今日(2日)も午前中からハチ北高原スキー場のモーグルコースで、ダイナミック・ポジショニング・ターンの完成に向けて練習をしました。晴天に恵まれ、新雪に覆われた土曜のゲレンデは大勢のスキーヤー・スノーボーダーでにぎわい、リフト待ちの列も長く延びました。
以前、アベノETCなどでトランポリンを練習していたときの仲間とも久しぶりに会いました。そのうちの一人が、スピードアップするためにこぶのどの部分を滑ればいいのかという悩みを抱えていて、話題になったのが「ライン取り」です。
以前は、こぶの合わせ目の部分を滑る「出口狙い」とか、こぶの手前の受けの部分(バンク)でカービングするとか、こぶの中のどこを滑ってどのようなターン弧を描けば、コントロールとスピードを両立させられるかと考えたものですが、結論から言うと、現在のモーグル競技には「ライン取り」は存在しません。現在のモーグルの採点基準では、スキーヤーの足は常に体の下にないといけないことになっています。スキーヤーの体はスタートからゴールまでフォールライン上になければならないので、足もフォールライン上になければならないわけです。
採点基準を定めたFIS(国際スキー連盟)のジャッジングハンドブック(2018年10月版)から該当箇所を抜粋します。(SAJのデータバンクに日本語訳がアップされていますが、誤訳が散見されます)
まず、スキーヤーの体がフォールライン上にないといけないと言っている部分。
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6204.1.1 Fall Line
Skiing in the fall line is considered the shortest way from the Start to the Finish.
To avoid deductions for fall line deviations, the competitor must stay in the selected fall line out of the start gate. Competitors will receive score deductions for fall line deviations as noted in JH 6204.2 including drifting in Air maneuvers.
Landing on the center of the mogul is a deviation from the fall line.
6204.1.1 フォールライン
フォールラインをスキーで滑ることは、スタートからフィニッシュまでの最短路と考えられる。フォールラインを外すことによる減点を避けるために、競技者はスタートゲートを出た後、選択したフォールライン上にいなければならない。JH 6204.2に記されているように、エア演技のドリフト(横飛び)を含めフォールラインを外すことによって競技者は点数を引かれることになる。こぶの中央に着地するとフォールラインを外したことになる。
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次にスキーヤーの足が体の下にないといけないと言っている部分。
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6204.1.2.2 Body Position for Carved Turns
・ A properly carved ski requires less effort to work, and gives higher levels of control and stability.
適切にカービングしているスキーはより少ない労力を要し、より高いレベルのコントロールと安定性をもたらす。
・ The turn is initiated with pressure as the knees and ankles/feet roll the skis onto edge and extension begins.
ターンは両膝と両足首・両足が両スキーを傾けてエッジを立て、伸展が始まるときの圧力とともに始動される。
・ At the middle of the turn (when the ski is edged and the tip is pointing down the fall-line) the ski tips contact the face of the mogul.
ターンの中間(スキーがエッジングされ、先端が下のフォールラインを指しているとき)では、両スキーの先端はこぶの面(つら)に接している。
・ Absorption is used to maintain balance and control pressure in the skis and should match the shape and size of mogul to optimize snow to ski contact.
吸収動作はバランスを保ち、両スキーにかかる圧力をコントロールするために使われ、スキーの接雪を最適化するためにこぶの形と大きさに合わせなければならない。
・ Rotations in the upper legs are minimal, feet remain under the body
(shoulders and hips) in both fore-and-aft and lateral planes, and knees
remain flexed.
両脚大腿部に生じる回転は最小限で、両足は前後・左右の平面ともに体(両肩と両腰)の下にあり、両膝は軟らかくしておくこと。
・ Legs should be together or in a consistent position throughout the run.
両脚はそろっているか、滑走を通じて一定の位置にあること。
・ Breaks in balance and separations in position are inefficient turns.
バランスを崩し、ポジションを乱すのは非効率的なターンである。
・ Angulation of the lower leg controls the radius of the turn. Timing of the initiation dictates how deep the feet go into the rut.
