2011年1月の読書メーター
読んだ本の数:35冊
読んだページ数:11813ページ
■音もなく少女は (文春文庫)
☆6 女性の哀しくも虚しくも美しく強い話。流れは単調だが、主要な女性たちが読ませてくれる。魂がすり減っていくかのようだが、そこから強さもにじみ出ているようにも見えた。聾者に対する差別や嫌悪が存在するというのはわかってはいたが見せられるとキツイ。聾の子供に対しての父と母の態度の差は厭だ。娘と母とその友達の女性の絆に救われる。そして、一番の魅力は、主人公の聾の少女が自分の境遇を恨みながらも、持った障害とともに歩む姿だと思う。ちなみにみんな邦題について述べてるけど、いっそ『Womam』でよかったかもね。
読了日:01月01日 著者:ボストン テラン
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■これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
☆7 正義とはーーというか倫理とは何かを問うてくるような一冊だった。サンデルは答えを教えてくれるのではなくて、考え方や考えるキッカケを与えてくれる。ベンサムやカントの哲学を理解するのにも役立つ。どういう理由でその行動を選択するのか、そこにはどんな道徳があるのか、誰が、何が選択させているのか、これらは考えれば考えるほどわからない。そこまで考えたら飯も食えないだろってとこまで思考を深める。色んな事例にも当てはめることにより、あらゆるところ(喧嘩や戦争や社会問題)に潜んでいることもわかる。みな考えるべき問題。
読了日:01月02日 著者:マイケル・サンデル,Michael J. Sandel
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■再会
☆5 うーん。なかなか盛り込まれていてつまらなくはないんだけど、少しずつ足りない感じ。やっぱり設定の甘さや登場人物の薄さが気になるかも。警察いろいろゆるいでしょ…。すごく考えていい感じに進めたいのはわかるし、その展開はいい仕上がりだったと思うけど、話のつながりとか人のつながりに違和感があった。伏線もまあそんなもんかなという感じだった。でも、最後の一言はかなりよかった。物語全てを表したかのようなこの一言には感心した。
読了日:01月02日 著者:横関 大
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■マボロシの鳥
☆7 いや、これはなかなか面白い。太田さんには一つの軸があるが、一つ一つの話には違った傾向も見える。そこらへんから彼の読書趣味もみえてくる。どれも完成度はそんなに高くないと思う。でも、何か持ってる、と感じさせてくれるような欠片があるようだ。一見、不条理で皮肉的な物語だが、必ずどこかに希望がのぞいている。太田さんは世界を冷たく皮肉的に見ているが、どうしようもなくその世界が好きで、美しいと思っているんだろう。これからもそんな世界を文章にして欲しい。この醜くも美しい世界を。
読了日:01月03日 著者:太田 光
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■ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
☆9 混沌とした世界に傷ついて、多くの命を失って疲れ果てた人々が作り上げた、命を大事にする理想的な優しい世界。人間の本質とは、自律とは、そんなことを考えさせられる。サンデルの『これからの「正義」~』にも取り上げられていたテーマであるが、それに負けないくらいの思考的深さがある。むしろ合わせて読むとより楽しめる。完全な機能を持った福祉社会で、人々もひたすら優しくなっている。しかし、そこにある優しさとは、「傷つきたくないから優しくする」というものでしかなく、それ以外の感情を選択する自由のない優しさだ。→
読了日:01月06日 著者:伊藤 計劃
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■隠し剣秋風抄 (文春文庫)
☆6 短編とは思えない読後感がある。剣の話ではあるけれども、人が印象に残る。昔ながらの、単純だが軸のある人ばかり出てくる。正しく清らかな心持ちばかりわけではないが、それらはすべて純粋な気持ちに見える。両『隠し剣』を読んだが、『蝉しぐれ』が良かった分、長編をやっぱり読んでみたい。でも作品が多いからどれを読めばいいのかわからない(汗)。どれがおすすめなんでしょう。それにしてもこの一冊の必殺技には知ってるような名前が多かった。ここから皆さん拝借しているのだろうか?
