2011年1月の読書メーター
読んだ本の数:35冊
読んだページ数:11813ページ

■音もなく少女は (文春文庫)
☆6 女性の哀しくも虚しくも美しく強い話。流れは単調だが、主要な女性たちが読ませてくれる。魂がすり減っていくかのようだが、そこから強さもにじみ出ているようにも見えた。聾者に対する差別や嫌悪が存在するというのはわかってはいたが見せられるとキツイ。聾の子供に対しての父と母の態度の差は厭だ。娘と母とその友達の女性の絆に救われる。そして、一番の魅力は、主人公の聾の少女が自分の境遇を恨みながらも、持った障害とともに歩む姿だと思う。ちなみにみんな邦題について述べてるけど、いっそ『Womam』でよかったかもね。
読了日:01月01日 著者:ボストン テラン
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■これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
☆7 正義とはーーというか倫理とは何かを問うてくるような一冊だった。サンデルは答えを教えてくれるのではなくて、考え方や考えるキッカケを与えてくれる。ベンサムやカントの哲学を理解するのにも役立つ。どういう理由でその行動を選択するのか、そこにはどんな道徳があるのか、誰が、何が選択させているのか、これらは考えれば考えるほどわからない。そこまで考えたら飯も食えないだろってとこまで思考を深める。色んな事例にも当てはめることにより、あらゆるところ(喧嘩や戦争や社会問題)に潜んでいることもわかる。みな考えるべき問題。
読了日:01月02日 著者:マイケル・サンデル,Michael J. Sandel
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■再会
☆5 うーん。なかなか盛り込まれていてつまらなくはないんだけど、少しずつ足りない感じ。やっぱり設定の甘さや登場人物の薄さが気になるかも。警察いろいろゆるいでしょ…。すごく考えていい感じに進めたいのはわかるし、その展開はいい仕上がりだったと思うけど、話のつながりとか人のつながりに違和感があった。伏線もまあそんなもんかなという感じだった。でも、最後の一言はかなりよかった。物語全てを表したかのようなこの一言には感心した。
読了日:01月02日 著者:横関 大
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■マボロシの鳥
☆7 いや、これはなかなか面白い。太田さんには一つの軸があるが、一つ一つの話には違った傾向も見える。そこらへんから彼の読書趣味もみえてくる。どれも完成度はそんなに高くないと思う。でも、何か持ってる、と感じさせてくれるような欠片があるようだ。一見、不条理で皮肉的な物語だが、必ずどこかに希望がのぞいている。太田さんは世界を冷たく皮肉的に見ているが、どうしようもなくその世界が好きで、美しいと思っているんだろう。これからもそんな世界を文章にして欲しい。この醜くも美しい世界を。
読了日:01月03日 著者:太田 光
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■ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
☆9 混沌とした世界に傷ついて、多くの命を失って疲れ果てた人々が作り上げた、命を大事にする理想的な優しい世界。人間の本質とは、自律とは、そんなことを考えさせられる。サンデルの『これからの「正義」~』にも取り上げられていたテーマであるが、それに負けないくらいの思考的深さがある。むしろ合わせて読むとより楽しめる。完全な機能を持った福祉社会で、人々もひたすら優しくなっている。しかし、そこにある優しさとは、「傷つきたくないから優しくする」というものでしかなく、それ以外の感情を選択する自由のない優しさだ。→
読了日:01月06日 著者:伊藤 計劃
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■隠し剣秋風抄 (文春文庫)
☆6 短編とは思えない読後感がある。剣の話ではあるけれども、人が印象に残る。昔ながらの、単純だが軸のある人ばかり出てくる。正しく清らかな心持ちばかりわけではないが、それらはすべて純粋な気持ちに見える。両『隠し剣』を読んだが、『蝉しぐれ』が良かった分、長編をやっぱり読んでみたい。でも作品が多いからどれを読めばいいのかわからない(汗)。どれがおすすめなんでしょう。それにしてもこの一冊の必殺技には知ってるような名前が多かった。ここから皆さん拝借しているのだろうか?
読了日:01月06日 著者:藤沢 周平
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■屍(し)の命題 (ミステリー・リーグ)
☆7 『そして誰もいなくなった』形式の犯人としてはぴったりだと思う。でもこれってどっかで見た気も…。とはいえ十分楽しめた。書記として残った事件、というのをしっかりいかしているし、細かい伏線など、王道の本格と言ってもいいかも。ただ、死体発見描写のあっさりさには残念かな。あと、隠してある情報――動機が多いので、フェアとは言い難い。まあプロットの面白さを追求するため、「怪物」の正体も含めて、この作品の狙いとしては正しい書き方かな。そこらへんの小説論に言及したとこもあるので、それも含めて計算された作品なんだろう。
読了日:01月07日 著者:門前典之
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■花窗玻璃 シャガールの黙示 (講談社ノベルス)
☆8 最近になってノベルスを読むことが増えてきたけど、意欲作が多くて楽しいな。この作品も、大半を占める作中作にカタカナ表示を一切使わないという興味深い形式をとっている。そしてそれが気に入った。無理矢理当て字をつけて、そこにカタカナのルビをつけていて、回りくどいと思われるかもしれないが、それがいい。読みやすさは意外とあるし、なによりページ全体の字面がいい。昔から日本文学は漢字や言葉の工夫で滋味を出してきた。そういった古き良き文学を感じさせてくれた。ミステリはおまけだが、話が魅力的だったから他も読んでみたい。
読了日:01月07日 著者:深水 黎一郎
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■卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
☆8 戦争の中に青春を落とし込んだ感じの話だった。とにかくレフ(主人公)とコーリャの掛け合いが面白かったり、レフの葛藤に感情移入したりして読ませる。レフがコーリャとの友情をはぐくんだり、恋に悩んだり、コーリャは発情しまくっていたりして、戦争の中にも青春はあるというのを感じた。二人が動き始めて、コーリャの元彼女が出てきたあたりからはノンストップな面白さ。しっかり世界に入り込ませてくれるから最後には感動もする。読後、そういえば単に卵を手に入れるためだけ(一応そこに命はかかっている)の出来事ということに苦笑い。
読了日:01月08日 著者:デイヴィッド・ベニオフ
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■烏有此譚
