高尺(コチョク)スカイドーム | Stadiums and Arenas

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スポーツ観戦が趣味の筆者が、これまで訪れたスタジアム・アリーナの印象を綴るブログです。

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고척스카이돔/高尺(コチョク)スカイドーム
開場2015年
集客可能人数22258人
両翼・中堅両翼99メートル、中堅122メートル
フェンス高さ4メートル
フィールド人工芝(ベースランニングのスペースだけ土)
アクセス九一(クイル)駅(韓国鉄道公社[KORAIL]・京仁[キョンイル]線)から徒歩約5分
バスの路線多数(下記参照)

(写真は全て、2017年6月24日、KBOリーグのネクセン・ヒーローズLGツインズの試合から)





上:外観
中:内装(内野席から外野を臨む)
下:内装(内野席を臨む)

2017年6月現在で、韓国唯一の屋内野球場。ローマ字表記だと、Gocheok Skydomeとなる。

開場は2015年10月で、非常に新しい施設である。元々は2007年に閉鎖された、韓国におけるアマチュア野球の聖地として知られていた東大門(トンデムン)野球場の代替球場として建設が企画され、屋外球場になる予定だった。だが、ソウル市の高尺地区は住宅地であることから騒音やナイターの光に対する苦情が多く、ソウル市は野球場の上に屋根をかぶせるハーフドーム型の球場にデザイン変更を決定。その後、WBCや五輪野球競技での韓国代表の躍進により野球への注目が高まったことから、設計が再度変更され完全ドーム球場になることが決まった。2009年に建設がスタートし、6年の時間をかけて完成した。

2015年プレミア12の前哨戦として行われた韓国とキューバの親善試合がこけら落としとなったが、試合が見づらいと不評だったうえに、安全上の様々な問題(バックネットが低すぎる、観客席の中間に通路がない、ダグアウトやベンチが客席に埋め込まれているのに屋根がない)がある点が批判され、客席を1000個減らしてこれらを修正した。現在は固定座席が16833個で、試合中には内野ファウルグラウンドに仮設席を展開して22258人が入れる造りになっている。地上4階建てになっていて、上層と下層の間にブース席が設けられている3層構造(上から三番目の写真を参照)。また、地下2層にスポーツジムも併設されている。また、日本のドーム球場と同様で、野球が行われていないときはコンサートなどのイベントでも使われる。

2016年シーズンから、それまで木洞(モクトン)野球場を本拠地にしていたネクセン・ヒーローズがこのスタジアムに移転した。東大門野球場が担っていた「韓国アマチュア野球の聖地」の役割は木洞野球場が担うこととなったが、スカイドームも高校生や大学生の試合を数試合主催する。また、外野の広さが両翼99メートル、中堅122メートルで、国際基準より両翼が少し短いものの許容範囲内ではあるので、野球の国際大会が主催できる。韓国が2017年にWBC1次ラウンドのホスト国になった時にはこの球場が使用された。この大会は初冬から初春の時期に行われるため、会場内の気温を調整できる屋内型のスカイドームに白羽の矢が立った格好である。ちなみに現在は、ソウル施設公団という管理団体によって管理運営されている。この公団は、サッカーのソウル・ワールドカップスタジアムの管理も行う。



開場の際に叩かれただけに、試合が見づらいことも覚悟して見に行ったのだが、全くの杞憂で、総じて試合は見易かったと思う。上層が下層の真上に設置されており、客席が壁のようになっていたので、上の方の席でもグラウンドが俯瞰で見えた。一三塁側の内野席もグラウンドからほとんど高低差がなく、それらの位置で見ても臨場感があるのではないかと思われる。また、天井が白いのでフライが見辛いと選手達や観客から苦情が出たらしいが、東京ドームに慣れている日本の野球ファンならば問題はないはずである。今後韓国の選手やお客さんも慣れていくだろう。

