昨日(17日)から白馬八方尾根スキー場に来ています。明日(19日)まで3日間、今シーズン最後のスキー練習をします。

 

 そろそろ田んぼや畑の準備をしないと間に合わないし、引っ越し荷物を運び込んだままで家の片付けもまだ全然できていないし、昨年から借りている耕作放棄田に西日本豪雨で土砂が流れ込んだままだし、父が使っていたビニールハウスの片付けと活用もまだできていないし、しなければならないことが山積しているのですが、そういうやっかいなことはひとまず置いておいて、親がショートステイに行っているこの機会に、ぜいたくな息抜きをさせてもらいました。

 

 それというのも、ここ10年来取り組んでいるダイナミック・ポジショニング・ターンだけは、体が動くうちになんとか目鼻を付けたいと思っているからです。

 

 今シーズンは自宅から一般道2時間で行ける兵庫県のハチ北高原スキー場に通って、アニキこと加藤大輔さんプロデュースの常設モーグルコースで、ダイナミック・ポジショニング・ターンの精度を上げるべく、機械をいったん分解して組み立て直すようにターンの一つ一つの動作を見直しました。

 

 その結果、昨シーズンの終わりに課題として残った(1)スタート(2)ストックワーク(3)エアへの入り(4)エアの着地からターンへの入りのうち、(2)ストックワークがわかったような気がします。今までいいかげんにしていたストックで狙う場所とストックを突くタイミングです。

 

 残る課題は3つ。(1)スタート(2)エアへの入り(3)エアの着地からターンへの入り。

 

 (1)と(3)はおそらく同じことでしょう。どちらも直滑降の後、ターンをします。(2)はターンの後に直滑降で、(1)(3)と順番が逆ですが、体を斜面と垂直にするという点は同じです。

 

 今シーズンはエアへの入りの姿勢を低くすることを試してみました。最後のこぶの後の下り坂(アプローチ)で体を小さく折り畳んでそのままエア台を通過するのです。スキーがエア台のキッカーの先端(リップ)を通過するまで、低い姿勢のままで踏ん張っていないといけないのですが、どうしても途中で体が伸びてしまいがちです。その結果、空中姿勢が不安定となって、技が入らず、着地の後も思い通りのターンができません。急斜面のエア台ではどうしても恐怖心が邪魔をするのです。

 

 17日の昼にゲレンデに到着し、パトロールにエア台設置の申請をして、いつもの場所にエア台を作りました。リフトをはさんだ反対側の兎平ゲレンデでは、ナショナルチームの合宿が行われていて、かつてカービングターンのお手本とされたヤンネ・ラハテラコーチらの指導で、トップ選手が急斜面のコースを猛スピードで滑り下りています。

 

 ぼくはいつものように何事にもマイペースで、ダイナミック・ポジショニングを意識しながらゆっくり滑っているのですが、もう少し習熟したら、スピードを上げることも考えていきたいと思います。やっぱりスピードを上げないことにはインパクトがなくて、新式のターンと言ったところで誰も相手にしないからです。

 

 気温が上がって水分をたっぷりと含んだ雪は重くて、スキーを回転させるのが大変です。特にぼくが使っているブラッドラインというスキーは細くてサイドカーブがないので、新雪や春雪では板が雪の中に沈み込んで取り回しがしずらいことこの上なしです。

 

 それでも同じところを滑っているうち、だんだんこぶができてきました。今日はこぶを滑っている最中に、ダイナミック・ポジショニングになっているか、なっていないかの識別が自分でできるようになりました。体を相当前に出さないとダイナミック・ポジショニングにならないようです。

 

 エア台の前後は相変わらず、うまくいきません。やっぱりエア台に入るところで恐怖心のために低い前傾姿勢がとれていません。ついついスキーを「ハ」の字にしてしまいます。これをすると余計に体が前にいきにくくなり、ジャンプがうまくできません。

 

 今シーズンは頭であれこれ考えるより、ヒマラヤの急斜面の岩場を駆け下りるユキヒョウのまねをすることに練習の主眼を置きました。その結果、でダイナミック・ポジショニング・ターンの課題の一つだったストックワークの問題が解決しました。理論は後付けでいいと思います。仮説(予想)を立てて試行錯誤してうまくできたら、それはなぜなのかを考える。うまくいかなかったら、また別の仮説(予想)を立てて試してみる。エア台の前後もユキヒョウのまねをしてみようと思います。

 

 明日は泣いても笑っても最終日。雨予報ですが、全力で課題克服に取り組みます。

 2日(土)と3日(日)、SAJ(全日本スキー連盟)公認のモーグル大会が兵庫県美方郡香美町のハチ北高原スキー場で開催されました。ポイントランキングの上位選手によるA級大会とそれ以外の選手によるB級大会が同時開催され、ぼくはB級大会に出場しました。

 

 いろいろと用事があって極端に運動不足だったのに加え、シーズンの疲れ、花粉症、風邪による体調不良で、第1戦の前日公式練習がある1日(金)の朝までキャンセルしようかどうか迷っていました。今年は雪不足で、とても大会は開催できないだろうと思っていたのですが、スタッフ、関係者の努力によって奇跡的に開催されました。これが練習の成果を試す最後の機会になるかもしれないので、まともな滑りができないかもしれないけれども、やっぱり出ようと意を決して、受付時間の終了間際に大会本部テントに滑り込み、ビブを受け取りました。

 

 2日に開催された第1戦は久しぶりに妻が付き添ってくれました。例年の大会よりスタート位置が下がって、平均斜度が27.5度と緩くなったのですが、第1エアの着地の難しさはいつも通りです。スタートでポジション(スキーに対する体の重心の位置)が後ろになり、右に行き過ぎ、左に行き過ぎと、右往左往するターンになりました。体がばらばらのままでは第1エアをまともに飛べず、着地後、横向きになってあえなく転倒し、スキーが外れてしまってDNF(途中棄権)という情けない結果に終わりました。

 

 全くいいところがないまま、あっと言う間に終わってしまいました。第1エアの着地後に転倒するのもお決まりのパターンです。何年もその課題の克服に取り組んできたはずなのに、全く進歩がなく、すっかりしょげていたのですが、第1戦終了後、第2戦に向けたコースインスペクション(下見)のとき、第1エアのわきに元モーグル日本代表の遠藤尚さんがいてコース整備をしていたので、「遠藤さんだったら、第1エアはどのあたりから助走しますか」と尋ねてみました。返ってきた答えは「ランディングが現状だと棄権しますね」。だから、これから雪を入れてランディングをならして安全なように整備するということで、実際、そのように整備されたのですが、本気とも冗談ともつかない返答に、「そうか平昌オリンピックの決勝1回目を1位で通過した名選手でもこの第1エアの着地は難しいのか」と勝手に納得して、すっかり気が楽になったのでした。

 

 友人の選手が送ってくれた動画と妻が撮影してくれたビデオを見ると、スタート直後から腰高の棒立ちで滑っていて、ジャンプも踏みきれていませんでした。踏み切ったジャンプでは、足が下に落ちて体が伸びますが、踏み切っていないジャンプでは、体が上がりながら伸びます。体全体がこわばって、ターンでもジャンプでも股関節も膝関節も動いていなかったようです。

 

 3日に開催された第2戦の前も、なんとかゴールしたいけれども、第1エアまでたどりつけるだろうか、第1エアの着地の後にまたこけるんじゃないだろうかと不安でいっぱいでしたが、「落ち着いて滑れば大丈夫ですから、頑張ってください」と励ましてくれる上位選手もいて勇気づけられました。スタート直前には、スタートわきで観戦していた知り合いから「ユキヒョウの滑りを見せてください」と声援をかけてもらい、がぜん元気がでてきました。やっぱり家に閉じこもっているのではなく、外に出て人と交わることが大切だと痛感しました。

 

 第1戦のようにスタートのしかたを間違うとまともに第1エアまでたどり着くことができません。ハーフパイプなどのドロップインという動作が必要です。体を前に出して斜面と垂直にします。このとき注意しなければならないのは、上体(背中)と斜面が垂直になったのでは不十分だということです。ブーツと体の重心(へその下5cmあたり)を結ぶ直線が斜面と垂直にならなければなりません。30度の斜面であれば、ブーツと体の重心を結ぶ直線が前に30度傾かなければなりません。滑走中は上体を前傾させます。仮に上体の前傾が30度だとすると、体の重心の位置の前傾の30度と合わせて直立していたときより上体を60度前に傾けることになります。上体の前傾が60度だとすると、体の重心の位置の前傾の30度と合わせて直立姿勢に対して上体の角度は90度の前傾、すなわち水平になります。ちなみにユキヒョウの場合は、体(背中)の角度は斜面と平行なので、下向きの30度になります。