☆6 これが円城ワールドか!?こんなのは著者にしか作れない気がする。そして「本」だからこそ出来ているとも思う。その二つを感じさせてくれるだけでも一流と言えるだろう。とはいえ、作品は理解しきれなかったと思う。上段の小説と同じくらい下段の注釈にページを割いている構成に面食らって、どう読めばいいのか分からないうちに、あれよあれよと終わってしまった。小説の内容なんか全然入ってこなかった。注釈はむしろエッセイになっていて面白い。本文よりも注釈の方が面白いという稀有な一冊。
読了日:01月08日 著者:円城 塔
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■天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)
☆8 けっこう好きな系統だ。ある意味で三部構成になっている気がする。序盤は青春と音楽全開だし、中盤からはしっかりとしたミステリになっていて、終盤はオカルト風になっている感じ。文体とかは全然気にするほどではなかったし、むしろ、こういう衒学的でけれん味ある文章は好きな部類だから面白い。肝心のミステリ部分もわかりやすく、かつレベルの高いもので、推理合戦もあるので読み応え抜群だった。ただ、男子も女子も強い個性があるんだけど、どうも似ていた気がする。まあこれは、他の作品も絶対読みたい。
読了日:01月10日 著者:古野 まほろ
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■厭犬伝
☆7 『鴨川ホルモー』みたいな感じも思わせるファンタジーだったけど、こちらの方が背景設定に即したリアリズムがあったので、雰囲気がいい感じになっていた。ただ、ファンタジーにしてはその世界自体が見えてこなくて、主に「合」という戦いに目がいってしまう。その分「合」のところ――特に決着戦は面白かった。主人公だけでなく、敵や仲間もいい個性があったのはよかったけど、それぞれに深さはなかったかな。だからけっこうあっさり風味。著者の言葉で「実は犬が苦手」とある。つまり、一応タイトルに二重の意味があるのかな。笑
読了日:01月10日 著者:弘也 英明
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■アダマースの饗宴
☆6 意外と楽しめた。まあなんだか携帯小説のような感じは否めないけど、ストーリーテーリングはなかなかいいように感じた。瑠璃との絡みもよく伝わってきた。ただ、主人公の女性自体の特徴がなんだか定まらないようにも感じた。あと、「ゲーム」の連呼にはげんなりさせられる。プロットは、王道ながらスピード感のあるもので読みやすかったと思うので、もう少し書き込みをしていっても良かったように思う。特に、この金融ゲームはいまいちピンとこない。金額が舞台的には微妙。そして、このタイトルはなんだか苦手かも。
読了日:01月12日 著者:牧村 一人
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■ロスト・トレイン
☆7 軽く、ファンタジーにもミステリにもなっているけど、それ以外の要素もよく読ませてくれるいい作品だった。人物の設定が少しずつ唐突ではあったけれども、深みがないわけではない。行動しながらも変わっていく心境と、その後の彼らの生き方に思いをはせることができる。現実は醜い、けれども捨てたもんではないと思う。それでも夢の世界に旅立ちたい気持ちもわかるなー。私は、このトレインに乗って現実に降りてこられるのか、夢の世界に逃げていくのか、どうなんだろう。でも、この余韻のような責任を持つのは辛そうだ。
読了日:01月12日 著者:中村 弦
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■純白の夜 (角川文庫)
☆6 不倫の物語だけど、それをどうしようもない悲劇に昇華させたような感じに思えた。少しずつ三島が顔を出すような、突き放したような、三人称視点だったので心情の機微がうかがえる。そして、その心情がみんな揺れに揺れる。誰が何を目指しているのか、どんな価値観なのか、なかなか把握できなくて困った。でも、尽きるところは自負と欲望のせめぎ合いなのかな。そして衝撃のラストに、最後のあのセリフがまた効いた。そういえば、タイトルが結構皮肉な気がする。
読了日:01月13日 著者:三島 由紀夫
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■キョウカンカク (講談社ノベルス)
☆5 共感覚保有者の美少女探偵とか不気味な雰囲気の刑事とか語り手の少年の友達らへんのキャラはとても良かったと思う。ただ、語り手である少年は鼻につき過ぎて厭だった。ミステリとしても悪くないと思うんだけど、表とか作って本格風にしたのはアンバランスに感じた。犯人とかはもう大体わかってしまうんだから、もっとサスペンスを押していってほしかった。追加人物と事件のいかんによってはかなり面白くなりそう。それにしても、全員、頭が少し弱すぎるような・・・
読了日:01月13日 著者:天祢 涼
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■七回死んだ男 (講談社文庫)
☆9 別に避けていたわけではないけど読みそびれていた西澤作品。こんなに面白いなんて。今までもったいないことしてたなあ。変格ミステリっていうのが変な先入観持たしていたけど、予想と違う面白さ。同じ日が繰り返されてしまうというSF設定を存分に活かして、ミステリと物語とが飛躍的に魅力的になっている。なんか意外と真相は簡単かな。とも思ったけど、最後には「ああ。なるほど」と感心してしまう仕掛けもあった。そして、何回も同じ日が、少し改変されてみられるおかげで、人物の個性がとても立体的になっていた。これはいい設定。
読了日:01月14日 著者:西澤 保彦
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■少女は踊る暗い腹の中踊る (講談社ノベルス)
☆5 狂っている。誰も彼も狂っている。一般市民の声や描写がほとんどなくて主人公とその周りしかないので、主人公のうちに渦巻く静かな狂気を感じる。しかし、読み進めていくほどに思うのだ。彼らは一人も狂ってなんかいないのではないかと。行動はひどく暴力的で不条理なのだが、心の動きは普通のそれと変わらないように感じた。勢いだけで、一気に読ませるが、意外と文章は好き。荒削りだが、その淡々とした文章には幻想的な面も感じた。どこにも救いはないけど、救われないからこそ、這いながらも生きていけるのかもしれない。
読了日:01月15日 著者:岡崎 隼人
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■夏子の冒険 (角川文庫)
☆8 楽しい三島だった。夏子がとにかく面白い。何にも縛られない元気な女性、かと思ったらなんだか小難しく考え込んだりしていて、二十歳だけどまだまだ不安定な思春期って感じでかわいい。そんな彼女に振り回される母親たちは呆れ果てているけど、実は彼女たちもすごく自由でマイペースだと思う。もう、この家族は奔放過ぎて笑える。夏子が恋して冒険して、成長していくのかと思いきや、結局夏子は夏子のままで終わるのがある意味で爽快。「ほんとにこの子ったらもう・・・」と苦笑いしてしまうが、やっぱりかわいいんだなあ。
読了日:01月17日 著者:三島 由紀夫
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■ふがいない僕は空を見た