ケチをつけるとすれば、客席に設けられていた手すりが高すぎて、グラウンドを見下ろすとこれが視界に入って邪魔になってしまうこと。そして、座席の前のレッグスペースが狭く、座り心地が窮屈なことか。だが、マイナス部分を補えるぐらい総合的な観戦環境は優れている。

日本だとプロ野球球団の本拠地となると小さくても3万人は入るが、スカイドームは22000人。首都ソウルで新しく作られたスタジアムでこれなので、KBOリーグ(韓国プロ野球)の経済規模は日本よりも一回り小さいと見るべきか。実際、一番上真ん中の写真を見ていただけるとわかるかもしれないが、一三塁側外野寄りの空間と、外野席の両翼の空間に座席がなく、スペースの使い方がもったいない。まあ、行政上これ以上広い面積を取れない理由があったのかもしれないが。また、コンパクトな分内野席から試合が見易いというメリットもある。


少し見づらいが、三塁側にアウェー・LGツインズの応援団が陣取っている

日本のプロ野球だと応援団は外野席だが、韓国では一三塁側外野寄りに陣取る。球団が抱えるチアリーダーや応援団長、マスコットが応援の指揮をとり、それにファンが合わせるという形で球場を盛り上げていく。どちらかというと社会人野球の雰囲気に似ているかもしれない。東京のファンよりははるかにノリがいいので、いい雰囲気を作っていた。ちなみに、私は韓国語が全く分からないが、シンプルな英語であればチケット売り場や売店の店員さんとコミュニケーションが取れた。韓国は日本と同じくらい治安がいいので、なんの心配もなく観戦ができた。

ネクセン・ヒーローズは、1982年創設の三美(サンミ)スーパースターズを前身に持つ。その後、青宝(チョンボ)ピントゥス(1985-7年)、太平洋(テピョンヤン)ドルフィンズ(1987-95年)と親会社が変遷し続けた13年間はタイトルには縁遠い戦いを続けていたが、1996年に韓国財閥の一角、現代(ヒュンダイ)社に買収され現代ユニコーンズになってからは、韓国シリーズ4度の優勝を誇る強豪に成長した。

だが、2008年に親会社が業績上の理由からチームを売却することを決定し、外資系投資企業センテニアルインベストメント社に譲渡され、新球団「ヒーローズ」に。その後メインスポンサーが韓国の民間たばこ会社ウリ・タバコになったことからウリ・ヒーローズと呼ばれるようになった。もっとも、ウリは1シーズンでスポンサーを降りることになったので、2009年はヒーローズとして活動したのだが、2010年にネクセンタイヤがメインスポンサーとなったことからネクセン・ヒーローズになり、現在に至る。2013年以降はリーグの上位に顔を出すことも多くなり、2014年には韓国シリーズ進出も果たした。

ヒーローズの試合は、2017年シーズン現在で外野の一番安い席が1万ウォン(約1000円)、内野の一番安い区画で13000ウォン(約1300円)だった。内野の一番見易い所でも25000ウォン(約2500円)だし、数人で座れるテーブル席も一番高くて85000(約8500円)で見られる。これは週末の試合の値段で、平日の試合はもう少し安くなるので、韓国プロ野球、少なくともヒーローズの試合の料金設定は日本よりも一回り安い印象だ。

高尺スカイドームへの最寄駅はKORAIL(韓国鉄道公社)京仁(キョンイン)線の九一(クイル)駅で、ここから徒歩約5分。九一駅はソウル中心部から約30分なので、交通の便は悪くないが、他に最寄がないことが少々難点である。試合終了まで観戦して帰ると、帰りの電車はかなり混雑するだろう。公式ホームページによると、バスの本数がかなり充実しているようなので、土地勘があるならばこちらもご検討されてもいいかもしれない(詳しくはこちら。韓国語だが、Chromeで翻訳すれば大体の内容は解る)。食事は、売店でとるのがいいだろう。周辺には何もないし、6500ウォン(約650円)出せばお腹いっぱい食べられるので。

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高尺スカイドームの公式ホームページ(韓国語)
ネクセン・ヒーローズの公式ホームページ(韓国語)