 

 棒立ちだった第1戦の反省を踏まえて低い姿勢をとり、ユキヒョウの背中の角度を目標に体を前に倒してスタートしました。やっぱり怖いので、世界一臆病なユキヒョウほどにも前傾できませんでしたが、なんとか第1エアまでたどり着き、第1エアの手前のこぶでほとんど止まるくらいまでスピードを落とし、エア台のキッカーを最後まで踏み続けるように意識してジャンプしました。小さなジャンプで技も入りませんでしたが、第1戦よりは踏みきれたと思います。

 

 さて、着地です。第1戦の後、「ユキヒョウだったらどんな着地をするだろうか」と考えました。たぶん、前足から着地して、後から着地した後足で地面を蹴りながら前足を前に出して、急斜面を駆け下りるでしょう。ということは、ユキヒョウの動きをコピーしているぼくがすべきことは、着地するときに、ストックを先に突いて、後から着地したスキーでランディングバーンを後ろに蹴りながらターンに入ればいいのでしょう。そうすればダイナミック・ポジショニング・ターン(こぶを後ろに蹴るターン)ができるはずです。

 

 こんなことを頭の中では考えてみたものの、前の晩に初めて思いついたことが練習もなしに大会本番でできるはずもなく、着地後、スキーが横を向いて隣のレーンまで横移動(トラバース)してしまいました。これは絶対にしてはいけないことです。モーグルではフォールライン(スタートからゴールまでを最短距離で結ぶ直線)上を滑ることが最も重要です。フォールラインから外れると大きく減点されます。ぼくは元々、ターンのベース点(ノーミスで滑ったときの点数)が高くありません。動作が遅い、左右対称でない、両足の同時操作ができていない、上体が不安定、ストックワークがばらばらなど、基本的なことができていないからです。もともとターンの評価が低いところにもってきて、フォールラインから外れて大きく減点されるとターン点がなくなります。

 

 その後、スライドを入れながら、ゆっくり滑って第2エアも飛んで、なんとかゴールインし、転倒とDNFは免れたので、自分としては精一杯の滑りをしましたが、なにせターン点がないので、下から5番目という成績に終わりました。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンで上から下まで滑りきるという大目標はさておき、やっぱり、第1エアの着地がネックです。ときどき練習パートナーになってくれる匿名希望君は優秀なコーチについて猛練習した結果、第1エアの着地からターンにスムーズに入るという難題の克服に成功して念願の決勝進出を果たしました。

 

 ぼくも負けていられません。ここのところ気持ちが沈みがちでしたが、練習環境が整えば、体が動く限りは来年もまたモーグルに挑戦したいと、意欲がわいてきました。

 今日(2日)も午前中からハチ北高原スキー場のモーグルコースで、ダイナミック・ポジショニング・ターンの完成に向けて練習をしました。晴天に恵まれ、新雪に覆われた土曜のゲレンデは大勢のスキーヤー・スノーボーダーでにぎわい、リフト待ちの列も長く延びました。

 

 以前、アベノETCなどでトランポリンを練習していたときの仲間とも久しぶりに会いました。そのうちの一人が、スピードアップするためにこぶのどの部分を滑ればいいのかという悩みを抱えていて、話題になったのが「ライン取り」です。

 

 以前は、こぶの合わせ目の部分を滑る「出口狙い」とか、こぶの手前の受けの部分(バンク)でカービングするとか、こぶの中のどこを滑ってどのようなターン弧を描けば、コントロールとスピードを両立させられるかと考えたものですが、結論から言うと、現在のモーグル競技には「ライン取り」は存在しません。現在のモーグルの採点基準では、スキーヤーの足は常に体の下にないといけないことになっています。スキーヤーの体はスタートからゴールまでフォールライン上になければならないので、足もフォールライン上になければならないわけです。

 

 採点基準を定めたFIS(国際スキー連盟)のジャッジングハンドブック(2018年10月版)から該当箇所を抜粋します。(SAJのデータバンクに日本語訳がアップされていますが、誤訳が散見されます)

 

 まず、スキーヤーの体がフォールライン上にないといけないと言っている部分。

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6204.1.1 Fall Line

Skiing in the fall line is considered the shortest way from the Start to the Finish.

To avoid deductions for fall line deviations, the competitor must stay in the selected fall line out of the start gate. Competitors will receive score deductions for fall line deviations as noted in JH 6204.2 including drifting in Air maneuvers.

Landing on the center of the mogul is a deviation from the fall line.

 

6204.1.1 フォールライン

フォールラインをスキーで滑ることは、スタートからフィニッシュまでの最短路と考えられる。フォールラインを外すことによる減点を避けるために、競技者はスタートゲートを出た後、選択したフォールライン上にいなければならない。JH 6204.2に記されているように、エア演技のドリフト(横飛び)を含めフォールラインを外すことによって競技者は点数を引かれることになる。こぶの中央に着地するとフォールラインを外したことになる。

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 次にスキーヤーの足が体の下にないといけないと言っている部分。

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6204.1.2.2 Body Position for Carved Turns

・ A properly carved ski requires less effort to work, and gives higher levels of control and stability.

適切にカービングしているスキーはより少ない労力を要し、より高いレベルのコントロールと安定性をもたらす。

・ The turn is initiated with pressure as the knees and ankles/feet roll the skis onto edge and extension begins.

ターンは両膝と両足首・両足が両スキーを傾けてエッジを立て、伸展が始まるときの圧力とともに始動される。

・ At the middle of the turn (when the ski is edged and the tip is pointing down the fall-line) the ski tips contact the face of the mogul.

ターンの中間(スキーがエッジングされ、先端が下のフォールラインを指しているとき)では、両スキーの先端はこぶの面(つら)に接している。

・ Absorption is used to maintain balance and control pressure in the skis and should match the shape and size of mogul to optimize snow to ski contact.

吸収動作はバランスを保ち、両スキーにかかる圧力をコントロールするために使われ、スキーの接雪を最適化するためにこぶの形と大きさに合わせなければならない。

・ Rotations in the upper legs are minimal, feet remain under the body

(shoulders and hips) in both fore-and-aft and lateral planes, and knees

remain flexed.

両脚大腿部に生じる回転は最小限で、両足は前後・左右の平面ともに体(両肩と両腰)の下にあり、両膝は軟らかくしておくこと。

・ Legs should be together or in a consistent position throughout the run.

両脚はそろっているか、滑走を通じて一定の位置にあること。

・ Breaks in balance and separations in position are inefficient turns.

バランスを崩し、ポジションを乱すのは非効率的なターンである。

・ Angulation of the lower leg controls the radius of the turn. Timing of the initiation dictates how deep the feet go into the rut.

下腿に角度を付けること(アンギュレーション)はターンの半径をコントロールする。(ターンの)始動のタイミングはいかに深く両足を溝に入れるかを決める。

・ Movements should be symmetrical and equal side to side,specifically:

動きは対称で、両側が等しくなければならない。特に以下の点。

・ Timing and placement of pole plants (double pole plant is a deduction)

ポール(ストック)を突くタイミングと場所(ダブルストックは減点)

・ Arm movements (little movement is preferred but if there is movement it should be equal)

腕の動き(小さい動きが好ましいが、動きがあるのなら等しいこと)

・ Shape of turns: do the turns adjust to the gradient of the slope and the size and disposition of the moguls

ターンの形:ターンを斜度とこぶの大きさ、並びに合わせる

・ Position of the feet in relation to the body (do the feet move further outside the body’s midpoint on one turn)

体に対する両足の位置(一つのターンで両足を体の中心点から遠く外側に出している)

・ Specifically movements should be symmetrical and equal side to side.