読了日:01月06日 著者:藤沢 周平
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■屍(し)の命題 (ミステリー・リーグ)
☆7 『そして誰もいなくなった』形式の犯人としてはぴったりだと思う。でもこれってどっかで見た気も…。とはいえ十分楽しめた。書記として残った事件、というのをしっかりいかしているし、細かい伏線など、王道の本格と言ってもいいかも。ただ、死体発見描写のあっさりさには残念かな。あと、隠してある情報――動機が多いので、フェアとは言い難い。まあプロットの面白さを追求するため、「怪物」の正体も含めて、この作品の狙いとしては正しい書き方かな。そこらへんの小説論に言及したとこもあるので、それも含めて計算された作品なんだろう。
読了日:01月07日 著者:門前典之
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■花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)
☆8 最近になってノベルスを読むことが増えてきたけど、意欲作が多くて楽しいな。この作品も、大半を占める作中作にカタカナ表示を一切使わないという興味深い形式をとっている。そしてそれが気に入った。無理矢理当て字をつけて、そこにカタカナのルビをつけていて、回りくどいと思われるかもしれないが、それがいい。読みやすさは意外とあるし、なによりページ全体の字面がいい。昔から日本文学は漢字や言葉の工夫で滋味を出してきた。そういった古き良き文学を感じさせてくれた。ミステリはおまけだが、話が魅力的だったから他も読んでみたい。
読了日:01月07日 著者:深水 黎一郎
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■卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
☆8 戦争の中に青春を落とし込んだ感じの話だった。とにかくレフ(主人公)とコーリャの掛け合いが面白かったり、レフの葛藤に感情移入したりして読ませる。レフがコーリャとの友情をはぐくんだり、恋に悩んだり、コーリャは発情しまくっていたりして、戦争の中にも青春はあるというのを感じた。二人が動き始めて、コーリャの元彼女が出てきたあたりからはノンストップな面白さ。しっかり世界に入り込ませてくれるから最後には感動もする。読後、そういえば単に卵を手に入れるためだけ(一応そこに命はかかっている)の出来事ということに苦笑い。
読了日:01月08日 著者:デイヴィッド・ベニオフ
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■烏有此譚
☆6 これが円城ワールドか!?こんなのは著者にしか作れない気がする。そして「本」だからこそ出来ているとも思う。その二つを感じさせてくれるだけでも一流と言えるだろう。とはいえ、作品は理解しきれなかったと思う。上段の小説と同じくらい下段の注釈にページを割いている構成に面食らって、どう読めばいいのか分からないうちに、あれよあれよと終わってしまった。小説の内容なんか全然入ってこなかった。注釈はむしろエッセイになっていて面白い。本文よりも注釈の方が面白いという稀有な一冊。
読了日:01月08日 著者:円城 塔
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■天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)
☆8 けっこう好きな系統だ。ある意味で三部構成になっている気がする。序盤は青春と音楽全開だし、中盤からはしっかりとしたミステリになっていて、終盤はオカルト風になっている感じ。文体とかは全然気にするほどではなかったし、むしろ、こういう衒学的でけれん味ある文章は好きな部類だから面白い。肝心のミステリ部分もわかりやすく、かつレベルの高いもので、推理合戦もあるので読み応え抜群だった。ただ、男子も女子も強い個性があるんだけど、どうも似ていた気がする。まあこれは、他の作品も絶対読みたい。
読了日:01月10日 著者:古野 まほろ
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■厭犬伝
