普天間・辺野古、沖縄県の議事録なし 元知事「記録は取っていなかった」 4県政の“決定過程” 残らず
沖縄県の米軍普天間飛行場の返還と辺野古の新基地建設を巡り、大田昌秀、稲嶺恵一、仲井真弘多、翁長雄志の4県政を通じて、知事が出席する庁議や幹部会議を含む会議の議事録やメモが存在しないことが3日、分かった。本紙が県に開示請求し「不存在による不開示」の決定があった。稲嶺氏は取材に「会議で記録は取っていなかった」と認めた上で「真実が将来分からなくなる。記録はしっかり残すべきだ」と自戒を込めた。識者は「経験が組織に蓄積されず、行政として大きな問題がある」と指摘する。(政経部・下地由実子)
本紙は昨年10月、各県政が政策を協議した会議の「議事録や議事メモ」と「関係する一切の文書」を開示請求した。県はいずれの議事録・メモも「存在しない」と回答した。
大田県政下(1990~98年)で、日米両政府が普天間飛行場の全面返還を決めたSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意に関する県の会議について、基地対策課は「業務終了後、文書が廃棄されている。議事録・議事メモは作成したかどうか不明だ」と回答。「課内、部内、三役、知事まで調整した会議、どの記録もなかった」とした。
稲嶺県政(98~2006年)当時の、普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設先決定に関する会議の議事録・メモについて、辺野古新基地建設問題対策課は「該当する資料が不存在のため」と回答した。
仲井真県政(06~14年)当時の、辺野古沖の公有水面埋立申請承認の審議と決定に関する会議に関し、海岸防災課の回答は「議事録等は存在しない」だった。
翁長県政(14~18年)時の埋め立て承認の取り消し、撤回に関する請求にも「議事録等は存在しない」と海岸防災課は回答。「報告であり会議の形は取っていない」と説明した。
稲嶺氏は取材に「現実に主眼を置き過ぎて、記録を残す意識がなかった。反省しないといけない。行政がすることは歴史。記録はあった方がいい」と述べた。本紙は4月21日、仲井真氏が最高顧問を務める自民党県連を通じて文書で取材を依頼したが、3日時点で回答はない。
沖縄返還交渉に関する米国公文書を発見し、日米間の財政密約の存在を証明した沖縄対外問題研究会の我部政明代表は「信じ難いずさんさだ。民主主義には説明責任を伴う。県は条例化も含めて、記録の残し方を見直すべきだ」と述べた。
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