・ Timing and placement of pole plants is a significant factor (double pole plant is a deduction)

※上の2項目は重複しているので、削りミスかと思います

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 以上、ジャッジが見るべきポイントとして挙げられているのですが、その中の<両脚大腿部に生じる回転は最小限で、両足は前後・左右の平面ともに体(両肩と両腰)の下にあり、>が足が体の真下にないといけないと言っているところです。太ももがワイパーのように左右に動いてはだめで、横から見ても、前から見ても、足は体(両肩・両腰の四角形)の下にないといけないということです。

 

 このことを最後の項目でも<一つのターンで両足を体の中心点から遠く外側に出している>と繰り返しています。足が体の外側に飛び出すターンは評価が低くなるということです。

 

 この規定がいつできたかということですが、手元に残している過去のジャッジングハンドブックを調べてみたところ、2010年12月版にはなく、2012年11月版には書かれています。つまり、バンクーバー五輪より後で、ソチ五輪より前ということです。

 

 このときの改正では同時に次のようなただし書きが加わりました。

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However, in some cases, a degree of steering or skidding during initiation is

unavoidable, but the key is to minimize snow resistance from skidding during the

remainder of the turn.

しかしながら、場合によっては、ターンの始めに、ある程度スキーを振ったり横滑りしたりすることはやむをえないが、肝心なのは残りのターンで横滑りによる雪面抵抗を最小限にすることである。

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 この2点の改正点を合わせると、ブーツを常にフォールライン上に置いて、ターンの前半ではスキーを振ったり、ずらしたりしてもかまわないが、ターンの後半ではカービングしてずれを最小限にせよ、ということになります。

 

 ソチ五輪で、第1エアの着地後、大きく乱れたハナ・カーニー選手が銅メダルで、第2エアの着地でわずかに乱れただけの上村愛子選手が4位になって、なぜなのかと多くの人が疑問を抱きました。上村選手は第1エアの直後のターンで足がフォールラインから少し外れました。あくまでカービングにこだわった上村選手のターンよりも、少々ずれてもフォールライン上を滑り続けることにこだわったハナ・カーニー選手のターンの方が新ルールでは評価されたのです。

 

 そういう視点で平昌五輪の上位選手の滑りをYouTubeで見てみると、男子はターンの前半、スキーがこぶの裏側にあるときに空中を通っています。空中でカービングターンの弧を描いているのです。ターンの後半ではカービングしながらこぶの高いところを通り、エッジの切り返しとスキーの先落としをしています。ジャッジは下から見ているので、スキーが少々雪面から離れていてもわかりません。足を常にフォールライン上に置くということと、カービングを両立させるのはこの方法しかないのでしょうか。

 

 スキーを空中で回転させながらこぶの中を高速で滑るのは、高度な技術と運動神経を要し、けがのリスクがあって危険です。ぼくは、全くずれのないフルカービングでありながら、スキーが常に接雪しているターンがあるのではないかと探し続けているのです。

 今シーズン、ハチ北で滑るときに「ゲレンデボランティア」のビブを着けています(時間が短いときを除く)。

 

 ビブ(Bib)とは英語で「よだれかけ」。モーグルの大会に出始めたとき、背中と胸に大きな数字を書いた布をゼッケンと言わずにビブというので、なぜなのだろうと思っていました。ゼッケンはドイツ語で数字のことで、胸当ての布そのものはビブというのだそうです。

 

 そのビブに数字とともに書かれた「ゲレンデボランティア」(略称G.V.)とは、今シーズンからの試みで、ゲレンデで困っている人をサポートすうボランティアです。シニアシーズン券購入者の中から希望者が務めます。

 

 具体的には、どこを滑ればいいかわからないという人にアドバイスしたり、転倒した人に声を掛けたりして、みんながスキー、スノーボードを楽しめるようにします。わからないことがあっても、見ず知らずの人にはちょっと声をかけにくいという人も、ボランティアとわかれば聞きやすいということなのだと思います。

 

 自分の練習のために滑るだけでなく、何かしら人のために役立つこともできればと思い、参加しました。そのうちもっと年をとって、ボランティアをしようにも「介護されるボランティア」くらいしかできなくなるので、何かするなら元気な今のうちですね。報酬・特典は何もありませんが、自分がしたいモーグルの練習をしながらできることなので、自分の余計な負担はいっさいなし。リフト係の人が「ご苦労さんです」と声をかけてくれて、元気が出ます。

 

 いくつか注意事項があります。

「レッスンをしてはいけない」

これは大丈夫。うまくないので、教えられません。

「ボランティア行為に対して報酬を求めてはいけない」

「抱え起こすときにはセクハラにならないよう注意する」

など。

 

 転倒している人に声をかけたり、手助けしたりするのも、ボランティアの仕事ですが、自力でなんとかしようとしている人には、余計なお世話になってしまうこともあるので、おせっかいのしすぎにならないように気をつけたいと思います。

 

 ちなみに、よく転んでいるゲレンデボランティアがいたら、それは間違いなくぼくです。ゲレンデボランティアのボランティアが必要だったりして。ともあれ、気軽に声をかけてもらえればと思います。

 

 今日の練習でもよくこけました。先週23日の練習で、ストックワークがわかったような気になっていたのですが、たった1週間あいただけで、もうわからなくなりました。今日は一日中、以前と同じようにおかしなリズムで滑っていました。右のストックを2回突いて、左のストックを1回突くといった調子です。2分3拍子のようなおかしなことになっています。終わり近くになってストックのタイミングが狂っていることに気づいたのですが、直せませんでした。

 

 先週は、「もう迷わない、エアの前後もこれで大丈夫」と思っていたのに、このざまです。エドガー・グロスピロン、ジャン-リュック・ブラッサール、セルゲイ・シュプレツォフが登場するDVD「究極のモーグルテクニック」(山と渓谷社)をまたしても見てしまったのが悪かったのか。明日もう一日、がんばります。

 ターン改造集中練習の3日目(最終日)となった23日(水)は晴れました。今までもやもやと霧がかかったようだったダイナミック・ポジショニング・ターンの疑問点も解消してきました。

 

 おととい、ストックを突く位置はターン弧の中心だと書いて、昨日、それは間違いのようだと撤回しました。ダイナミック・ポジショニング・ターンのストックワークが持つ意味は、スキーの回転運動の中心を示すという普通のターンのストックワークの意味と全く違っています。ターン弧の中心を探して、ストックを突こうとしていたのでは、いつまでたってもうまくいかないということです。

 

 ユキヒョウの走りを参考にして、こぶを見つめて、自分が力を加えたいところを「次ここ」「その次ここ」「その次ここ」とストックでたたいていきました。直感的でわかりやすいです。まだスキーの動きとストックの動きを同調させられないことが多く、ストックを振り上げたまま突けずに待っていることや、ストックを本来突く位置より手前に突いてしまうことがままあります。脚をゆっくり伸ばさなければならないのに、伸ばさないままだったり、すぐに伸ばしてしまったりするのが原因かと思います。

 

 今日は日がさして、バーンが緩んだうえに、サービスデーでリフト券、駐車場代が格安とあって大勢の客でにぎわい、こぶが大きくなりました。互い違いに並んだこぶの反対側、つまり、右のこぶと次の右のこぶの間、左のこぶと次の左のこぶの間になる部分は、へこんでいるのが正しい状態ですが、大勢のスキーヤーが滑るとそこが盛り上がってくることがあります。「受けこぶ」と言います。何かを受けるときの手の形に似ています。指の先の方の部分は本来、へこんでいるところなのに、高くなっています。ターンの切り替えが遅れ、スキーが横滑りして雪が斜め前に寄せられて起きる現象です。

 

 この「受けこぶ」はダイナミック・ポジショニング・ターンで乗り越えていくのが大変難しく、ぼくは「こういうこぶはダイナミック・ポジショニング・ターンにはなじまない」と勝手な理屈をつけて敬遠していました。

 

 しかし、これもこぶです。どんなこぶでも滑れなければモーグルスキーヤーとは言えません。上級モーグルスキーヤーは、ターン弧の振幅を小さくした直線的なライン取りをして、かかとをお尻に向かって引きつけながら、高くなったこぶを乗り越えていきます。スキーのトップが何かを受けるときのてのひらの指の部分に乗り上げても体を前に出しながらスキーのテールを持ち上げて乗り越えていきます。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンではこぶを乗り越えながら脚を伸ばし、こぶを後ろに押します。かかとを上げるという動作がないので、スキーのトップがこぶの手前で上を向いてこぶに乗り上げると、トップを落とすことが難しく、スキーが指の方向に飛び出してしまいがちです。

 

 この問題はスキーを横に向けることで解決します。

 

 スキーを進行方向に向けたままでトップを下に落とそうとすると、たくさんの距離を動かさなければなりません。ぼくのスキーだとブーツからトップまでの長さは1mくらいです。トップを30度下に向けようとしたら、半径1mの円の円周の12分の1(30度/360度)、つまり1m×2×3.14/12=52cm動かさなければなりません。