☆9 人生ってうまくいかないんだよな。何か持っていると思っていても肝心な時にどうすればいいのか分からなくなる。一編目は「ああ、R18文学賞だな」と思う感じだったけど、読み進めていくほどに滋味のある物語が見えてきた。連作短編の物語でそれぞれに何か――主に恋愛の悩みをもった人が出てくる。自分の感情どおりに愛を求めているのに何かうまくいかない。どうして他人の恋愛はバカに見えるのに、みんな、そんな恋愛に夢中になってしまうんだろう。いろいろとセックスの話が出てくる。そして最後に助産婦の話。どんなセックスだって命の→
読了日:01月17日 著者:窪 美澄
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■魔術王事件 上 (講談社文庫 に 22-20)
☆6 今作は、より飾り気たっぷりの殺人演出がなされていて、もはや苦笑いしてしまうほどだった。目立ち好きで神出鬼没な殺人鬼に振り回される警察は乱歩小説のようだった。最初のとかを含め、ミステリとしてはわかりやすいのもあったけど、蘭子シリーズなら斜め上の結末が待っていると思うので楽しみ。とにかく常にトップスピードで事件は起こる。乱歩を読んでなかったらもっと新鮮だったかも。特に、マジック会場の場面はかなり印象的で恐ろしい殺人演出だった。とにかく早く蘭子に出てきてほしいな。
読了日:01月19日 著者:二階堂 黎人
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■魔術王事件 下 (講談社文庫 に 22-21)
☆7 読み終わってみると二階堂さんのプロット作りに舌を巻く。パフォーマンス満載の描写に計算高い仕掛けが共存していて感心させられる。『エドウィン・ドルードの謎』を読みたくなった。黎人が最初かっこよくて嬉しくなったけど、やっぱり蘭子に圧倒されていて可哀そう。今回は蘭子の推理は説明みたいに羅列されていたからか、なんだかあっけない終わり方に感じた。でも少年の隠し方には驚愕で、さすがの一言。今作と『双面獣』は同時進行していたらしく、そちらの事件の方が面白そうなので期待して次読もう。
読了日:01月20日 著者:二階堂 黎人
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■ミミズクと夜の王 (電撃文庫)
☆6 綺麗な話だなあ。雰囲気もいいし、夜とか月が好きになる。ミミズクのしゃべり方も意外とつぼにはまって、特に前半のミミズクがいい。話自体は平易で淡々と進むけど、登場人物の温かさに惹きつけられて一気に読める。本当にみんないい人たちだ。これだけ好人物だらけなのに、きっちりと起承転結つけられているのが魅力的で、この作品のいいところだと思う。ミミズクと夜の王、彼らを傷つけるのは人間の作り出した環境だけど、癒すのもまた人間だった。何かが残るわけでもないかもしれないけど、読んで良かったと思える小説。
読了日:01月20日 著者:紅玉 いづき
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■琅邪の鬼 (講談社ノベルス)
☆8 中国の秦時代を舞台としているミステリだが、いい意味でも悪い意味でもそんな感じにさせない読みやすさ。オカルト要素を謎に組み込むのは好きだから退屈せずに読めたし、徐福塾の面々が個性的で印象深く残る。なんとなーくわかる真相だけど、四方八方から謎が食い込んでいるから、それがほどけた時には「おー」とうなった。まだ盛り上げの弱さとか粗い文章とかもある気がするけど、膨らまし方に著者の力を感じた。もっと史実とか豆知識とかあっても良かったかもしれない。とりあえず次回作も読みます。
読了日:01月22日 著者:丸山 天寿
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■幸福号出帆 (角川文庫)
☆7 意外と、兄弟愛は直接的には語られていなくて、間接的に――兄弟に恋し、破れた人たちから伝わってきたと思う。三津子の心のうちの「ここでこう言ってくれれば」という声のようなものに妙な説得力があるのはさすが。敏夫は結局極端な何かになれなくて地を行くばかりで、最後にも幸福号で真実と真の幸福から遠ざかってしまう。しかし、兄弟愛の迷走が続くこの人生が似合っている。結局、劇的な何かを期待していた兄弟の喜劇なのかもしれない。
読了日:01月24日 著者:三島 由紀夫
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■輝く夜 (講談社文庫)
☆7 辛い日々を送る人たちへの希望と奇跡の物語。しくじった!ちゃんとクリスマスに読めば良かった・・・。5話全部シンプルだけど、楽しみやすくて心がほんのり温かくなる小話だった。百田さんは三人称書きだから情報を伝えるのがすごくうまい。すんなりと世界に入っていけるし、ご都合主義も「こんな素敵なことがあったらいいな」という気分にさせてくれる。そして、ちゃんと何を伝えたいのかも伝わってくる。短編の構成力にも力がうかがえる。あと、解説で語られる百田さん自身が魅力的すぎる。会って話を聞いてみたい。
読了日:01月24日 著者:百田 尚樹
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■江利子と絶対〈本谷有希子文学大全集〉 (講談社文庫)
☆7 デビュー作か。文章に好不調があって荒々しいけど、ちょくちょくツボにはまる。この人の感性はなんか好きだなあ。自分のことは棚にあげといて、偉そうに世界のことを語っちゃうあたりも、ムズムズするけどいい。ほんとに本谷さんの創るキャラは魅力的だ。セリフ回しも面白いし、だからどんな話でも面白く感じる。そして舞台作家であるだけに、物語の緩急がうまい。でも短編だからか、そこに著者の味は感じられなかった。エンタメ系も読んでみたいけど、表題作のような作品をもっと読みたい。まだ未読はあるから楽しみ。
読了日:01月25日 著者:本谷 有希子
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■謎解きはディナーのあとで
☆7 漫画レベルのミステリ。いや、いい意味で。形式が、令嬢刑事が執事に事件の話を伝えて解決してもらう安楽椅子探偵だからか、読者も客観的に事件をみられる。だから漫画のように、キャラクターもみえてくる。謎自体は確かに難しくないーーむしろ初歩的だけど、会話やキャラが面白いから楽しい。漫画のようなミステリなので、ミステリに親しみのない人でも、ミステリ好きでも楽しめる。でも、執事がいないとつまらないから、テンポのいい短編じゃないと辛そう。できるなら長編で続編を読んで見たいけど、このままでは無理か。連作短編に期待。
読了日:01月26日 著者:東川 篤哉
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■狐笛のかなた (新潮文庫)
☆7 上橋さんのファンタジーに年齢制限はない。なかなかひねった世界観だけど、読み進めるとだんだん違和感はなくなっていき、いつの間にか夢中になっている。信じたいけど、信じるにはリスクが高いから疑ってしまう。恨んでしまう。憎んでしまう。その根を断ち切ったのは、愛だったと思う。きれいなファンタジーだけど、人間のひずみやどうしようもないところがよく見える。これでも人間がいいのか?人間を信じられるのか?と問いかけてくるよう。でも、希望はどこかにあるという光も見えた。その光はあまりにも儚げに見えたけど。
読了日:01月27日 著者:上橋 菜穂子
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■誤読された万葉集 (新潮新書)