☆7 『鴨川ホルモー』みたいな感じも思わせるファンタジーだったけど、こちらの方が背景設定に即したリアリズムがあったので、雰囲気がいい感じになっていた。ただ、ファンタジーにしてはその世界自体が見えてこなくて、主に「合」という戦いに目がいってしまう。その分「合」のところ――特に決着戦は面白かった。主人公だけでなく、敵や仲間もいい個性があったのはよかったけど、それぞれに深さはなかったかな。だからけっこうあっさり風味。著者の言葉で「実は犬が苦手」とある。つまり、一応タイトルに二重の意味があるのかな。笑
読了日:01月10日 著者:弘也 英明
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■アダマースの饗宴
☆6 意外と楽しめた。まあなんだか携帯小説のような感じは否めないけど、ストーリーテーリングはなかなかいいように感じた。瑠璃との絡みもよく伝わってきた。ただ、主人公の女性自体の特徴がなんだか定まらないようにも感じた。あと、「ゲーム」の連呼にはげんなりさせられる。プロットは、王道ながらスピード感のあるもので読みやすかったと思うので、もう少し書き込みをしていっても良かったように思う。特に、この金融ゲームはいまいちピンとこない。金額が舞台的には微妙。そして、このタイトルはなんだか苦手かも。
読了日:01月12日 著者:牧村 一人
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■ロスト・トレイン
☆7 軽く、ファンタジーにもミステリにもなっているけど、それ以外の要素もよく読ませてくれるいい作品だった。人物の設定が少しずつ唐突ではあったけれども、深みがないわけではない。行動しながらも変わっていく心境と、その後の彼らの生き方に思いをはせることができる。現実は醜い、けれども捨てたもんではないと思う。それでも夢の世界に旅立ちたい気持ちもわかるなー。私は、このトレインに乗って現実に降りてこられるのか、夢の世界に逃げていくのか、どうなんだろう。でも、この余韻のような責任を持つのは辛そうだ。
読了日:01月12日 著者:中村 弦
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■純白の夜 (角川文庫)
☆6 不倫の物語だけど、それをどうしようもない悲劇に昇華させたような感じに思えた。少しずつ三島が顔を出すような、突き放したような、三人称視点だったので心情の機微がうかがえる。そして、その心情がみんな揺れに揺れる。誰が何を目指しているのか、どんな価値観なのか、なかなか把握できなくて困った。でも、尽きるところは自負と欲望のせめぎ合いなのかな。そして衝撃のラストに、最後のあのセリフがまた効いた。そういえば、タイトルが結構皮肉な気がする。
読了日:01月13日 著者:三島 由紀夫
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■キョウカンカク (講談社ノベルス)
☆5 共感覚保有者の美少女探偵とか不気味な雰囲気の刑事とか語り手の少年の友達らへんのキャラはとても良かったと思う。ただ、語り手である少年は鼻につき過ぎて厭だった。ミステリとしても悪くないと思うんだけど、表とか作って本格風にしたのはアンバランスに感じた。犯人とかはもう大体わかってしまうんだから、もっとサスペンスを押していってほしかった。追加人物と事件のいかんによってはかなり面白くなりそう。それにしても、全員、頭が少し弱すぎるような・・・
読了日:01月13日 著者:天祢 涼
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■七回死んだ男 (講談社文庫)
☆9 別に避けていたわけではないけど読みそびれていた西澤作品。こんなに面白いなんて。今までもったいないことしてたなあ。変格ミステリっていうのが変な先入観持たしていたけど、予想と違う面白さ。同じ日が繰り返されてしまうというSF設定を存分に活かして、ミステリと物語とが飛躍的に魅力的になっている。なんか意外と真相は簡単かな。とも思ったけど、最後には「ああ。なるほど」と感心してしまう仕掛けもあった。そして、何回も同じ日が、少し改変されてみられるおかげで、人物の個性がとても立体的になっていた。これはいい設定。
読了日:01月14日 著者:西澤 保彦
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■少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)
☆5 狂っている。誰も彼も狂っている。一般市民の声や描写がほとんどなくて主人公とその周りしかないので、主人公のうちに渦巻く静かな狂気を感じる。しかし、読み進めていくほどに思うのだ。彼らは一人も狂ってなんかいないのではないかと。行動はひどく暴力的で不条理なのだが、心の動きは普通のそれと変わらないように感じた。勢いだけで、一気に読ませるが、意外と文章は好き。荒削りだが、その淡々とした文章には幻想的な面も感じた。どこにも救いはないけど、救われないからこそ、這いながらも生きていけるのかもしれない。