 

 一方、スキーの横幅はぼくのスキーだとブーツの部分で64mmしかありません。片方のエッジを30度下に向けるためにエッジを動かす距離は0.64cm×3.14/12=1.67cmです。

 

 仮にこぶの手前が30度上を向いていて、こぶの向こう側が30度下を向いていたとしたら、スキーの縦方向の動きでは、トップを52cm×2=104cm動かさなければならないのに対し、スキーの横方向の動きではエッジを1.67cm×2=3.34cm動かすだけでよいことになります。

 

 スキーは縦方向の傾きを変えるより、横方向の傾きを変える方が、はるかに簡単です。こぶを乗り越える瞬間にスキーの横方向の傾きを変えることによって、スキーでこぶを後ろに蹴れるようになります。

 

 今日の練習ではジャンプも少しだけしてみました。エア台の手前の最後のこぶを越えて、アプローチ(助走路)に入る動作と、踏みきり動作の確認が目的だったので、助走距離をできるだけ短くして、小さくジャンプしました。ユキヒョウの走りのイメージでターンして、ユキヒョウだったらどのようにジャンプするだろうかとイメージしました。

 

 結果は成功。スタートからターン、ターンからエア台への入り、ジャンプの踏みきり、着地、次のターンへの移行と、すべてユキヒョウの動きで統一されているので、うまくつながるようです。うまくいくと、着地の衝撃が少なく、体にもよさそうです。今までの大会のように、エアの前後でリズムが変わって、エアの着地後にあえなく中断または暴走ということがなくなるかもしれません。

 

 今後は、ユウキヒョウの動きに習熟し、ターンをコントロールしながら滑走スピードを上げていき、エアの技を入れるように練習を重ねていきたいと思います。

 ターン改造集中練習2日目の今日(22日)は朝からハチ北高原スキー場に行きました。駐車場までの坂道は凍結していて、冬タイヤでもスリップして、立ち往生しかけましたが、中国製の安物のチェーンというよりベルトをタイヤに巻き付けて事なきを得ました。スタッド(鋲)が突いたベルト10本がセットになっていて、駆動輪(前輪)のタイヤに5本ずつ巻き付けるだけのシンプルなものです。非常用としてちょっとした距離を走るのなら十分です。

 

 新雪が積もっていて、ぼくの細いモーグル板では沈んでしまいそうなので、セミファットスキーを履いてゲレンデに上がりました。幅が広くてエッジの切り返しが大変なので、モーグルコースの細かいこぶを滑るのには向いていませんが、乾いてあまり滑らない雪だったので滑走スピードが上がらず、いい練習になりました。

 

 その結果、昨日のブログに書いた予想(仮説)は見事に外れていることがわかりました。

 

(1)ストックを突くのはターン弧の中心

(2)モーグルスキーでは雪面が盛り上がったところで体が小さくなり、雪面がへこんだところで体が伸びなければならない。

 

 この2点はわかっていると書きましたが、どちらも普通のターンについて言えることであって、ダイナミック・ポジショニング・ターンには当てはまらないようです。

 

 先に理由が簡単な(2)の方から説明します。上体の高さ(腰の高さ)が変わらないようにするためには、雪面が盛り上がったところ(こぶ)で脚を曲げて体を小さくし、雪面がへこんだところ(溝)で体を伸ばさなければならないというのはその通りですが、ダイナミック・ポジショニング・ターンは、ブーツではなく、スキーのトップでターン弧を描きます。スキーのトップがこぶの上に来たときに脚を曲げ、スキーのトップが雪面がへこんだ溝に来たときに脚を伸ばさなければなりません。ブーツからスキーのトップまで1m近い長さがあります。スキーのトップがこぶを通過してから、ブーツがこぶを通過するまタイムラグがあります。それを考慮しておかないと、こぶの起伏にターンのタイミングが合いません。

 

 (2)の方はもう少し複雑です。普通のターンでは、ストックを突く場所はターン弧の中心です。みんな若干の違いはありますが、基本的にこぶの一番高いところか、ちょっと向こう側に突いています。ターン弧が深いか浅いかは別にして、スキー(ブーツ)がこぶの周りをぐるっと回るので、こぶの中心にストックを突きます。ダイナミック・ポジショニング・ターンは、こぶの裏側をスキーのトップでとらえ、脚を伸ばしながらこぶを後方に押す技術です。これができていないとダイナミック・ポジショニング・ターンとは言えないのですが、ターン弧の中心を狙ってストックを突いたのでは、こぶを後方に押すことができません。

 

 ぼくがこぶを後ろに蹴るターン(後にダイナミック・ポジショニング・ターンと命名)の練習を始めたころ、NHKで『プラネットアース』という番組を放送していて、ヒマラヤに生息する希少動物であるユキヒョウの映像がとらえられていました。

 

 ユキヒョウの歩行(走行)には2種類があります。断崖絶壁で獲物を見つけると、抜き足差し足でそっと近づきます。かかとを引き上げながら足を上げます(抜き足)。そしてつま先側から足を下ろします(差し足)。モーグルのターンの吸収動作やトップの先落としと似ていますね。

 

 獲物に近づけるだけ近づくと、断崖絶壁であるにもかかわらず、下にいる獲物に向かって猛スピードで全力疾走します。前足を前に振り出すと同時に、後足で地面を蹴って推進力を得ます。前足が地面に着いたら、その場所まで後足を前に振り出し、また後足で地面を後ろに蹴って前に進みます。急斜面のこぶを後ろに蹴りながら前に進むダイナミック・ポジショニング・ターンはこれに似ています。

 

 斜度が30度もある急斜面のこぶを後ろに蹴りながらターンするなんて正気の沙汰ではないと思う人もいるかもしれませんが、ユキヒョウはもっともっと急な断崖絶壁で地面を後ろに蹴りながら下に向かって全力疾走します。ユキヒョウにできて人間にできないはずがありません。

 

 人間の手がユキヒョウの前足、人間の足(ブーツ)がユキヒョウの後足です。人間の場合、手にはストックがあり、足にはスキーがあります。ぼくの場合、ストックの長さはグリップを含めて1m、スキーのトップ側の長さはブーツの長さを含めて1mです。ストックの振り(回転運動)とスキーのトップ側のターン(回転運動)を同調させながら、ユキヒョウが全力疾走するときの前足の動き、後足の動きをすればいいわけです。

 

 といっても、複雑で頭で考えてもなかなかイメージできません。今考えていることを簡単に言うと、両足でこぶを後ろに蹴りながら、外足の反対側のストックを前に出し、次にこぶを後ろに蹴りたいところに突きます。ストックを突いたと思ったら、そこにスキーのトップが来るので、トップでこぶを後ろに蹴りながら、逆になった外足の反対側のストックを前に出して、次に蹴りたい場所に突きます。この繰り返しです。

 

 ただし、これも今日の練習の結果をもとにした予想(仮説)であって、検証したものではありません。雪上で試してみたら、違っていたということがよくあります。10年間その繰り返しだったとも言えます。ユキヒョウのことについても以前にこのブログで書いていますが、ストックの長さと自分の脚の長さが同じであることに意味があると考えていたようで、誤解していたようです。ストックの長さとスキーのトップ側(ブーツより前)の長さが同じ動き(回転運動)をするのではないかというのが今回の仮説です。

 

 以前のブログはこちら

https://ameblo.jp/staizo/entry-10876605614.html

 

 こぶは浅いこぶと深いこぶ、軟らかいこぶと硬いこぶ、尖ったこぶ(凹凸の凸が強い)とえぐれたこぶ(凹凸の凹が強い)、縦溝こぶと横を向いたこぶといようにいろんなこぶがあります。

 

 どんなこぶでもダイナミック・ポジショニング・ターンのタイミングがつかめるストックワークははたしてユキヒョウの走りから予想した通りなのか。集中練習最終日の明日、ハチ北のモーグルコースで検証したいと思います。

 完成していないのだから改造も何もないのですが、例年通りの惨敗に終わった今シーズン初戦の反省をもとに、ダイナミック・ポジショニング・ターンの改造を試みています。

 