☆5 レポートのために読んでみたけど、なかなか読める。全然万葉集を知らなくても、文学論や解説を読むだけでも面白かったりする。でも、こういうのにありがちな作者の自己中感は否めない。しょうがないとはいえ、推論に推論を重ねたのちに最後だけ断言されても困る。著者の言葉もそうだが、最後まで謙虚に臨んでほしい。それでないならもっととんでもない論理とかを見せてほしい。歴史などの解釈はいかようにもなるというのは面白いが、そこに作者のミスや記述者のミスはないと、棚にあげられるのか。一つ二つの証拠では分からないと思った。
読了日:01月27日 著者:古橋 信孝
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■猫物語 (白) (講談社BOX)
☆6 相変わらず、こんな自由に描いてるのになんで軸はぶれないんだろう、と感心する。自由に描きすぎてキャラが暴走しているけど、今回で言いたいことはよくわかる。羽川の脳の働きは理想の構造と言えるけど、人間としてはいびつで間違っている。喜怒哀楽、すべての感情に捨てていいものはない。辛いことにも向き合って生きていかなきゃならない。猫が最後に本当に猫になったのには不覚にも感動した。そういえば、アララギ君がほとんど出てこなかったけど、出てきたときは無駄にかっこよかった。
読了日:01月27日 著者:西尾 維新
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■でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)
☆9 読み終わった後に唖然とした――と書くことはよくあるが、今作では、常に唖然としながら読んでいたというべきだ。まさに筆舌に尽くしがたい思いだ。ノンフィクションであることは分かっているのに、貫井さんの冤罪小説を読んでいるようで、こんなことが現実にあったらどうしようと思ってしまった。マスコミの刹那的で熱情的な報道体制は分かっているが、当事者としてはこんなに無責任なことはないだろう。もちろん、本作だって伝達によるもので、多くの主観からの取捨選択された情報だが、そういった公平な理解をした上で酷い冤罪だと思う。→
読了日:01月27日 著者:福田 ますみ
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■祭り囃子がきこえる
☆6 さらっと読める。川上さんの作品は短編だと、ちょっと読みごたえがないかも。でも祭りという場で起こる、ちょっと後悔の混じる青春がほろ苦くていい。祭りは人を高揚させるし、いろんなものが舞い込んでくる。だからここで起こる軽い奇跡は本当にあったかのよう。どの人たちも何か取り戻したい過去があり、祭りでそれに近づく。でも彼らはもう違う道を歩んでいて、違う幸せを持っている。人は、いろんな幸せの可能性を持っているけど、選択して一つしか残らないんだな、と思った。祭りは不思議な交差点になっている。
読了日:01月28日 著者:川上 健一
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■民宿雪国
☆8 計算されたアンバランス。聞いていた通り面白い構成で、読み始めと終わりで印象ががらりと――しかも何回か変わる。しかし、そこには狙いがあるしその点では非常に均整の取れた物語だったと思う。一人の男のねじれていく気持ちと純粋な気持ち。在日というテーマを描いているが、そこには人間のらしさが詰まっていた。いい意味でも悪い意味でも人間臭い。作品中でいきなり展開のギアが上がるところが多々あるが、そのきっかけが主に登場人物の行動だから、文章なのに映像を見ているような唐突感と疾走感があり、何とも言えない滋味を感じた。
読了日:01月31日 著者:樋口毅宏
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■シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)
☆8 面白い!けどそれだけではない。今回はみんなにスポットが当たっていて、その一つ一つのエチュードが面白い。みんなが少しずつ成長していくのがわかるし、誰一人として見逃せない。また、ただフィクションに落とし込むのではなくて、演劇の現実や社会への不安も盛り込んでいる。だからこそ、この一瞬の輝きがより魅力的に映るんだと思う。社会人が夢を追うことは学生とは別次元の意味を持っている。人生には甘いところも苦いところもある。有川作品はそこを教えてくれる。次回は絶対ヤバイなー。なんとなく想像できるからこそ早く読みたい→
読了日:01月31日 著者:有川 浩
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▼読書メーター
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10月11月分忘れてた。汗

まあいっか。


2010年12月の読書メーター
読んだ本の数:26冊
読んだページ数:8072ページ

■見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)
☆6 予想以上に正統派本格ミステリだったと思う。しかも良質な。無駄をそぎ落として純粋に事件を描いている感じ。3つの事件それぞれけっこう不思議なんだけど、そこはあまり強調されていなかった。だから少し淡白には見えてしまったかも。あと3つを一つずつの短編にしても面白かったと思う。もちろん、3つの事件をつなぐ伏線や、犯人へ向かう手掛かりなんかは長編の方がよく作用すると思うけどね。でもタイトルのわりには「見えないグリーン」の謎部分が前面に出ていなかったな。
読了日:12月02日 著者:ジョン スラデック
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■著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書 527A)
☆7 わかりやすいし具体的だから著作権を知りたい時にはいいと思う。けっこうそこら中に著作物があって、やろうと思えば裁判だらけになる。複雑だし悩ましい問題だ。特に日本は信頼や暗黙の了解で成り立っているようなものだから、これからの法制度の変革は難しいけど慎重に行わなくてはならない。著作者の気持ちも大切にしなくてはいけないし、情報の共有によるメリットというのも確かにある。ただ大体トラブルになるのは、著作者か利用者に悪意があったり、配慮が足りない場合だと思う。そんな人々がいるからはっきりさせなきゃいけないのか。
読了日:12月03日 著者:福井 健策
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■文藝春秋 2010年 12月号 [雑誌]
☆5 小泉進次郎の初ロングインタビューを読んで、進次郎さんは本当に親しみやすくて素朴な人だと感じた。野球をやってて先輩をたてたりするのがごく自然に身についているのがわかる。あと足利事件についての記事も興味深く読めた。やはり人や事件について深く知りたいときはひとまとまりになった記事を読むのが早いと思った。
読了日:12月05日 著者:
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■アリアドネの弾丸
