自転車のトレーニングを全くしない時期が続いたが、2020年から自転車を再開した。

自転車に乗っていても乗っていなくても、宗谷岬600で納得のいく走りがしたいというのは自分がずっと抱いてきた思いだった。

今年実走を始めてからはAndeanを使って宗谷岬を走り切るべく、ロングでの予行演習と20分台のTTに取り組んできた。

それら全てが嚙み合ったと思う。

長距離で速度を保てなければ最終PCをオープン時刻に出発できていないし、TTで出力と速度が出せなければこのコースの最終区間を突破することは出来なかった。

これ以上ない結果での完走の後には色々な感情が出てくるかと思って走ったが、ゴールした瞬間は言葉にならなかった。アドレナリンが出ていたせいなのか、自分の中で言語化できなかったのか。

とにかく、一切思い残すところ無く、自分の宗谷岬600は終わった。

 

今年前半のメインイベントがこれで終わった形になるが、まだ7月だ。シーズンはこれからも続く。

ここ最近はコンディション作りのために負荷をかけるのを避けやりたいことを我慢したりもしてきたが、今の自分を出し尽くす事が出来たのだから、これからはまた行きたい場所に行って美味しいものを食べ、自転車を楽しんでいこうと思う。

 

いつもと違う状況の中で宗谷岬を開催してくださったスタッフの皆さんに感謝致します。

あまりお話しできなかった他の参加者の皆さんともまた別の場面でご一緒出来たら嬉しいです。