 13、14日に開催された第19回埼玉県松之山温泉モーグル競技会の熱気も冷めやらぬ19日(土)、両親を施設のデイケア(日帰り利用)に送り出した後、自宅を出発して、午後からハチ北の急斜面のモーグルコースと緩斜面のモーグルコースを滑りました。大会で合わなかったターンのタイミングを合わせようとしたのですが、ますますタイミングが合わず、自分でも驚くほど、全く滑れませんでした。さすがに緩斜面の初級モーグルコースはラインを外さずに滑れましたが、タイミングが合わないままバタバタと直滑降しただけでした。

 

 そこで昨日(20日)、家で仕事をしながら、どうしてタイミングが合わないのかと、あれこれと考えて思いついたのが、ストックの振り出し方です。ダイナミック・ポジショニング・ターンではすべての動作が普通のターンと逆になるはずなのに、ストックの振り出し方が普通のターンと同じです。鏡の中の世界が現実の逆であるように、すべてを逆にしなければならないのに、一カ所だけ現実と同じになっているのです。7個ある間違い探しの7個目の間違いのように、今まで気づきませんでした。

 

 思いついたらすぐに試したくなるのが人情というものです。頭の中で考えているだけでは正しいかどうかわかりません。実地で検証する必要があります。

 

 両親は今日(21日)から3泊4日でショートステイ(短期入所)です。前月初めに予定を決めるのですが、想定通り、寒波がやってくる時期に重なりました。家でじっとしているより、暖房の効いた施設でリハビリをしながら過ごした方が体のためにいいだろうと考えていたのです。

 

 「鉄は熱いうちに打て」の言葉通り、思いついたストックワークを試すべく、両親を送り出して、すぐにスキー場に向かい、ハチ北の緩斜面のフラットバーンでショートターン(小回り)をしてみました。

 

 今までの癖があるので、初めは戸惑いましたが、がまんして何本か滑るうち、だんだんとリズミカルにターンを連続できるようになってきました。そこで、さっそくこぶに挑戦。緩斜面のモーグルコースで、2こぶずつ、新しいストックワークのリズムで滑ってみました。まだ続けては滑れませんが、うまくできれば、スキーのトップが雪面に吸い付くようにして、こぶに追従するようです。

 

 急斜面のこぶは難しくてたったの1こぶさえ滑れませんでした。モーグルコースが閉まってから、フラットバーンでショートターンの練習を繰り返しているうち、以前にうまくできたときのターンであることがわかってきました。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンの練習を本格的に始めてから10年になります。逆のストックワークで滑っていた今までの練習は何だったのかという気もしますが、もつれた糸をほぐすように、断片的に少しずつ、少しずつわかってきたのであって、試作品を大会で使うたびに爆発していたような今までの開発作業が無駄だったのではありません。

 

 今日の練習を終えて、帰りの車の中で考えたのは、普通のターンはブーツがターン弧を描くけれども、ダイナミック・ポジショニング・ターンではスキーのトップ(先端)がターン弧を描くということです。ストックを突く位置はターン弧の中心です。ターン弧の描き方がまるっきり違っているので、ストックワークもまるっきり違ってきます。今まで、ブーツでターン弧を描くイメージしかなかったので、いくら頑張ってもダイナミック・ポジショニング・ターンにならなかったのでしょう。

 

 スキーのトップでターン弧を描く場合、ストックをどのタイミングで振り出し、こぶのどこに突けばいいのか、理論的に考えてみました。ストックを突くのはターン弧の中心です。これはわかっています。モーグルスキーでは雪面が盛り上がったところ体が小さくなり、雪面がへこんだところで体が伸びなければなりません。これもわかっています。その両方を成立させるターン弧をスキーのトップで描くためにどのような動作をしなければならないのかを考えました。一応、理論的に説明できる答えが出ました。実地で検証しないと正しいかどうかわかりません。ハチ北のモーグルコースで検証して、正しいとわかれば、習熟するまでにしばらく時間がかかるかもしれませんが、新しく得たイメージと理論で練習したいと思います。

 22都道府県の選手が出場した第19回埼玉県松之山温泉モーグル競技会は、第2戦も第1戦と同じような結果に終わりました。エアを2本とも飛んで最後まで滑りきってゴールはするけれども、第1エアの着地後に大きく横にそれて転倒し、ターン点が残らないというパターンです。最近、このパターンが続いていて、全く進歩がないように見えますが、自分の中ではほんのわずかではありますが、前進しています。

 

 第1戦の反省を踏まえ、第2戦の当日の公式練習では、滑走姿勢を変えて、低い前傾姿勢にしてみました。ダイナミック・ポジショニング・ターンは、スキーのトップでこぶの裏側をとらえ、なおかつこぶを後ろに押します。そのためには、こぶを乗り越えるときにスキーのトップを下に落とすことが必要不可欠です。スキーの前側(足のつま先側)に体重をかける(ポジションを前にする)ことによって、スキーのトップが下がります。

 

 腰の位置が高いのと低いのではどちらが素早く前に体重をかけることができるかを考えます。

 

 スキーの前側に体重をかけるためには、ブーツの位置に対して腰が前になるようにしなければなりません。足の位置を変えずに腰を前に出すか、腰の位置を変えずに足を後ろに引くかのどちらかです。足の位置を変えずに腰を前に出す場合について考えます。

 

 腰を前に出すときの動きは、足関節、膝関節と股関節が連動してパンタグラフのような動きにもなりますが、単純化して、足から腰までの長さを半径の長さとする円運動として考えてみます。

 

 膝、腰を伸ばして腰の位置を一番高くした場合、脚の長さが円運動の半径になります。ぼくの場合だと1mくらいです。膝、腰を曲げて腰の位置を一番低くした姿勢では、足から膝よりちょっと上くらいの長さが円運動の半径になります。ぼくの場合だと60cmくらいです。

 

 ほとんどのスキーブーツは足関節を固定するようになっているので、足関節が動かないものとして考えます。スキーのトップを30度下に向ける場合、足と腰を結ぶ線を前に30度倒さなければなりません。釘抜きで考えてみましょう。直角に曲がった釘抜きの短い方がスキー、曲がった角の部分がブーツ、長い方が足と腰を結ぶ線です。釘を抜くときの動作で、短い方を30度上げるためには、長い方(柄に当たる部分)を後ろに30度倒さなければなりません。30度は360度の12分の1なので、腰は円周の長さの12分の1動くことになります。

 

 円周の長さ=円運動の半径(足から腰までの長さ)×2×円周率(π)

 

 円運動の半径が1mの場合(脚を完全に伸ばした姿勢)は、円周の長さが1m×2×3.14=6.28m、腰の位置を30度変えるとき、腰が円周の12分の1を動くので、0.52mが腰が動く円弧の長さです。

 

 円運動の半径が60cmの場合(脚を深く曲げた姿勢)は、円周の長さが0.6m×2×3.14=3.768m、その12分の1の0.314mが腰が動く円弧の長さになります。

 

 腰が動く距離は半径の長さに正比例し、スキーのトップを同じ角度だけ下げる場合、脚を伸ばした姿勢よりも脚を深く曲げた姿勢の方が腰を前に出す距離が短くてすむということになります。ぼくの場合だと、脚を深く曲げた低い姿勢だと、脚を伸ばした腰の高い姿勢に比べて、0.6/1=5分の3の距離を動かせばいいということになります。

 

 現在のモーグル競技では、スキーのトップを落とすのに、ほとんどの選手が、かかとをお尻に向けて引きつける動作をしています。この場合は、膝関節が円運動の中心になり、膝関節から足までの長さが円運動の半径になります。ぼくの場合だと50cmくらいです。スキーのトップを30度下げるために、膝関節を中心として足(ブーツ)をお尻に向けて引きつける距離は、0.5m×2×3.14/12=0.26mです。ちょうど足の長さ(ぼくの場合は26.5cm)くらい、ブーツを後ろに引けばいいということです。ピッチの細かいこぶを高速で滑りながらスキーのトップを下に落とすには、膝から下だけを振り子のように動かすのが、移動距離(円運動の円弧の長さ)が短くて有利ということになります。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンでは、逆に足の位置を変えずに腰の位置を移動します。雪面を後ろに押すには、折り曲げた脚を伸ばさなければなりません。普通のモーグルのターン(スタティック・ポジショニング・ターンと呼んでいます)では膝関節から下を動かすのに対して、膝関節から上の大腿骨の角度を変えるをことになります。

 

 膝関節を中心とした円運動で腰の位置を動かすのですが、この円運動では、腰の位置は足の位置より前に出るのではなく、上がるだけです。

 