☆7 田口先生が相変わらず程よい鈍さで良い。今回は一応ミステリ的なとこもあったし、まんべんなくキャラがでてきてたからシリーズの王道と言った感じだった。殺人の外観は簡単なものだったけど、この機械トリックはいろいろと難しい。彦根とシオンのコンビや小百合の暗躍が気になった。これからはエーアイセンターでの出来事が中心になるのかな。東堂教授というのもくるし、肝心なキャラはそこに集まるのでこれから面白くなりそうだ。
読了日:12月05日 著者:海堂 尊
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■編集会議/電子出版 2010年 11月号 [雑誌]
☆8 出版社・取次・書店・印刷、それぞれが取り組む電子書籍対策や考え方は、読んでいてとても興味深かった。しかしどうしても曖昧とした要素が多いので、どういう形に定まっていくか、というのは時間がたたないとわからない。だからといって、何もせずにぼーっとしていていいわけではないだろう。今後の動向が注目される。また編集者たちが語る編集の仕事などは読み応えがあった。今は厳しいけど、やはり編集の仕事に携わりたいと改めて思った。最近就活が本格的になってきたけど頑張ろうと思う。あと「ブクブク交換」が気になった。
読了日:12月07日 著者:
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■人間小唄 (100周年書き下ろし)
☆7 初の町田作品だったけど、圧倒されてしまった。なんだろうこれは。こういう文章たまに見かけるけど、それらと違ってなにかいい。そのなにかはまだ全然解らないけど面白い。一応いろいろ皮肉っているようにも捉えられるので読みがいがある。計算して作っているように思わせないけど、ちゃんと考えてるんだろうなー。こんだけ破たんした会話もないと思うがみんながそれをゆるく受け入れているから笑える。他の作品もこんなのなのか?まあ読んでみよう。けっこう作品あるからどれにするか悩む。
読了日:12月08日 著者:町田 康
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■近代能楽集 (新潮文庫)
☆8 能楽に対してそんなに興味もなかったし、観る機会もないだろうと思っていたけど、この作品によっていつか観たいと思うようになった。こういうのが読書のいいところの一つだね。三島さんのパンチと気の利いた台詞が存分に聞けるから三島曲は好き。この一冊も読み逃していいところがないくらいに充実してた。話としても面白いものが多く、『邯鄲』『熊野』『弱法師』なんかは素晴らしい。そして近代化しても、輝きを失うどころか、なお光を放つ能楽の奥深さと、人間の心を取り扱ったテーマの普遍性に脱帽した。
読了日:12月08日 著者:三島 由紀夫
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■引火点 (講談社文庫)
☆7 いい意味で王道な警察ミステリ。海外ものにしてはとっても読みやすい。女性刑事のソノラに狂的な犯罪者が迫る。本当に迫ってくるから困る。しかも容赦なくいろいろ死んでしまうし、犯人にも犠牲者にも救いがない。だからこそのハラハラがあり、ソノラの振り絞る生気と苦悩をひしひしと感じることができる。警察ミステリは女性刑事が主人公だと気に入る確率が高い気がする。
読了日:12月08日 著者:リン・S. ハイタワー
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■右翼と左翼 (幻冬舎新書)
☆7 この前友達と話していたら右翼とかの話題が出たんだが、みんな曖昧にしか知らず、気になったから読んでみた。けっこう良書でわかりやすく右・左について書かれていたんだけど、結局どうなんだ、というところは理解できなかった。というか、簡単に定義できないものなんだね。この思想が生まれたときとは単純でよかったが、どんどん世界情勢や立場が変わってきて、違う要素も混じり合ってくるんだから複雑になるのは当然。その体系をひとつひとつ丁寧に解説しようとしてくれてるのでありがたい。だんだんパラドックスのようになっていくけど。
読了日:12月10日 著者:浅羽 通明
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■夢を叶える夢を見た (幻冬舎文庫)
☆8 すごくいい本!OLから脚本家に「転職」した著者が、他の仕事へ「飛んだ」人、「飛ばなかった」人について取材している。現実の自分と夢の自分とを比べて「揺れる」。それはもうみんな「揺れて」いる。私のような若輩者でもその悩みようがわかる。いや、たぶん実際はわかっていないのだけど。だってきつ過ぎてまじめに想像することを拒否しているんだもの。後悔をしていない人はいない。だったら「やらないより、やって後悔したい」というのはよく聞くし、私も思っていた。しかしこの世はそう単純ではない。その向こうにある現実は甘くない→
読了日:12月12日 著者:内館 牧子
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■ダ・ヴィンチ 2011年 01月号 [雑誌]
☆7 2010年の Book of the year は半分も読んでないくらいかな。話には聞くけど読んでないってのが多い。いつか読む日は来るんだろうか。出版社ごとの隠し玉の記事で読みたい本が多くて、2011年の本を読むのにかかりきりになりそうだからな。有川浩とか桜庭一樹とか薬丸岳などなど即読み本がたくさんありそう。東野圭吾もあいかわらずノンストップで、二作出るしね(しかもひとつはガリレオ!)。あと面白そうな漫画が多すぎる。毎年、結局ほとんど読めてないんだよな。てかマツコ・デラックス面白い。
読了日:12月12日 著者:
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■文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)
☆8 今回は「場」がほとんど動かなかったので、こじんまりとした事件だった。もちろん悪い意味ではない。文化や常識とは、ある意味では暗黙の了解のようなもので、改まってみなと確認し合うものではない。だからみな、その文化を当然に受け入れ、その常識を普遍のものと思っている。それらの無意識からくる誤解というのは大なり小なりある。この作品にも。読者のような神の視点に立ったものならばそれは明瞭に見えてしまうだろう。しかし、当事者にとっては、そのずれから生じた謎というのはまことに不可解に見えてしまうのだろう。この作品内で→
読了日:12月14日 著者:京極 夏彦
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■yom yom (ヨムヨム) 2010年 12月号 [雑誌]
☆6 表紙が目立つ。けどけっこう好き。相変わらず石田衣良とか奥田英朗らへんは安定して面白い。他の小説もなかなかで、島本理生のやつには驚かされた。こんな奇を衒ったものも書くんだ。でも雰囲気とかは変わらないのが面白い。エッセイも「旅」をテーマにしていて期待もしていたけど、ちょっと物足りない感じがある。面白くないわけではないんだけどね。
読了日:12月16日 著者:
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■金閣寺の燃やし方 (100周年書き下ろし)
☆5 良くも悪くもタイトルありきの作品。このタイトルと酒井順子ということで期待していた分、少しピンとこなかった。三島の『金閣寺』は読んでいたとはいえ、真新しさは少ないかも。水上作品との比較をしっかりと丁寧にやっていてわかりやすく、まるで読み方の解説本のよう?しかし、そのせいか面白みのない論文のようになっていしまっていたように感じた。まあうまく章分けされていたし、金閣寺放火事件と三島と水上の関係性を、立体的に把握できたのは良かった。