読了日:01月15日 著者:岡崎 隼人
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■夏子の冒険 (角川文庫)
☆8 楽しい三島だった。夏子がとにかく面白い。何にも縛られない元気な女性、かと思ったらなんだか小難しく考え込んだりしていて、二十歳だけどまだまだ不安定な思春期って感じでかわいい。そんな彼女に振り回される母親たちは呆れ果てているけど、実は彼女たちもすごく自由でマイペースだと思う。もう、この家族は奔放過ぎて笑える。夏子が恋して冒険して、成長していくのかと思いきや、結局夏子は夏子のままで終わるのがある意味で爽快。「ほんとにこの子ったらもう・・・」と苦笑いしてしまうが、やっぱりかわいいんだなあ。
読了日:01月17日 著者:三島 由紀夫
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■ふがいない僕は空を見た
☆9 人生ってうまくいかないんだよな。何か持っていると思っていても肝心な時にどうすればいいのか分からなくなる。一編目は「ああ、R18文学賞だな」と思う感じだったけど、読み進めていくほどに滋味のある物語が見えてきた。連作短編の物語でそれぞれに何か――主に恋愛の悩みをもった人が出てくる。自分の感情どおりに愛を求めているのに何かうまくいかない。どうして他人の恋愛はバカに見えるのに、みんな、そんな恋愛に夢中になってしまうんだろう。いろいろとセックスの話が出てくる。そして最後に助産婦の話。どんなセックスだって命の→
読了日:01月17日 著者:窪 美澄
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■魔術王事件 上 (講談社文庫 に 22-20)
☆6 今作は、より飾り気たっぷりの殺人演出がなされていて、もはや苦笑いしてしまうほどだった。目立ち好きで神出鬼没な殺人鬼に振り回される警察は乱歩小説のようだった。最初のとかを含め、ミステリとしてはわかりやすいのもあったけど、蘭子シリーズなら斜め上の結末が待っていると思うので楽しみ。とにかく常にトップスピードで事件は起こる。乱歩を読んでなかったらもっと新鮮だったかも。特に、マジック会場の場面はかなり印象的で恐ろしい殺人演出だった。とにかく早く蘭子に出てきてほしいな。
読了日:01月19日 著者:二階堂 黎人
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■魔術王事件 下 (講談社文庫 に 22-21)
☆7 読み終わってみると二階堂さんのプロット作りに舌を巻く。パフォーマンス満載の描写に計算高い仕掛けが共存していて感心させられる。『エドウィン・ドルードの謎』を読みたくなった。黎人が最初かっこよくて嬉しくなったけど、やっぱり蘭子に圧倒されていて可哀そう。今回は蘭子の推理は説明みたいに羅列されていたからか、なんだかあっけない終わり方に感じた。でも少年の隠し方には驚愕で、さすがの一言。今作と『双面獣』は同時進行していたらしく、そちらの事件の方が面白そうなので期待して次読もう。
読了日:01月20日 著者:二階堂 黎人
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■ミミズクと夜の王 (電撃文庫)
☆6 綺麗な話だなあ。雰囲気もいいし、夜とか月が好きになる。ミミズクのしゃべり方も意外とつぼにはまって、特に前半のミミズクがいい。話自体は平易で淡々と進むけど、登場人物の温かさに惹きつけられて一気に読める。本当にみんないい人たちだ。これだけ好人物だらけなのに、きっちりと起承転結つけられているのが魅力的で、この作品のいいところだと思う。ミミズクと夜の王、彼らを傷つけるのは人間の作り出した環境だけど、癒すのもまた人間だった。何かが残るわけでもないかもしれないけど、読んで良かったと思える小説。
読了日:01月20日 著者:紅玉 いづき
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■琅邪の鬼 (講談社ノベルス)
