この記事はSSSRC Advent Calender26日目の記事として書かれていません.

 

毎年恒例(2回目)のアドベントカレンダーエクストラ編スタートです.

前回の記事が大好評でしたので続編を書いていこうと思います.

実際に鉄工所で働いてみておもしろいなーと思ったことなので素人の感想みたいなものです.

 

ボール盤に関する過去の記事はこちら

 

<応用編>

ボール盤は穴あけに使うことが多いと思います.しかし,ねじ切り加工,リーマ加工,中ぐり加工,座ぐり加工などの使い方があります.ねじ切り加工というのは,下穴を開けたところにめねじの溝を切っていく作業です.タップという手工具があって手作業でもできるのですが,金属となると硬いので大変です.ボール盤でねじ切りはしたときは楽だった一方で,位置の微妙な変化や切り子の詰まりでうまくいかなくなるので少し難しい印象でした.

その他の加工は,穴を真円に近づけたり,穴を広げたり,段差のある穴に加工したりするものです.ネット上にわかりやすい解説記事がたくさんあったので割愛します(徹底解説とは)

 

 

<現場編>

製品を作る現場にボール盤を導入するとき,どのような工夫があるのでしょうか?

まずはその工作機械での加工の特徴を捉える必要があります.

ちょうど4年前期の授業に「生産システム工学」というものがありそこにヒントがありました.

 

生産ラインのレイアウトを決める際の理論として,生産対象の製品の種類P(Product)と数量Q(Quantity)の関係を考えます(P-Q図というものがあります).

代表的なレイアウトパターンとして次の3種類が挙げられます.

 

1.機能的レイアウト

生産する製品の種類(P)よりも数量(Q)が多いときに,直線的に設備を設置する方法

 

2.機種別レイアウト

生産する製品の種類(P)は多いがそれぞれの量(Q)は少ないときに,設備を機種ごとにまとめて設置する方法

 

3.セル型レイアウト

種類(P)も量(Q)もそれなりに多いとき,1と2を組み合わせる方法

 

1はベルトコンベアで製品が流れてくるようなザ工場という配置方法です.大型の流れ作業を得意とするボール盤も存在するので一概には言えないですが,私が働いた所では機種別レイアウトに相当していました.数台の同じ機能のボール盤がまとめて設置されており,参考文献にも同様の図が載っていました.

 

ボール盤での穴あけ加工には,材料の位置合わせやドリルの送りに時間がかかるという欠点があります.位置合わせの問題は適切な治具を作製することで解決できます.送り速度は適切な加工条件がある関係で変更できない部分があります.

この問題を解決し,加工を効率化する方法として,ひとりの作業者が2~3台のボール盤を同時に扱う方法があります.このような場合にはボール盤の穴あけ加工の一部が自動化した機械を用います.ハンドルを回してドリルを下げ穴を開ける動作が電動化していたりコンプレッサーによる圧縮空気で動かしたりするものがあります.

初めに1台目の機械に加工したいものを治具で挟むなどして取り付けスイッチを押します.機械が自動で穴あけをする間に,隣の機械に材料をセットしてスイッチを押すというのを繰り返します.そして最後の機械のスイッチを押し終わって最初の機械に戻ってくると1回目の加工が終わっているためすぐに次の加工に移ります.

実際にやってみると,確かに3台目のセットが終わって戻ってきたときにちょうど1台目の加工が終わるようになっていてよくできているなと感じました.

 

町工場で働いてみるといろいろな発見があります.中にはこれは機械化できるのではと思うこともありますが,採算が合わなかったりするのでしょうかね?どう工夫したらもっと楽にできるかなど工学っぽい視点で眺めてみるのもおもしろいです.機械化が進む現在ですが,手作業の加工は最も基本であるため,町工場が持っている手作業の高い技術力も大事なのではないかと思います.

大阪にはそのような町工場がたくさんあるので機会があればもっと知りたいものです.

 

それでは明日もお楽しみに!

 

 

 

参考文献

人見勝人,入門編生産システム工学 [第5版] ー総合生産学への途ー,共立出版,2011年