トレーニングまとめ | 桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

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北海道のサイクリング好きのブログ。

北海道に住んでいてロードしか乗っていない自分は冬場全く実走することが出来ない。
そこで今までに3シーズン冬トレとして固定ローラーを回してきたのだが、その経験と阿部良之コーチからの指導をもとに、今までに解ってきたことをまとめてみる。
イメージ 1
阿部良之

目的は一貫して出力のベースアップ。
トレーニング履歴はほかの日記で触れてきた部分だが、簡単に触れておく。

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【トレーニング履歴と結果】
~2013~2014シーズン~
・60分全力走
・3日回して1日休む
 →FTPが286Wに。VO2maxパワーは400W程度。
この年は完全に自己流でやった。最初は250W台でもそれなりに疲れていたが、270W台は毎回出せる程度にはなった。
毎回25分の時点辺りで脚に疲れを感じていたが、それから長くもつようになった。実走では300km走ってからラスト100kmで強度を維持する場合など、非常にキツいけれども脚自体はもってしまう、という状態になった。
加えて、次のシーズン以降のトレーニングの土台にもなったかもしれない。

~2014~2015シーズン~
・阿部良之コーチによる指導開始
・FTPをまたぐビルドアップの反復
・FTPを維持した中でのダッシュ
 →FTPが320Wに。20分345W。VO2maxパワーは変わらず。
この年から阿部良之コーチに指導頂くようになった。
自己流の場合、1セット60分と長いが自分の扱える強度以上は出せないので、新たな出力域にステップアップしていく形になっていなかったために286W以上上がらなかったのだと思う。コーチのメニューでは新たな出力域に対応できる時間を少しずつ増やしていくことが出来たので、体が適応していった。
VO2maxパワーは計測していないものの、恐らくあまり変わっていないと思う。

~2015~2016シーズン~
・阿部良之コーチによる指導継続
・FTPをまたぐビルドアップの反復
・FTPを維持した中でのダッシュ
 →FTPが345Wに。20分363W。VO2maxパワーは変わらず。
この年も継続して指導頂いた。
前シーズンから引き続きベースアップを目標としたが、各セットのきつさが変わった。自分の状況に応じ、ちょうど限界を引き出してもらえる内容で、そこに適応していく中で2月末に目標値を達成。
2015年シーズン末に重いギアを使っていたこともプラスに作用したと思われる。


3シーズン通してのロングライド能力の変化は下の記事のとおり。
2016年には長距離で平均30km/hを超えるのが珍しくなくなった。



【基本的な考え方】
①トレーニングは環境への適応
トレーニングは生物が持っている環境への適応力を利用するもの。出力を上げたいにしてもダッシュ力を付けたいにしても反復回数を増やしたいにしても、そういう状況を作り出してそれに体を慣れさせていけばいい。
ただし、環境の変化が急激すぎると適応力の範囲を超えてしまうため、人間以外の生物なら死んでしまうし、人間でもそれ以上続けられなくなってしまう。
問題は、自分の限界と上手く向き合い、それを超えていくような丁度よい負荷をどのように設定するか。この部分は履歴にも表れているように自己流でやるのとプロに指導してもらうのとでは全然違う。

②キツければいいというものではない
体感としてキツかったとしても、「新たな環境への適応」というプロセスが入っていなければ無意味。
例えば自己流トレで60分耐久走ばかりをやっていた時は「270W~280Wを60分間維持する」という能力は得られたが、300Wにチャレンジすることにはならなかったので、300Wを使いこなせるようにはならなかった。かなりキツかったにもかかわらず。
2シーズン3シーズンと同じことを繰り返していけば300Wに達したかもしれないが、それならある程度まで行った段階で短時間でもいいから300Wを取り入れ、それに対する適応のプロセスを開始した方が短時間で対応できる。
ダッシュにしてもインターバルにしても同様だと思う。

③脚が終わった状態でのトレーニングは厳禁
脚が終わるというのは、体感としてキツいという段階を超えて、出力の維持が難しくなっている段階。こうなってからのトレーニングは厳禁。コーチに何度か言われている。
理由は恐らく、狙った負荷が得られないので「新たな環境への適応」のプロセスが得られずトレーニングの効果が無い上に、体に対するダメージだけは深刻であるため。
肉体的に効果が無いトレーニングでダメージを受けて翌日以降の負荷が下がるのは愚の骨頂。

④最後までできなくてもキャパは上がっている
コーチのメニューでトレーニングを開始すると、最初は半分の内容もこなせない。そういう時に一喜一憂する必要は全くない。下手に落ち込んで自分の可能性を疑ったりすると、その後のトレーニングで追い込むための精神力が出なくなるかもしれない。
仮にこなせなかったとしても少しずつ適応してキャパは上がっているので、「きっと何週間かでこなせるようになっちゃうんだろう」と考えて淡々とベストを尽くすのが良い。実際自分も半分こなせなかったメニューをそれほど長い時間はかけずにこなせるようになってきている。

⑤休んだ日もやったものとして次の日以降続ける
スケジュール的にトレーニングできなかった日も、出来たものとして次の日以降は決まったメニューを続ける。
出来なかったから明日…等と考えていると全体のスケジュールが狂っていく。