☆8 中国の秦時代を舞台としているミステリだが、いい意味でも悪い意味でもそんな感じにさせない読みやすさ。オカルト要素を謎に組み込むのは好きだから退屈せずに読めたし、徐福塾の面々が個性的で印象深く残る。なんとなーくわかる真相だけど、四方八方から謎が食い込んでいるから、それがほどけた時には「おー」とうなった。まだ盛り上げの弱さとか粗い文章とかもある気がするけど、膨らまし方に著者の力を感じた。もっと史実とか豆知識とかあっても良かったかもしれない。とりあえず次回作も読みます。
読了日:01月22日 著者:丸山 天寿
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■幸福号出帆 (角川文庫)
☆7 意外と、兄弟愛は直接的には語られていなくて、間接的に――兄弟に恋し、破れた人たちから伝わってきたと思う。三津子の心のうちの「ここでこう言ってくれれば」という声のようなものに妙な説得力があるのはさすが。敏夫は結局極端な何かになれなくて地を行くばかりで、最後にも幸福号で真実と真の幸福から遠ざかってしまう。しかし、兄弟愛の迷走が続くこの人生が似合っている。結局、劇的な何かを期待していた兄弟の喜劇なのかもしれない。
読了日:01月24日 著者:三島 由紀夫
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■輝く夜 (講談社文庫)
☆7 辛い日々を送る人たちへの希望と奇跡の物語。しくじった!ちゃんとクリスマスに読めば良かった・・・。5話全部シンプルだけど、楽しみやすくて心がほんのり温かくなる小話だった。百田さんは三人称書きだから情報を伝えるのがすごくうまい。すんなりと世界に入っていけるし、ご都合主義も「こんな素敵なことがあったらいいな」という気分にさせてくれる。そして、ちゃんと何を伝えたいのかも伝わってくる。短編の構成力にも力がうかがえる。あと、解説で語られる百田さん自身が魅力的すぎる。会って話を聞いてみたい。
読了日:01月24日 著者:百田 尚樹
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■江利子と絶対〈本谷有希子文学大全集〉 (講談社文庫)
☆7 デビュー作か。文章に好不調があって荒々しいけど、ちょくちょくツボにはまる。この人の感性はなんか好きだなあ。自分のことは棚にあげといて、偉そうに世界のことを語っちゃうあたりも、ムズムズするけどいい。ほんとに本谷さんの創るキャラは魅力的だ。セリフ回しも面白いし、だからどんな話でも面白く感じる。そして舞台作家であるだけに、物語の緩急がうまい。でも短編だからか、そこに著者の味は感じられなかった。エンタメ系も読んでみたいけど、表題作のような作品をもっと読みたい。まだ未読はあるから楽しみ。
読了日:01月25日 著者:本谷 有希子
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■謎解きはディナーのあとで
☆7 漫画レベルのミステリ。いや、いい意味で。形式が、令嬢刑事が執事に事件の話を伝えて解決してもらう安楽椅子探偵だからか、読者も客観的に事件をみられる。だから漫画のように、キャラクターもみえてくる。謎自体は確かに難しくないーーむしろ初歩的だけど、会話やキャラが面白いから楽しい。漫画のようなミステリなので、ミステリに親しみのない人でも、ミステリ好きでも楽しめる。でも、執事がいないとつまらないから、テンポのいい短編じゃないと辛そう。できるなら長編で続編を読んで見たいけど、このままでは無理か。連作短編に期待。
読了日:01月26日 著者:東川 篤哉
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■狐笛のかなた (新潮文庫)
☆7 上橋さんのファンタジーに年齢制限はない。なかなかひねった世界観だけど、読み進めるとだんだん違和感はなくなっていき、いつの間にか夢中になっている。信じたいけど、信じるにはリスクが高いから疑ってしまう。恨んでしまう。憎んでしまう。その根を断ち切ったのは、愛だったと思う。きれいなファンタジーだけど、人間のひずみやどうしようもないところがよく見える。これでも人間がいいのか?人間を信じられるのか?と問いかけてくるよう。でも、希望はどこかにあるという光も見えた。その光はあまりにも儚げに見えたけど。
読了日:01月27日 著者:上橋 菜穂子
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■誤読された万葉集 (新潮新書)
☆5 レポートのために読んでみたけど、なかなか読める。全然万葉集を知らなくても、文学論や解説を読むだけでも面白かったりする。でも、こういうのにありがちな作者の自己中感は否めない。しょうがないとはいえ、推論に推論を重ねたのちに最後だけ断言されても困る。著者の言葉もそうだが、最後まで謙虚に臨んでほしい。それでないならもっととんでもない論理とかを見せてほしい。歴史などの解釈はいかようにもなるというのは面白いが、そこに作者のミスや記述者のミスはないと、棚にあげられるのか。一つ二つの証拠では分からないと思った。