 横から見た図を想像します。大腿骨が下腿(すね)と垂直で、地面に対して水平になった姿勢からスタートして、膝関節を中心にした円運動で腰を動かす場合を考えます。膝関節が時計の針の中心で、大腿骨が時計の針とすると、大腿骨ははじめ水平なので、腰ははじめ3時のところにあります。30度分動かすと2時のところにきます。腰がほとんど前に出ていないのがわかります。完全に脚を伸ばして直立したときに腰が足の真上にきますが、それ以上、前に出ることはありません。

 

 大腿骨が水平になった最初の姿勢では、上半身を前に倒していて、腰が上がるにつれて、上半身も起こしていきます。重心の位置は常に足の真上にあって、高くはなりますが、前に出ることはありません。この円運動ではスキーのトップに体重をかけることはできないのです。

 

 このことがわかっていませんでした。体を前傾させていれば、脚を伸ばすことによって雪面を後ろに押すことはできますが、単に脚を伸ばすだけではスキーのトップを下げることはできません。こぶで持ち上げられたスキーのトップを下げるには何か別の方法が必要ということです。

 

 答えはこうです。脚を曲げた深い前傾姿勢をとり、なおかつ体を前に出して、重心が常に足より前にあるようにしておくということです。胸か肩のあたりでスキーのトップを押さえつけているので、スキーのトップがこぶで持ち上げられても、こぶを通りすぎると下がります。何もしなくてもいいのです。自動でトップが下がります。

 

 2009年のトキめき新潟国体の公式練習の後、フィンランドチームのコーチだった井上薫さんが、ぼくの滑りに注目していたようで、「課題は何ですか」と声をかけてくれました。以前にレッスンを受けたことがあって、顔見知りだったのです。ぼくが「第1エアの着地後のミドルセクションで後傾になってこぶが吸収できなくて、がたがたした滑りになるので、それをどうしたらいいのかと考えています」と返答すると、井上さんは「何もしなくていい、じっとしていたらいい」と言いました。そのときは、わけがわからず、「そんなはずがないだろう」と思っていました。レース本番ではやはりミドルセクションでがたがたとこぶに当たる滑りになり、それを修正しようと板を横に向けた途端、板が外れて吹っ飛んでしまいました。井上さんが言っていたように、何もせずに、ただスキーのトップの側に体重をかけているだけで、こぶは吸収できるのだと今にしてやっとわかったという次第です。

 

 第2戦で考えたことに話を戻します。スタートの仕方を考えました。今回の大会コースは、スタート直後の2こぶほどは斜度がありません。ほぼ水平です。3こぶ目くらいから下がっていって、第1エアの手前あたりで最大斜度の30度になります。第1戦ではこの斜度変化に対する対策ができていませんでした。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンでは、スキーでこぶを後ろに押します。ほぼ水平になっている最初の2こぶはターンを意識せずにまっすぐに漕いで出て、3こぶ目からこぶを後ろに押しながらターンしていこうと思ったのですが、うまくこぶに入れませんでした。スキーでこぶを後ろに押すためには、体をスキーより前に出さなければなりませんが、3こぶ目の下り坂になるところで前に出たのはストックだけで、体が前に出なかったようです。

 

 スタートから第1エアまでのトップ(ファースト)セクションが一番の急斜面になっている場合、ほとんどの選手が抑えて滑ります。だんだんと手前の方が削られていって、次のこぶまでの間隔が広くなります。スキーをまっすぐゴール方向に向けて滑りたかったのですが、ただまっすぐ滑ったのでは、広くなったこぶとこぶの間を直滑降することになり、まともにエア台に入れません。やむなく、スキーを回しながらスライドしたり、こぶにぶつけたりしながら滑ることになります。この体勢では上半身が後ろに遅れたままのターンになり、とてもこぶを後ろに押すことはできません。

 

 高速で滑ることになるミドルセクションの細かいこぶは、比較的タイミングを合わせやすく、1本だけですが、公式練習でダイナミック・ポジショニング・ターンになりかけたことがありました。ジャッジをすることもある、あるコーチが「脚がよく動いていた」と評価してくれたので、たぶん、いい滑りになっていたのだと思います。

 

 しかし、レース本番では、第1エアがすっぽ抜けてしまい、エアの着地後はなすすべもなく横にそれて、スキーを止めるために体が後ろに倒れてしまいました。すぐに起き上がってミドルセクションを滑ったものの、あわててラインに復帰したので、ターンのタイミングが合っていませんでした。

 

 ミドルセクションの細かいこぶはもちろん、第1エアまでのトップセクションのような間隔が広くて大きなこぶを、どうタイミングを合わせて乗り越えていくかが、今回の大会で見つけた課題の第1です。

 

 1本だけうまくいきかけた公式練習で体感したことですが、ダイナミック・ポジショニング・ターンのストックの振りは普通のターンと違っているようです。公式練習やハチ北での練習を思い出しながら、頭の中でストックワークのタイミングの取り方をシミュレーションしています。まだ完全にまとまってはいないのですが、どうも、普通に考えたのでは、ありえないようなストックワークのようです。

 

 普通のターンでは、右のこぶに突いて、次に左のこぶに突いて、次の右のこぶに突いてというように、左右のこぶ1個ずつに突いていきます。こぶの頭を後ろにひっかく感じと言えばいいでしょうか。右・左・右・左と単純な2分の2拍子のリズムです。

 

 ところが、ダイナミック・ポジショニング・ターンのストックワークは、右のこぶ1個半か2個を引き寄せ、次に左のこぶ1個半か2個を引き寄せるようなややこしい動きです。ストックを前に振り出してすぐに突くのではなく、前に振り出した後、しばらく待つ時間があるようなのです。右のこぶ1個半か2個、左のこぶ1個半か2個というようにストックを振っていて、水泳で言うと、バタフライの1ストローク2ビート(腕で1かきする間に2回キックする)とか、クロールの2ストローク6ビート(左右の腕で1かきずつする間に左右の足で6回キックする)のような感じで、ストックの1回の振りで数えるこぶが1個ではないようなのです。2分の3拍子のような複雑な動きです。これが完全に把握できないかぎりは、いつまでたっても、ターンとこぶのリズムが合わないはずです。

 

 その結果、第1エアの入りも、考えていたような前傾姿勢ではなく、半ば棒立ちになってしまって、すっぽ抜けてしまいました。ミドルセクションのターンもタイミングが合っていなかったので、第2エアが不十分なジャンプになって、ダブルツイスターにするはずが、シングルツイスターになってしまいました。これもよくあるパターンで、ジャンプが踏みきれていないので、体の軸がとれず、技が入りきらないのです。

 

 エアがすっぽ抜ける理由は、ターンのタイミングがあっていないことだけではないようです。体勢を立て直してエア台に入った場合でも、必ずといっていいほどエアがすっぽ抜けて技が入らず、着地後もダイナミック・ポジショニング・ターンどころか、スライド(横ずらし)さえままなりません。

 

 今回の大会で初めて気づいたことですが、最後のこぶからアプローチ(下り坂)に入り、トランジション(底の水平部分)まではいいのですが、次にキッカー(登り坂)に入るあたりで目が動いているのではないかと思います。

 

 エア台は入り口(アプローチ)から出口(キッカー)まで、微動だにせず、踏ん張り続けなければなりません。一瞬たりとも動こうものなら、雪面に対する圧力が弱まり、ジャンプがすっぽ抜けてしまいます。股関節や膝関節はもちろんですが、頭や目も動かしてはいけないのです。

 

 エア台に圧力をかけ続けてしっかりとしたジャンプができさえすれば、空中で着地の体勢を整えることができます。着地と同時に体を前に出して、雪面を後ろに押せば、最初のこぶからダイナミック・ポジショニング・ターンのリズムで滑ることができます。

 

 今回の大会で気づいた課題をまとめると、ダイナミック・ポジショニング・ターンのストックワークのタイミングの取り方を考えることと、ジャンプの踏みきりを見直すことの2点です。この2点が解決すれば、今まで課題と言っていたスタート、エアへの入り、着地後のターンへの入りも解決することでしょう。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンが完成したのかと期待した読者(いないとは思いますが)にとっては、期待はずれに終わった大会でしたが、ぼくにとっては「あと一歩」を感じさせることになった大会でした。

 予告通り、やって来ました。新潟県十日町市の松之山温泉スキー場。全日本スキー連盟公認B級のモーグル大会が開催されています。北は北海道から南は兵庫県まで全国津々浦々から男女合わせて100人を超える選手が集まりました。

 

