Twickenham Stoop(トゥイッケナム・ストゥープ) | Stadiums and Arenas

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スポーツ観戦が趣味の筆者が、これまで訪れたスタジアム・アリーナの印象を綴るブログです。

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Twickenham Stoop(トゥウィッケナム・ストゥープ)
開場1963年
収容可能人数14800人
アクセスTwickenham駅(South West Trains)から徒歩約15分





Harlequin Rugby Football Club(ハーレクインRFC)の本拠地として知られるスタジアムである。ハーレクインRFCは一般的にはハーレクインズと呼ばれることが多く、サポーターの間ではそれをさらに短縮したクインズという愛称でも知られている。日本のメディアでは「ハリクインズ」と表記されることが多い。サポーターから「ストゥープ」と呼称されるこのスタジアムの近くには、ラグビーの聖地として知られるトゥイッケナム・スタジアムがあるが、これとストゥープは全く別のスタジアムなので、混同しないように注意されたい。単にロンドン郊外のトゥウィッケナムという地域にスタジアムがあるご近所さん同士というだけのことである。

ハーレクインズは歴史の非常に長いラグビークラブで、創設は1866年と大政奉還が行われる2年前(!)。サッカーと比べてラグビーは基本ルールの確立が早かったので、1860年代にはクラブチームができ始めており、特に上流階級が多いイングランド南部を中心に発展した。ハーレクインズは、当時は本拠地のあったハンプステッドにちなんでハンプステッドRFCと言う名前だったが、1870年に現行名に改称した。

1906年には、この年完成したトゥウィッケナム・スタジアムに本拠地を移すことになるのだが、チーム専有スタジアムを長年求めていたハーレクインズは、1963年にトゥイッケナム・スタジアムから道路を挟んだ反対側にストゥープを作った。スタジアムの名前は、1901年から1939年までハーレクインズでプレーし、イングランド代表キャップも15獲得したチーム史上屈指の名手Adrian Stoop(エイドリアン・ストゥープ)にちなむ。

ハーレクインズはイングランドだけでなく世界中を見ても屈指の歴史を誇るラグビークラブなのだが、獲得したタイトルは2011-12シーズンのプレミアシップと、1988年と1991年のアングロ・ウェルシュカップだけ。その背景には、他人から与えられる名声ではなく、選手達自身の名誉を重んじるべしと言う風潮が強かったイングランドのラグビー界では、戦後しばらく経つまで大会らしい大会が行われなかったと言う事情があった。カップ戦方式の大会(アングロ・ウェルシュカップ)ができたのは1971年、リーグ戦の開催に至っては1987年と、かなり遅い。一応国内のめぼしいクラブは毎年お互いに試合をして、その成績でその年のクラブチーム間の格付けをすると言うことが慣習となっていたが、レギュレーションがあるわけでもなく、どのようなチームが「めぼしいチーム」と見なされるべきかと言う定義は曖昧だったので新参者には入りにくい空気があったそうである。さすがにここまで厳格だった国は他にそうそうないが、名声より名誉を、と言う風潮は他の国のラグビー界にもあった。

ただ、1980年代後半になるとそのような状況下でファン層や市場が拡大せず、ラグビー界自体が地盤沈下してしまうと危機感を覚えるラグビー関係者が増え、世界中でラグビーを取り巻く環境が変化した。ラグビーのワールドカップが開催され始め、各国で一斉に国内クラブ間の競争を促進させ、プロ化の波が押し寄せる。ハーレクインズは1980年代後半から1990年代前半にかけては強く、地元で行われた1991年ワールドカップで決勝でプレーしたイングランド代表には7人の選手を輩出しているが、その後ややチーム力が伸び悩み、2005年には1度下部リーグへの降格も経験した。現在のチームは一度どん底を経験した後に再び這い上がってきたチームで、前述の通り2011-12シーズンには悲願のリーグ優勝も達成した。







ストゥープでは、ゲートから中に入るとピッチの外周を回って自分の座席を探す、というつくりになっている。試合前やハーフタイムの時には、ピッチのすぐ近くまで近づいて選手が練習する姿を見ても全く問題ない。サッカー場にも客席がグラウンドから近くて臨場感が素晴らしい、と言うところは少なくないが、ここまで客席とグラウンドの区別がない場所は今のところ見たことがない。ただ、むしろそう言う作りのスタジアムなので前の方に座ってしまうと俯瞰で試合が見えなくなるという欠点がある。しかもキックオフ直後とかはまだ席についていないファンの人達が結構前を横切ったりするので、後ろの方の席を取った方が見やすいのではないかと思う(実際、このスタジアムでは前列の席より後列の方が料金が高い)。

ストゥープの最大収容可能人数は14816人で、実は秩父宮よりもはるかに小さい。サッカーでは下部リーグでもプレミアリーグを狙うようなチームであれば20000人以上収容のスタジアムが当たり前な中、ラグビー界では名門ハーレクインズの本拠地でもこんなもので、むしろイングランドでは20000人以上収容可能なスタジアムを所有するラグビーチームの方が少ない。やっぱりファンの規模はサッカーの足元にも及ばず、良くも悪くも、スタジアムに集まるのはとにかくコアなファンが中心だ。ラグビー熱が圧縮された、ファンにとってはたまらない空間がストゥープにはある。

アクセスは、サウスウェスト・レイルのトゥイッケナム駅から徒歩15分ほど。ロンドン中心部から少し距離がある上に、路線が一本しか通っていないので交通の便は微妙なところ。駅から降りてからも、住宅地を歩いてスタジアムに向かわなければならず、迷いやすいロケーションではある。ただ、食事の調達はスタジアム内の売店でできるので、会場についてさえしまえば観戦環境は申し分ない。また、事前に予約することで駐車場も利用できるので、自家用車でのアクセスのハードルも低い。

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トゥイッケナム・ストゥープの紹介(ハーレクインRFC公式ホームページより、英語)