読了日:01月27日 著者:古橋 信孝
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■猫物語 (白) (講談社BOX)
☆6 相変わらず、こんな自由に描いてるのになんで軸はぶれないんだろう、と感心する。自由に描きすぎてキャラが暴走しているけど、今回で言いたいことはよくわかる。羽川の脳の働きは理想の構造と言えるけど、人間としてはいびつで間違っている。喜怒哀楽、すべての感情に捨てていいものはない。辛いことにも向き合って生きていかなきゃならない。猫が最後に本当に猫になったのには不覚にも感動した。そういえば、アララギ君がほとんど出てこなかったけど、出てきたときは無駄にかっこよかった。
読了日:01月27日 著者:西尾 維新
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■でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)
☆9 読み終わった後に唖然とした――と書くことはよくあるが、今作では、常に唖然としながら読んでいたというべきだ。まさに筆舌に尽くしがたい思いだ。ノンフィクションであることは分かっているのに、貫井さんの冤罪小説を読んでいるようで、こんなことが現実にあったらどうしようと思ってしまった。マスコミの刹那的で熱情的な報道体制は分かっているが、当事者としてはこんなに無責任なことはないだろう。もちろん、本作だって伝達によるもので、多くの主観からの取捨選択された情報だが、そういった公平な理解をした上で酷い冤罪だと思う。→
読了日:01月27日 著者:福田 ますみ
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■祭り囃子がきこえる
☆6 さらっと読める。川上さんの作品は短編だと、ちょっと読みごたえがないかも。でも祭りという場で起こる、ちょっと後悔の混じる青春がほろ苦くていい。祭りは人を高揚させるし、いろんなものが舞い込んでくる。だからここで起こる軽い奇跡は本当にあったかのよう。どの人たちも何か取り戻したい過去があり、祭りでそれに近づく。でも彼らはもう違う道を歩んでいて、違う幸せを持っている。人は、いろんな幸せの可能性を持っているけど、選択して一つしか残らないんだな、と思った。祭りは不思議な交差点になっている。
読了日:01月28日 著者:川上 健一
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■民宿雪国
☆8 計算されたアンバランス。聞いていた通り面白い構成で、読み始めと終わりで印象ががらりと――しかも何回か変わる。しかし、そこには狙いがあるしその点では非常に均整の取れた物語だったと思う。一人の男のねじれていく気持ちと純粋な気持ち。在日というテーマを描いているが、そこには人間のらしさが詰まっていた。いい意味でも悪い意味でも人間臭い。作品中でいきなり展開のギアが上がるところが多々あるが、そのきっかけが主に登場人物の行動だから、文章なのに映像を見ているような唐突感と疾走感があり、何とも言えない滋味を感じた。
読了日:01月31日 著者:樋口毅宏
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■シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)
☆8 面白い!けどそれだけではない。今回はみんなにスポットが当たっていて、その一つ一つのエチュードが面白い。みんなが少しずつ成長していくのがわかるし、誰一人として見逃せない。また、ただフィクションに落とし込むのではなくて、演劇の現実や社会への不安も盛り込んでいる。だからこそ、この一瞬の輝きがより魅力的に映るんだと思う。社会人が夢を追うことは学生とは別次元の意味を持っている。人生には甘いところも苦いところもある。有川作品はそこを教えてくれる。次回は絶対ヤバイなー。なんとなく想像できるからこそ早く読みたい→
読了日:01月31日 著者:有川 浩
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▼読書メーター
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