 13日(日)が第1戦、14日(月)が第2戦です。今回は10年の歳月をかけて自分で開発に取り組み、ようやく完成したと思われるダイナミック・ポジションニング・ターンで、スタートからゴールまで滑りきるのが目標でした。

 

 結果を先にお伝えします。惨敗でした。まずもって、大口をたたいたことを皆さんにおわびしなければなりません。スタートから今までの大会と同様、気持ちの悪いターンになってしまい、すっぽ抜けた第1エアの着地後、横にそれたうえに転倒して、ターン点がなくなり、第2エアでスプレッドイーグルを飛んだだけの点数になってしまいました。

http://www.matsunoyama-ski.com/event/result/1stsaitamaMO.pdf

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンで滑るぞと大口をたたき、大会になると、決まって気持ちの悪いターンになって、ジャンプもろくにできないということの繰り返しで、いやになってしまいます。またも幻に終わったダイナミック・ポジショニング・ターンですが、練習であれだけ確信を持っていたはずなのに、そんなターンがはたして本当に存在するのかと、またも自信がなくなってしまいました。

 

 過大な期待を抱き、大会本番でその夢が無残にも打ち砕かれるというこの悲劇の原因として、考えられることは二つです。

 

 一つは本人の妄想です。ぼくは練習を一人でしています。かつてはレッスンもたくさん受けて、基本からいろいろと教えてもらいましたが、今はコーチもインストラクターもいません。人と違ったことをしようとしているので、仕方がありませんが、全くの我流になってしまっています。ビデオ映像もありません。つまり自分の滑りの客観的な評価ができないので、ちょっとでも前よりうまく滑れると、次はワールドカップ出場だというように、自分を過大評価していまいがちです。これはぼくに限らず、よく陥りがちなパターンです。練習しているときは楽しいですが、大会本番で客観的な評価を受け、自分の実力のなさを思い知らされて落ち込むことになります。

 

 もう一つは練習と大会本番の条件の違いです。雰囲気に飲まれるというような漠然としたことではなく、もっと具体的なことがあります。

 

 まず、直前に練習していたハチ北の初級モーグルコースとは斜度が違います。、松之山の大会のコースは平均斜度23度と緩斜面のコースですが、出だしだけは30度の急斜面です。緩斜面のコースだと最後は止まれるという安心感があるので、どれだけ飛ばしても平気ですが、スタートから30度の急斜面を全速力で滑って第1エアを飛ぶのはかなりの勇気が必要です。ジャンプするだけならまだしも、着地後、スムーズにターンに入らなければなりません。大きく飛びすぎて、最初のこぶに弾かれて吹っ飛ばされるという恐怖があるので、おっかなびっくりのスタートになりがちです。

 

 公式練習は前日に3~4本、試合当日に2~3本、スタートからゴールまでエアも入れて大会コースを滑るのですが、練習の延長で初めて臨む1本目が一番よくて、2本目、3本目となるうち、だんだんおかしくなっていきます。

 

 こぶがだんだん深くなっていくということも大きな要素としてありますが、もともとできていないスタート、エアの入り、エアの着地からターンへの入りがうまくいかないので、エアの着地後の処理をどうしようかと考えているうちに、まっすぐに全力でぶっ飛ばすという滑りができず、だんだんとおかしなことになっていきます。

 

 最初の1本がよくて、だんだんおかしくなっていくという理由としてもう一つ考えられるのは、人の滑りに惑わされるということです。何度も言うように、今のところ机上の空論と批判されてもやむをえませんが、ダイナミック・ポジショニング・ターンは理論上、普通のターンとすべての動作が逆です。当たり前ですが、大会では他の選手は全員、普通のターンです。公式練習では見ないでおこうとしても、どうしても前に滑る人のスタートが目に入ります。自分がうまく滑れていないとなおさら、うまく滑っている人の滑りが目についてそれに引きずられてしまいます。まぶたにそんな残像を残してしまうと、自分がイメージする滑りができなくなってしまいます。大会に出場している約100人が皆同じ滑り方(普通のターン)をしている中で、自分だけが逆の動作の滑りをするのは至難の業と言えます。言い訳になりますが、1本目が一番よくてだんだんおかしくなる大きな理由かもしれません。自分で克服するしかないですね。

 

 知り合いの選手がぼくの滑走をスマートフォンで撮影して送ってくれました。それを見ると、おっかなびっくりの弱々しい滑りで、力が入っていません。ラインから逸れまいとして、こぶに振られているようです。とてもダイナミック・ポジショニング・ターンとは言えない滑りになっています。

 

 このターンの練習を本格的に始めたのは、松之山温泉スキー場で開かれたトキめき新潟国体のモーグル競技が開かれた2009年からです。失敗はしましたが、第1エアまではもっと直線的に攻めたように思います。これには大会関係者の証言がありますので、自分の妄想だけではなく、客観的にそうだったのだと思います。

 

 当時の記憶をたどると、全日本スキー連盟公認A級大会として開催されたので、平均斜度はもう少しありました。ぼくが選択したスキーヤーから見て右のライン(ブルーの旗側)はなぜかトップ選手が皆このラインを選んだので、縦こぶのとても直線的なラインになっていました。

 

 「第1エアまではたった7こぶ。まっすぐに滑ってスピードが出ても第1エアにまっすぐ入ればエア台が止めてくれる」。そう考えて、5個先のこぶを見て、まっすぐに突っ込んでいきました。そうすることによって、エアの着地後、暴走ぎみになりはしましたが、今のように横に逸れたりはせず、まっすぐにこぶに入っていくことができました。

 

 そうですね。今、ぼくは1個先のこぶを見ています。これではこぶの手前の溝に合わせてスキーが右を向いたり、左を向いたりして、まともなターンになりません。スキーのトップを常に前方に向けておくのが、ダイナミック・ポジショニング・ターンです。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンでは、ストックを突く位置が普通のターンと違うので、ぼくはそれを気にするあまり、1個、1個のこぶのストックを突く位置を見ながら滑っていました。ストックはランニングのときの腕の振りのようなもので、見ながら滑るものではありません。

 

 まっすぐに滑るとけがのリスクが高まるように思いがちですが、けがをしないようにとか、失敗しないようにとか、逃げ腰になると、体が遅れて、スキーのコントロールが効かなくなるので、かえって危険です。

 

 第1戦では、練習したことが何一つまともにできませんでした。その教訓を生かし、明日14日の第2戦では、恐怖心を振り払い、スタートからまっすぐに前だけを見つめて滑ろうと思います。

 新潟県の松之山温泉スキー場で12日~14日に開かれる今シーズンの初戦に向けて、5日は兵庫県香美町のハチ北高原スキー場のモーグルトレーニングコースで最終調整をしました。

 

 超上級こぶ斜面「北壁」で知られるハチ北高原スキー場は、京都府綾部市の自宅から一般道だけを通って2時間で行けます。昨シーズンからホームゲレンデになり、今シーズンも父母がデイケアやショートステイに行っているときに頻繁に通うことになりそうなので、シーズン券(ゲレンデと駐車場)を購入しました。

 

 父母をデイケアに送り出してから自宅を出発し、午後1時にゲレンデに到着。頂上部の「北壁」の下に広がる緩斜面「パノラマコース」にビギナー向けのモーグルトレーニングコースが設置されています。今シーズンはなかなか雪が降らず、ゲレンデのオープンが遅くなりましたが、年末に雪が降るやいなやあっという間にコースが作られ、この日は4レーンが整備されて、大勢のスキーヤーでにぎわっていました。ここ数年で一番というほどのいいコース状況だったそうです。

 

 コースの管理者は「アニキ」こと元ナショナルチームの加藤大輔さん。顔見知りのスキーヤーに「今年もよろしくお願いします」と声をかけてくれて、アットホームな雰囲気です。本人も言っていましたが、名物の急斜面もさることながら、このアットホームな雰囲気がハチ北のよさなのでしょう。

 

 モーグルトレーニングコースは子供もいれば、ぼくのような中高年もいて、みんながこぶを楽しみながら滑っています。モーグルスキーの原点に立ち返ったような雰囲気です。

 

 しかし、ビギナー歓迎コースとはいえ、湿った雪が硬く締まったいわゆる「パック雪」(Packed snow)で、大勢が滑ってこぶの手前が深く沈み込んでいるので、油断ができません。以前のぼくは、こういう深くて細かくて硬いこぶではダイナミック・ポジショニング・ターンの練習はできないと、敬遠していました。ですが、それではいつまでたっても、大会のコースを滑り切ることができません。