読了日:12月17日 著者:酒井 順子
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■歌うクジラ 上
☆6 面白そうな設定なんだけど、そこまで面白くはない。「」なしという試みをしているのは興味深いけど、やっぱり読みづらい。それでも読みやすければすごかった。日本語をいじってるのは予想以上に楽しく読めた。本当に日本語って面白い。言葉遊びって日本語が一番面白いのではないだろうか。まあ他言語を習得していないから何とも言えない。いろいろと要素は詰まっているので下巻で、これらをどう広げてまとめて、何か新しいものを見せてくれるのを期待してます。
読了日:12月20日 著者:村上 龍
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■歌うクジラ 下
☆7 なかなか入り込めなかったけど興味深く読んだ。描かれている状況とか文体からして読みにくいのはしょうがない。その分、しっかりと入り込んだら面白いんだろうな、と思う。技術が発展して、合理化を極めていっても、こんなに荒廃して矛盾した世界しか作れないのか。経済にも詳しい村上龍なだけあって、そこらへんはただのSFではないのかもしれない。実際、とても平和で安穏とした世界よりは、この世界の方が現実的な気がする。色々と放りっぱなしなのは否めないが、それでこそ、と言えるとも思う。良くも悪くも意欲作であることは確か。
読了日:12月21日 著者:村上 龍
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■袋小路の男 (講談社文庫)
☆8 かなりつぼにはまった。合計で200ページにも満たない中に三編が詰まっているのだが、一つ一つを切り離してでも買いたい作品たち。解説でも言っているけど、文庫じゃなくて単行本で、ゆったりとかみしめるように読みたくなる。内容としては、恋愛感情のようなものをじんわりと書き出している。憎らしくも愛おしい距離感というのはこういうことなのか。凝った言葉や難しい言葉を使っているわけではないけど、独特の味がある。まさに行間から気持ちがにじみだしてくるようだ。なぜそうなるのかはわからない。でもとにかくもっと読みたいのだ。
読了日:12月23日 著者:絲山 秋子
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■オール・スイリ
☆8 大満足。作品を読んだことのある作者しかいない文芸誌は初めてだったけど、もともと知っているとかなり楽しめる。辻村深月と乾くるみが一番印象に残った。『嫉妬事件』は乾さんらしくて笑える。真面目なんだかふざけてるんだかわからないけど、なんだかんだ好き。麻耶さんの不思議な探偵とちょっとおかしな語り手は面白い。少し事件はしょぼいけど。他の皆さんも個性をしっかり発揮していた。全体的に期待どおりだが、悪く言えば想定の範囲内。知っている人だらけの文芸誌はとてもいいけど、新たな作者さんに会えないという欠点もある。
読了日:12月25日 著者:乾 くるみ
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■他人事 (集英社文庫)
☆7 やっぱり怖いなあ。不条理で狂気的だけど、日常にも潜んでいそうな、そんな怖さ。正直反則的に怖い。これ読んで怖くない人いるかな。いたら会ってみたいよ。いや、むしろ会いたくないな。しかもただ怖いだけでなく、話のアイデアがいいから面白くもある。話の持っていき方としてはただ面白い話のようで、淡々としていたりしているのに、グロい描写は徹底的に描いているからギャップでやられる。富樫さんが解説書いてるのがまた面白い。
読了日:12月26日 著者:平山 夢明
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■灰色の虹
☆8 うーん。やっぱり貫井さんは重いなあ――読みづらいとかじゃなくてテーマが。悪く言えばどれも似たところがあるから、続けて読むより、たまに読むのがとてもいい。冤罪というのは難しい。というか人間社会自体がとても難しい。正論も正義も一面的なものしかありえなく、真理なんてどこにもない。正しい人間なんていない。そんな人間が集まるからこそ、少しずついろいろ悪くなる。「三人寄れば文殊の知恵」の真逆の事態が起きて冤罪が成立してしまっている。悪意がないだけに厄介だ。現実だと、直感型の探偵タイプの刑事はよくないね。→
読了日:12月26日 著者:貫井 徳郎
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■進撃の巨人(3) (少年マガジンコミックス)
☆8 久々に漫画の登録を。友達に借りて一気に3巻読んだけど、これは確かに面白い。緊迫感が素晴らしいし、あきらかに巨大で強力な敵が相手という、圧倒的窮地なところが大好き。頭吹っ飛ばしてもすぐ復活するとか反則でしょ。ここから人類がどう反撃するのか楽しみ。3巻目で今後の展開が少し想像できるけど、意外と脇キャラも立っているから、まだまだ面白くなっていくと思う。多少の絵の汚さも気にならない、これからも期待の漫画。
読了日:12月26日 著者:諫山 創
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■故郷のわが家
☆5 つらつらと軽い口調で描いていくのに、時々幻想的だったり不思議だったりする世界に入り込んでいたりもするから、独特な世界になっていると思う。擬音語だったり単語だったりが羅列される書き方や、カギ括弧をはさむのも効果的に働いていたのかもしれない。そしていろいろと面白いことが、世の中にはあるということを再確認させてくれた。実はそんなに入り込んで楽しめなかったけど、もっと環境が変わったり年月がたった方が楽しめるかもと思う。
読了日:12月27日 著者:村田 喜代子
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■完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-
☆8 遺伝子操作による人間改善の倫理的な問題について。なんとも難しい問題だ。遺伝子による身体能力・頭脳などの向上と親による英才トレーニング・教育などの間には本質的な違いはあるのか。遺伝子操作の反対意見としてリスクや公平性などがあげられるが、ではそういった問題を取り除けばよいのか。遺伝子操作そのものに対しての反対にはなっていない。サンデルはかなり慎重に、感情論にはならないように、遺伝子操作に反対していく。胚から産まれるまでの間で、どこからが人間なのか。それによって研究の倫理性も疑われてくるという問題もある→
読了日:12月27日 著者:マイケル・J・サンデル
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■腑抜けども、悲しみの愛を見せろ (講談社文庫)
☆7 雑誌とかでこの人のエッセイとかをみてて、気になってたから作品を読んでみた。期待通り、なかなか面白い。劇作家でもあるというのは知らなかったけど、読んでて納得。人物がすごくたってるし、一人一人がキャラとして自由にいる。描かれ方からイメージするものとは違う、予想外の言動を起こしたりするので面白い。たしかに、小説としては唐突なところもあった気もするが、舞台でみたら面白いんだろうな、とも思わせる。内容としては悲劇だと思う。彼女らみんなに、一生消えない傷のような呪いが残っているし。でも喜劇にも感じられた。