⑥環境に応じて出来る方法を選択する
これは自分が感じたことだが、トレーニング内容が間違った方向に行かないように、その時の自分の環境や情報量に応じてやる内容を選択する必要がある。
自転車の走力をアップさせるには色々な能力が必要だと思う。
・筋力
・心肺能力
・ペダリング技術
・使うべき筋肉のコントロール
・ポジションの最適化
・空力と出力の両立
・集団走行の技術
・脚に依存しない出力の出し方

こういった色々な要素のうちその時の自分の状況に応じ、方向性を間違えずに鍛えていきやすい部分は何かを考えていく必要がある。
自分の場合、冬場コーチと毎日トレーニング結果をやり取りして結果について指導を頂くことは出来るが、実際にお会いしてペダリングを確認してもらったり、体を触ってもらって筋肉が動員されているかを確認してもらったりは出来る状況にない。
この状況で技術面やコントロール面のトレーニングをやったとしても自己流になってしまい、投入した時間に対してリターンが十分に得られない可能性がある。それを考え、自分は冬トレはフィジカル面を中心に取り組むようにしている。

自分と違って、専門家に頻繁に会い体の動作をチェックしてもらうことが出来る環境の人なら、技術面やコントロール面のトレーニングもできると思うし、実走出来る環境の人ならそもそも「冬トレ」という概念自体が希薄になるかもしれない。



【トレーニング内容について】
①短時間単発から長時間複数回へ
既に触れたが、実際に出力を上げていくにも「新たな環境への適応」が必要になるので、狙った負荷を最初は短時間でもいいから入れてみる。
その時間を徐々に増やし、目標とする時間できるようになったら今度は2セット目に挑んでみる。その中で自分でも信じられないような時間や回数、負荷を維持できるようになる。
例えばFTP280Wの人が300Wを使いこなしたい場合、
悪い例:長時間の全力走をひたすら繰り返す
良い例:260W3分→300W2分→320W1分を3セット
というような感じで、とにかく300Wを使ってみるのが良い。
「やればいつか出来るようになるけれども、やらなければ一生出来ない。」というコーチの言葉が印象に残っている。

②完全レストは入れない
これはあくまでもベースアップに関してだが、高出力と高出力の間も、ある程度の強度は維持し、その中で脚を回復させる術を追求するのが良い。
上記のように300Wを使いこなそうという目標を持った場合、「良い例」の260Wの部分を200Wにしてしまうと、完全に脚が休まった状態からの1分間ダッシュになってしまうので、「新たな環境への適応」にはならない。
260Wをキープして300Wと320Wの負荷を吸収することで、新たな出力域に適応していくことが出来る。
集団から抜け出す能力や足を休めた状態からのスプリントを鍛えたいのならコーチからの指導内容も全く別のものになるかもしれない。

③筋トレはすべき
筋力があった方が出力は出るので、筋トレはした方が良い。筋量が少ない人は筋量アップ、筋量がある人は動員率を増やす神経系のトレーニングになるだろう。
筋トレをしている自転車乗りというと力んでペダリングしているようなイメージの人もいるかもしれないが、自分の考えとしては全く逆で、筋力が高まることで同じ状況、同じ負荷においてゆとりを持って動作することが出来るので、フォームが崩れにくくなる。扱えるギアも重くなるので、ケイデンスを上げなくても出力を維持することができ、巡行が楽になる。
コーチに筋量が増えて体重が増えた場合どう考えればよいかと聞いたとき、「体重が1kg増えても心肺への負担やPWRはあまり変わらないが、筋量1kg増えたなら出力は大幅に増える。」という言葉が印象に残っている。



【その他】
①FTPは上がりやすい
やってみて解ったことだが、FTPは非常に上がりやすい。対してVO2maxは世の中で言われているように、ある年齢以降はあまり上がらないようだ。
自分の場合、FTPが286Wから345Wに上がった一方で、VO2maxパワーは恐らく(計測していないものの)400W程度のままだ。
VO2maxパワーに対するFTPの割合が71.5%から86.3%になっているので、FTPもそのうち頭打ちになるのかもしれない。

②パワトレでも技術は上がる
パワートレーニングばかりやると技術が下がる、バランスが悪くなるという言葉を見ることもたまにあるが、自分としては逆にパワートレーニングによって向上する技術もあると思う。
自分の場合出力の測り方は固定ローラー付属装置による速度からの換算なのでそれを前提とすると、未知の出力(速度)を維持するには、一踏み一踏みの角度や体の角度、ハンドルを握る位置、それらをどう使い分けて筋力を残すか、呼吸法、上半身の動員の仕方、空力をよくするためにこれらをいかに低い姿勢で行うか…無数の工夫を積み重ねる。その中で新しい発見がいくつもあるので、パワートレーニングをする前よりも脚を残す引き出しは増えたように感じている。
仮に自分のような速度換算ではなくトルクと回転数から計算する一般的な方法の場合、トルクだけがかかって実走では速度が出ない方法などもあるのかもしれないが、そこは自分は解らない。

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恐らく何度も加筆を繰り返すと思うが、パワートレーニングで学んできたことはこういう感じだ。

トレーニング内容については人によって違うので一般化できないですが、もしもベースアップのために内容を聞かせてくれ、という人はご連絡頂ければお伝えします。