 

 思えば、ぼくが51歳で初めて国体出場を果たした2009年のトキめき新潟国体のモーグル(デモンストレーション競技、松之山温泉スキー場)も、こんな雪質のコースでした。後にダイナミック・ポジショニング・ターンと名づけた独自の高速ターンに取り組み始めた直後の大会で、第1エアの着地からミドルセクションのこぶに初めて入ることができましたが、スキーばばたばたと音を立て始めたので、暴走しているのかと思って、スピードを抑えようとスキーを横に向けた瞬間、片方のスキーが外れて頭上近くまで舞い上がり、当時のルールの制限時間の10秒ぎりぎりで履き直してなんとかゴールしたのでした。

 

 以来、ダイナミック・ポジショニング・ターンの完成を目指して苦節10年。毎年、全日本スキー連盟公認のB級大会で最下位近辺をさまよいながらも、いつかはこのターンでゴールまで滑りきるぞと、練習に励んできたのでした。

 

 ロングターン(大回り)はすぐにできるようになりましたが、ショートターン(小回り)は苦労しました。細かいピッチのモーグルコースでの動きがほぼ完全にわかり、ようやく完成したのが昨シーズンです。脚の曲げ伸ばしのタイミング、ストックを突く位置などが解明され、今シーズンの宿題として、ターンからエアへの入り方と、エアの着地からターンへの入り方を詰める作業が残りました。

 

 この日の練習のテーマは、細かくて深くて硬いモーグルコースをダイナミック・ポジショニング・ターンで滑りきることと、こぶからエアへの入り、着地後のこぶへの入りです。

 

 モーグルトレーニングコースでのダイナミック・ポジショニング・ターンの練習では、ストックの突き方(pole planting)を意識しました。ダイナミック・ポジショニング・ターンは、すべての動きが普通のターンと逆です。ストックを突くタイミング、突く場所も逆になります。アニキをはじめとする上級モーグルスキーヤーがさっそうと滑る後ろ姿に見とれているわけにはいきません。上手な人の残像を目に焼き付けながら、後ろを付いて滑る練習がありますが、ダイナミック・ポジショニング・ターンに関してはそれは逆効果です。ほかの人の残像がちらついた瞬間、ターンが体系が崩れて破綻してしまいます。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンができているかどうかの判断は、映像を撮影してもらったことがないので、今までの練習で体験した自分の感覚だけが頼りです。

 

 スキーがフォールラインの方向にまっすぐ滑っている、スキーがこぶの起伏に追従していて雪面から離れることがない、スキーのトップ(足のつま先)でこぶを後ろに押している(蹴っている)感じがする。こういった感覚がうまくできている証拠です。逆に、スキーがこぶの手前で斜めを向いて、こぶを迂回しているのは、うまくできていない証拠です。

 

 トキめき新潟国体に出場したときの体験を書いた『毎日新聞』の「記者の目」の終わりの方で、ぼくは<次々とやってくるこぶを乗り越えていくのは、まるで人生のようだ。モーグルで失敗を繰り返しながら得た教訓がある。こぶは、腰を引いて避けて通ろうとするより、体を前に出して踏みつけていった方が、簡単にしかも気持ちよく乗り越えられる>と書いています。

 

 これはまさにダイナミック・ポジショニング・ターンができているかどうかの目安です。足の裏でこぶを踏みつけて、後ろに蹴っていく感じがあれば、ダイナミック・ポジショニング・ターンができているということです。

 

 そのためにどういう動作をするか。さんざん試行錯誤して、ここ3シーズンくらいでだんだんわかってきたのは、膝関節を使わずに股関節だけを使うということです。

 

 こぶを吸収するのに、普通のターンは足を動かすのに対し、ダイナミック・ポジショニング・ターンは腰を動かします。

 

 足を動かすのは大腿骨(太ももの骨)と下腿骨(すねの骨)の角度を変えることによります。足を前に出して蹴る動作をするときは、太ももの前面にある大腿四頭筋を縮めて脛骨(下腿骨の一つ)を前に引き上げます。足で後ろに引っかくときは、太ももの裏側にあるハムストリングスで脛骨を後ろに引っ張ります。これは膝関節の動きです。

 

 一方、ダイナミック・ポジショニング・ターンでは足を動かさずに、体の重心の位置(コア)を動かします。簡単に言うと、腰(お尻)の位置を上下させます(これを「ダイナミック・ポジショニング」と呼んでいます」。腰を下げるときは、背骨に対する大腿骨の角度を小さくします。つまり、大臀筋(お尻の筋肉)を緩めて大腿骨を体に近づけます。腰を上げるときは大臀筋を縮めて大腿骨を体から離します。これは股関節の動きです。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンは足を動かさずに腰を動かすわけだから、膝関節は使わずに、股関節だけを使えばいいということになります。スキーの練習でよく、「太ももがぱんぱんになった」と言いますが、太ももの大腿四頭筋を使うのではなく、大臀筋などお尻の筋肉を使って股関節だけを動かすようにするということです。

 

 この日の練習では、お尻の筋肉を使って、細かくて深くて硬いこぶを吸収する感覚が始めてわかりました。お尻の筋肉は大きくて疲れにくい筋肉です。膝関節を動かす大腿四頭筋も大きな筋肉ですが、けっこう疲れやすく、痛めやすい筋肉です。お尻の筋肉で股関節を動かし、膝関節を使わない滑りだと、当たり前ですが、いくら滑っても膝が痛くなることがありません。まさに高齢者向きの滑りと言えるでしょう。

 

 この日の練習テーマのもう一つは、エアの前後の処理です。モーグルトレーニングコースのわきにエア台も設置してありました。まだ雪が足りないので、ランディングに雪が盛ってなくて、自己責任で練習するの台です。

 

 いいジャンプをするには、最後のこぶを越えてから下り坂になるアプローチ(助走路)、水平になったトランジション(移行部)、エア台の先端(リップ)に向けて登り坂になったキッカーをまんべんなく踏み続けなければなりません。どこかで力が抜けて、雪面に加圧できていないと、ジャンプしても体勢が崩れてまともなエアができません。

 

 踏みにくいのは、最後のこぶから斜度が大きく変わって落ち込むアプローチと、その下のボトム(底)になるトランジションです。ぼくは今まで、アプローチからトランジションにかけて踏み込み動作をしながら雪面に力を加えていたのですが、踏み込み動作が吸収動作になって力が抜けていたようです。夏のウォータージャンプでもそのあたりを考えながら練習したのですが、やはり雪面のエア台で確認する必要があります。

 

 エア台はけっこう大きくて、雪が硬く締まっていてスピードが出そうなので、最後のこぶのあたりからスタートしてジャンプしました。最後のこぶを越えて、落ち込み始めるアプローチの最上部をしっかりとスキーのトップでとらえて加圧したことによって、まっすぐなジャンプになりました。高さが出て、空中姿勢が安定しました。これですね。これが今までできていませんでした。時間の関係でストレートジャンプを2本飛んだだけですが、2本ともいいジャンプができたので、この日つかんだ動きで間違いないはずです。

 

 ターンからエアへの入りと、エアの着地後のターンへの入りは基本的に同じ動きになるはずです。ターン→最後のこぶ(ターンの終了)→直滑降→ジャンプ→着地→直滑降→最初のこぶ(ターンの開始)という順序です。エアの着地後は、エアへの入りと、ジャンプ(テイクオフ)をはさんで対称です。

 

 スタートとエアの着地後は、直滑降して最初のこぶに入ります。そこで、モーグルトレーニングコースの手前で小さくその場ジャンプをしてエアの着地をイメージし、直滑降で勢いをつけてモーグルコースに入ってみました。20mほど滑ったところであえなくコースアウトし転倒しました。この日、緩斜面のこのコースで転倒した唯一のスキーヤーかもしれません。

 

 何度か挑戦してみて、なんとか滑れたときもありましたが、何かが足りません。こぶの中でうまくリズムに乗れていないのです。帰りの車中で考えました。着地をしたときに腰を落とします。そこから立ち上がります。直滑降をしてこぶに入ります。そのときにストックを突く位置を間違えないようにします。それでOKかと思ったらそうではないようです。

 

 着地した後、手とストックはどう動かすのか。まだわかっていないことがありました。どうやら、これがジグソーパズルの最後に残ったピースのようです。来週の大会本番で検証します。