下腿に角度を付けること(アンギュレーション)はターンの半径をコントロールする。(ターンの)始動のタイミングはいかに深く両足を溝に入れるかを決める。
・ Movements should be symmetrical and equal side to side,specifically:
動きは対称で、両側が等しくなければならない。特に以下の点。
・ Timing and placement of pole plants (double pole plant is a deduction)
ポール(ストック)を突くタイミングと場所(ダブルストックは減点)
・ Arm movements (little movement is preferred but if there is movement it should be equal)
腕の動き(小さい動きが好ましいが、動きがあるのなら等しいこと)
・ Shape of turns: do the turns adjust to the gradient of the slope and the size and disposition of the moguls
ターンの形:ターンを斜度とこぶの大きさ、並びに合わせる
・ Position of the feet in relation to the body (do the feet move further outside the body’s midpoint on one turn)
体に対する両足の位置(一つのターンで両足を体の中心点から遠く外側に出している)
・ Specifically movements should be symmetrical and equal side to side.
・ Timing and placement of pole plants is a significant factor (double pole plant is a deduction)
※上の2項目は重複しているので、削りミスかと思います
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以上、ジャッジが見るべきポイントとして挙げられているのですが、その中の<両脚大腿部に生じる回転は最小限で、両足は前後・左右の平面ともに体(両肩と両腰)の下にあり、>が足が体の真下にないといけないと言っているところです。太ももがワイパーのように左右に動いてはだめで、横から見ても、前から見ても、足は体(両肩・両腰の四角形)の下にないといけないということです。
このことを最後の項目でも<一つのターンで両足を体の中心点から遠く外側に出している>と繰り返しています。足が体の外側に飛び出すターンは評価が低くなるということです。
この規定がいつできたかということですが、手元に残している過去のジャッジングハンドブックを調べてみたところ、2010年12月版にはなく、2012年11月版には書かれています。つまり、バンクーバー五輪より後で、ソチ五輪より前ということです。
このときの改正では同時に次のようなただし書きが加わりました。
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However, in some cases, a degree of steering or skidding during initiation is
unavoidable, but the key is to minimize snow resistance from skidding during the
remainder of the turn.
しかしながら、場合によっては、ターンの始めに、ある程度スキーを振ったり横滑りしたりすることはやむをえないが、肝心なのは残りのターンで横滑りによる雪面抵抗を最小限にすることである。
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この2点の改正点を合わせると、ブーツを常にフォールライン上に置いて、ターンの前半ではスキーを振ったり、ずらしたりしてもかまわないが、ターンの後半ではカービングしてずれを最小限にせよ、ということになります。
ソチ五輪で、第1エアの着地後、大きく乱れたハナ・カーニー選手が銅メダルで、第2エアの着地でわずかに乱れただけの上村愛子選手が4位になって、なぜなのかと多くの人が疑問を抱きました。上村選手は第1エアの直後のターンで足がフォールラインから少し外れました。あくまでカービングにこだわった上村選手のターンよりも、少々ずれてもフォールライン上を滑り続けることにこだわったハナ・カーニー選手のターンの方が新ルールでは評価されたのです。
そういう視点で平昌五輪の上位選手の滑りをYouTubeで見てみると、男子はターンの前半、スキーがこぶの裏側にあるときに空中を通っています。空中でカービングターンの弧を描いているのです。ターンの後半ではカービングしながらこぶの高いところを通り、エッジの切り返しとスキーの先落としをしています。ジャッジは下から見ているので、スキーが少々雪面から離れていてもわかりません。足を常にフォールライン上に置くということと、カービングを両立させるのはこの方法しかないのでしょうか。
スキーを空中で回転させながらこぶの中を高速で滑るのは、高度な技術と運動神経を要し、けがのリスクがあって危険です。ぼくは、全くずれのないフルカービングでありながら、スキーが常に接雪しているターンがあるのではないかと探し続けているのです。