読了日:12月28日 著者:本谷 有希子
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■サイコロジカル 上 (講談社文庫 に 32-4 西尾維新文庫)
☆4 家に返ったらあったので読んでみた。四巻目だけど気にしない。なるほどなるほど。こういう言い回しが「西尾維新」ぽいといわれるのに納得。『化物語シリーズ』よりも言葉遊びならぬ戯言使いが顕著に出ている。あまりにも登場人物を知らなかったからか話自体は面白くなかったが、最後の最後に事件が起こったから下巻に期待してみる。
読了日:12月30日 著者:西尾 維新
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■サイコロジカル 下 (講談社文庫 に 32-5 西尾維新文庫)
☆6 なんだ、一応ミステリなんだね。登場人物とか状況はかなり渾沌と、ある意味ではこれしかないほどに正常としているから気づきにくいけど、伏線とかはある。トリックとかもそんな簡単でいいのか、というほど王道だし。でも、ただではすまない展開はさすがで、アンチミステリ的なネタはよかった。誰がどこまでわかってたんだろうな。なんか結局茶番にも思える。ほかの巻も読むかは悩むところだな。
読了日:12月30日 著者:西尾 維新
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▼読書メーター
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2010年9月の読書メーター
読んだ本の数:19冊
読んだページ数:8337ページ

■黒魔術の手帖 (河出文庫 し 1-5 澁澤龍彦コレクション)
☆6 ミステリを読んでいるとやっぱりこういう分野に興味がわく。カバラ、タロット、黒ミサ、サバトなどの異端的でエロティックで妖しい雰囲気を纏っている言葉がどんどん出てきて好奇心を刺激された。人間はこういう闇の部分に惹かれるものだと自身で確認した。あと熱中しすぎず冷静な澁澤さんの分析にいい距離感を感じた。
読了日:09月02日 著者:澁澤 龍彦
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■暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
☆6 とりあえずの導入部。視点も安定せず語り部の正体も不明瞭で、そこにどんな意味が潜んでいるのかが気になるところだが、まずは物語を追うしかない。『フリークス』を読んだ後だし畸形の子供がアクセントを加えているのを感じる。本当にまだまだこれからなのでとにかく次を読みたい。
読了日:09月05日 著者:綾辻 行人
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■暗黒館の殺人(二) (講談社文庫)
☆7 うーん、ここからどう盛り上げて、どんな狙いが潜んでいるのかわからない。いろいろとひねくれていて、それらのひねりがいかに収斂していくのか、綾辻さんに期待だ。幻想とホラー色が強いのは好きだからわくわくしながら読めたし、あとは本格ミステリ色が発揮されるのを待つだけかな。次の巻は重要になりそうだし楽しみだ。
読了日:09月07日 著者:綾辻 行人
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■暗黒館の殺人(三) (講談社文庫)
☆7 なんとなくは見えていた浦登家の秘密にはあらためて驚いた。実際にそれを読んでみるとさすがに戦慄させられる。これで残る大きな謎は視点などの叙述的なところくらいかな。もちろん「犯人は?」というのもあるけど、そこらへんの謎への魅力は正直薄くなっていると思う。本格ミステリの謎の醍醐味は犯人やトリックについてのはずだと思うので少し残念な展開に感じた。最終巻でどれだけのどんでん返しがあるかに期待だ。
読了日:09月09日 著者:綾辻 行人
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■暗黒館の殺人(四) (講談社文庫)
☆7 さすがにしっかりどんでん返してくれた。この物語に入り込んで読んでいるほど、感慨深さを感じる。はっきり言って本格ミステリとしては首をひねりたくなるが、プロットがよかったので世界に引き込まれていった。不気味さの残る終幕といい、ホラーと幻想の混じりいるミステリで、むしろその雰囲気を楽しんだ。この作品は確実に「館シリーズ」の中心に位置していて、集大成とも原点ともいえるものだと思う。残る館もあと3つだ。
読了日:09月10日 著者:綾辻 行人
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■びっくり館の殺人 (講談社文庫)
☆7 拍子抜けはしたけど面白かった。子供向けということで描写がはっきりしていたし、社会的なメッセージもわかりやすくて読みやすい。『暗黒館の殺人』の後だからか、一瞬で読み終わってしまった。あっさりしすぎではあるが、それはたぶんミステリに慣れ親しんできたから言えることで、子供などにはこれくらいの方がミステリの世界に入って行きやすいのだと思う。メイントリックもあの古典的名作のものだし(ギリギリ思い出せた)、『虚無への供物』も登場するし(僕がミステリにはまった作品)、ここからミステリ好きな子が増えると嬉しい。
読了日:09月12日 著者:綾辻 行人
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■かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (ちくまプリマー新書)
☆8 これがはずれだったらこの著者の作品はやめようと思っていたけどやめられなくなった。小学生ならではのささやかなエピソードに、猫のマドレーヌ夫人の視点が入るので、独特の滋味のある作品となっていた。かのこちゃんが素直でかわいい。そして周りの大人も温かいから癒される。犬の玄三郎と猫のマドレーヌ夫人という不思議な夫婦の絆や、その夫婦とかのこちゃん一家との心の通った交流が、絶妙な距離感で、ほんわかさせられる。安心して読めるいい物語だった。
読了日:09月12日 著者:万城目 学
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■愚者と愚者 (上) 野蛮な飢えた神々の叛乱
☆7 読みだしたときは、カイトはもうある程度の地位まで来てしまったしそこまで動きがないから魅力は減ったかな、と思ったけど、そんなことはまったくなかった。司令官という立場やいろんな人々との関わり合いでの苦悩に揺れながらも、カイトらしさを失わずに生きていく姿には胸を打たれる。秩序が無くなり人間の欲望が露見する状況で生まれる差別、やはり秩序がないとより愚かになってしまうのかもしれない。そんな悲惨な世界でも打海さんのユーモアにはクスッとさせられる。それがなければ読み切れないかもしれない。
読了日:09月14日 著者:打海 文三
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■愚者と愚者 (下) ジェンダー・ファッカー・シスターズ (角川文庫)
