また重い作品を観に行ってしまった…
夏も終わりを告げる9月の末
何だか今年の夏はバタバタで終わってるんだけど、
未だに胸につかえるもやもや感が尾を引いてる感じ
原題「Alone in berlin」
邦題「ヒトラーへの285枚の葉書」
2016年にフランスとドイツ、イギリスの3ヵ国合作映画で、
ペンと葉書を武器にナチス政権に抵抗した夫婦の実話(ハンぺル事件)を基にした、ドイツ人作家の遺作小説「ベルリンに一人死す」を映画化したものなのね
ドイツでは昨年の9月に公開されていて、日本で公開されたのは今年の7月にやっとだから、わたしが観たのは9月末だし、丸々1年遅れての鑑賞になる
単館系だし、そうなると大々的に宣伝もないから観客数も限られちゃうのかな
この映画の原作でもある小説「ベルリンに一人死す」はドイツでは約40年前にドラマ化や映画化されていたんだけど、
つい7~8年前に小説の英語翻訳版が出版されて、イギリスやアメリカでベストセラーになるほど称賛されているの
いやぁこのポスターを見た時に「ヒトラー」とか「ナチス」という言葉は、日本ではタブー視されていると思っていたから、あからさまに文字にもなっているそのポスターに、
「オッパ、これって大丈夫なの?観てもいいやつ?」
って、聞いたなぁ
だってさ~、前に欅坂なんちゃらの衣装騒動があったじゃんか(´゚ω゚):;*.:;ブッ
第二次世界大戦中、ナチス政権下のベルリンで暮らしている、労働者階級のごく普通の夫婦がいて、街ではフランスへの勝利で沸き立っていたんだけど、夫婦の元には一人息子の戦死の知らせが届くの
お隣の家のユダヤ人のおばあさんは、秘密警察官の前で自殺しちゃうし、
そうしたナチスの体制に我慢できなくなっちゃったのね
葉書に怒りのメッセージをしたため、それを街のあちこちにこっそりばらまくという運動をはじめたの
静かな反政治運動ってとこかな
でもそれすらも認めていない世の中だから、たったこれだけのことだけど、もしバレたら処刑されちゃうのよね
これって、ヒトラーを中心とする独裁体制へのささやかな抵抗なんだけど、
いやぁ…わたしなんか当然、当時を知らないわけだから、こうした行動に???だったんだけどね
ヒトラー政権って、大量失業を解消したり高速道路を作ったりして、経済的安定を回復させたりもしているんだけど、
自由主義、社会主義、共産主義者は追放か処刑、○○○人や○○○○者や○○者は生きるに値しないから処刑、だとかさ
アーリア人、特にゲルマン人がこの世で最も優れた民族なんだと言っていて、とにかくヒトラー統治に対して反対する者は情け容赦なく処分されてしまう
なんか、ちょっと…日本も似てるとこあるんじゃない?
しかも勢力が頂点の時で、ナチスの監視下の中、よく不信感や違和感を早々に察知出来たなぁと逆に関心もしたわ
まだ、誰もが洗脳されている中でだよ?
でもね、この事件って実際に1940年から1943年にかけておこっているの
ペンと葉書だけで反ナチス抵抗運動をおこした夫婦は、結局実ることなく逮捕され、ギロチンで処刑されている
夫婦によって書かれた葉書は285枚
市民からの通報で回収された葉書は267枚
通報されなかった葉書はたった18枚…
夫婦のメッセージは、ベルリンの市民へは広がらなかったってことなのよね
劇中、激しい戦闘シーンとか○○○人虐殺のシーンとか、そうしたものは一切出てこなくて、
恐怖政治と密告社会に引きずり込まれながら、苦悩しながら、従いながら、逃れることの出来ない世界でただただ夫婦の戦争を憎む姿が描かれているの
それが非情に切ない
夫婦が住むアパートには、ナチス党員や密告者、ユダヤ人が住んでいて、外からはいつも監視されていて、当時のドイツ社会の縮図の後ろには大きな権力があって、そうした政治的な側面の中で、
葉書を書き続けることだけが唯一の魂の解放だとしたら、なんて人間って無力なんだろう
強大な権力の下でのペンと葉書だけの武器って、ほぼ絶望的だっただろうに
ナチスが支配するベルリンで、人々の良識や正義なんてものは全然通用しない中、秘密警察のひとりは、組織の犠牲者ともいえる
夫婦を冷徹に追い詰めていた警部
ナチスドイツの非道が無謀であることは、今からしてみればわかることなのに、当時は誰もが気付かなかったのね
この警部も複雑な役回りで、そうした組織に巻き込まれていったんでしょうね
個人の思想なんて、組織の中では全く無意味なことだったんだ
この事件の解決に難航していた時に、圧力をかけられた彼は、誤認逮捕された男を射殺してしまうの
自分の信念や価値観なんてものも、人間らしい部分も、この社会では捨てざるを得なかったのよね
回収された267枚の葉書すべてに目を通した唯一の人物でもある警部は、この事件の結末を見届け、最後に拳銃自殺をしている
それから2年後の1945年4月30日早朝、ヒトラーはベルリンの総統地下要塞で拳銃自殺
遺言どおり遺体は裏庭でガソリンがかけられ焼却
5月7日無条件降伏し、国家社会主義ドイツ労働者党は崩壊した