☆6 基本的にカイト編の方が好きだけど、椿子からの視点によって世界の厚みが出てくる。やっぱり根底にあるテーマは性差別と人種差別だった。人は自分と違うものを怖れ、拒絶する。荒廃して、助け合わなくてはいけない世界のはずなのに、差別的で愚かな行動をとる人々が増加しているように思えるのはすごい皮肉のように感じる。
読了日:09月15日 著者:打海 文三
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■白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)
☆8 見事にだまされた。こんなに簡単なことなのに、少し視点をずらされるだけで真相がうまく隠されていたと思う。物語の展開とか推理行程などもしっかり計算された上での書き方、さすがカーと思った。犯人にたどり着くためのロジックは緻密で素晴らしいけど、なかなかに複雑だった。それにしてもちょっと読みにくい。これはやっぱり訳のせいなんでしょうか。
読了日:09月23日 著者:カーター・ディクスン
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■小さいおうち
☆6 女中からみた物語――それも回顧録形式という構成は、なかなかに新鮮でよかった。戦時中でもそこまでそれを感じさせない。「小さいおうち」の中がタキの世界であって、戦争などの外のことはある程度距離を持って描かれていたと思う。女中という存在は現在にはない。読んでみてもわかるがかなり特殊な立ち位置だと思う。そこらへんの微妙なバランスを温かく朗らかに描き切っていた。
読了日:09月23日 著者:中島 京子
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■切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫)
☆7 「切り裂きジャック」は有名で、オマージュされたり取り上げられることも多い。だからある程度事件の概要は知っている人は少なくない。僕自身知っている。でもある意味で伝説的となっているから事件をそのまま受け取っていたけど、これを一つの事件としてしっかり捉えることは忘れていたので新鮮だった。こんな事件が実際にあったものだなんて、改めて「事実は小説より奇なり」とはよく言ったものだ。歴史ミステリとしてもよくできた作品だった。
読了日:09月24日 著者:島田 荘司
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■赫眼 (光文社文庫)
☆7 いやぁな怖さがある短編集だった。怪異が現れる視覚的でシンプルな怖さもあるが、特徴的なのは不気味な擬音を使ったもので、ゾワゾワと首筋を撫でられる感じがあった。さらに特筆すべきは作家 三津田信三の登場によるメタ的要素も加わった恐怖だと思う。これにより一気に怪異が背後に迫ってくるのはたまらない。ホラーとしては良かったけど、ミステリの方が好きかな。
読了日:09月25日 著者:三津田 信三
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■あの日にかえりたい
☆6 過去と現在が入り混じった物語たちだった。いい感じのもの悲しさがあるなかで、登場人物の微妙な心境が伝わってきて、奥深い感動があった。けっこうどれも悲劇的で救いはないんだけど、ほんの少しの温かみや光はあるから厭にはならない。『真夜中の動物園』と『へび玉』なんかが好きだった。
読了日:09月26日 著者:乾 ルカ
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■リアル・シンデレラ
☆7 著者の作品はあまり読んでいないが、いい作品を読ませてくれたと思う。シンデレラというのを意識しないでも十分読めるし、意識すればもっと奥深く読めると思う。泉のことを周りの証言から少しずつ知っていって、知れば知るほど不思議な人だと思う反面、よく考えてみると最初と印象は変わらず、むしろかなり単純な人なのかとも思う。泉は成長するが、どうしても泉の成人した姿は思い浮かべず、ずっと子供のイメージだった。三つめの願いが泉らしさのすべてであり、幸せになるには最も簡単な方法かもしれない。直木賞になってもよかったかも。
読了日:09月27日 著者:姫野 カオルコ
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■文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)
☆9 やっぱり長いけど気にならない面白さ。僕にとってエンタメ小説の中で、わくわく感や気になる感が一番あるのはこのシリーズ。本作はシリーズの中でも好きかも。ジェンダーの問題が扱われていたけど、常識というなの呪いを取っ払って、やっと性差などの差別をなくせるのかもしれない。だけどそれは文化に根付いてしまっているので大きな単位では不可能に思える。真犯人 蜘蛛の手口は乱歩のいうプロバビリティの犯罪を堅牢にしたもののようだ。この仕掛けられた網を辿っていくのが面白かった。このシリーズは他作品とリンクしているし、何度も
読了日:09月28日 著者:京極 夏彦
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■ホーキング、未来を語る (SB文庫)
☆7 面白かった―、と同時に難しかった―。ところどころ解らない個所があるとはいえ、とても興味深い世界がなかなか明瞭に解説されていた。基礎知識はあった方がいいけど、専門知識はなくとも最先端宇宙論を体感できる。時間や空間が絶対性をもたないことやビックバン・ブラックホールの仕組みなどの宇宙に関することだけでなく、タイムマシンの可能性についてや宇宙の外側についてなどのフィクションのような理論や、人間の存在価値や神の存在場所といった哲学的なところまで触れているから読み応え抜群。それにしても「ひも」がわからない。
読了日:09月28日 著者:スティーヴン・ホーキング
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■ソウルケイジ (光文社文庫)
☆6 このシリーズはやっぱり登場人物が映像的でそれだけで楽しめる。でも今作は結構見たことあるトリックによるものだったので簡単にわかってしまった。被害者やその周辺の人々を掘り下げて描いたりもしていたけど、その手の本家である宮部みゆき(勝手に本家と呼んでます)の描写に比べてしまうと、あまりにも浅い。読んでいてそこまで響いてこない。でもまあ警察小説としては読みやすい方だと思うし面白かったのでまた続きは読みたい。
読了日:09月29日 著者:誉田 哲也
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■金閣寺 (新潮文庫)
☆8 予想以上に狂気はなかったような気がした。だからこそ、なぜ金閣寺を放火するにいたったのか、というのを読み解くのは難しいと感じた。世界には自分しかいないと思っているような主人公が少しずつずれていくのがわかる。想像を下回る現実の美というのはだれしも多少は感じたことがあると思う。それでも世間の価値観に合わせるために、現実ならではの美があるという認識を自らに創りだし、想像に近づけていくのが平穏な人間だと思う。世界は認識一つで変わると思う。行為で変わるのは現実。再読する必要はあるが、とりあえず楽しめた。
読了日:09月30日 著者:三島 由紀夫
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