通信系のお話

皆様こんにちは。通信系2回の笹井です。本記事では、今年1年の通信系活動記録について、
紹介したいと思います。

送信機について

西無線のTXE145MFMCW-302Aを使用しています。これは衛星に搭載される送信機としては一般的なものです。しかし、パケット通信をするには自分で、通信プロトコルに準拠したビット列を作って無線機にそれを入力する必要があります。ちなみに、アマチュア無線において、よく使われるプロトコルはAX.25です。これはLinux カーネルに標準で実装されているデータリンク層プロトコルの1つとして聞いたことがある人が多いと思います。図1に、デコード試験の様子を張り付けておきます。パケット通信なので、図1のように受信した信号をパソコンのソフトが文字列に変換してくれています。

 
図1 デコードの様子1

受信機について

西無線のRXE430M-301Aを使用しています。これも衛星に搭載される受信機としては一般的なものです。
この無線機は、電波の受信から、復調までを行い外付けのモデムで復調した信号をビット列に直し、衛星側のコンピュータでデコード作業を行います。図2がその結果です。こちらもプロトコルは同じAX.25です。
 

図2 デコードの様子2

アンテナ

通信系では、アンテナについて学習するためにAltairのFekoを用いて図3のようにシミュレーションをまわしています。シミュレーションによってアンテナ周りの電磁界が視覚的に見えて、教科書で見るよりもわかりやすいです。
 

図3 アンテナのシミュレーション

地上局について

この前の雷でコントローラーが壊れてしまい、修理に出したものが戻ってきました(図4)。またPCも新しくするので環境が劇的によくなることに期待しましょう。
 
図4 帰ってきたコントローラー
 

最後に

通信系ではこの一年間、様々な進捗を生むことができました。
今後のSSSRCの活動にご期待ください。
 

 

【ハイブリッドロケット(HR)3号機】構造編 

 

厳冬の候.

皆様いかがお過ごしでしょうか.

最近はインフルに罹患している人も多いです.お気をつけて...

冬至そろそろ来ますね.12/22らしいです.わたしはいま先ほど航空宇宙工学演習の重い課題が終わり,ただいま晩酌中にてこれを書いているところです.B2の岳山です.

 

先月,白鷺祭のOPEN LABでモデルロケットを打ち上げそれについての記事を書かせていただきました!お久しぶりです!またアメブロを書かせていただくことになりました!

 

普段はロケットプロジェクトとして活動しており,ロケットの勉強をしつつ開発をしています.

今回は,作成中のハイブリッドロケット(以下,HR)の構造におけるお話をさせていただきます.

 

 

  1.今後の展望

 私たちの団体,小型宇宙機システム研究センター(SSSRC)のロケットプロジェクト名を「COLOURS PROJECT」といいますが,今まで2024年度の秋に「東雲」というHR初号機を打ち上げ,同年度「翠」という2号機を打ち上げました.共通するミッションとして「飛翔データの確保」「減速機構の展開」がありました. 

 

*飛翔データとは,加速度,角速度,地磁気,気温,気圧,GPSでのx,y,z

 

図1 東雲

 

図2 翠

 「減速機構の展開」は東雲の時はうまくいきませんでしたが,翠で成功しました.しかし,「飛翔データの確保」は両方でうまくいきませんでした.飛翔データの確保をもう一度行うという意味でこの3号機のミッションにも追加しています.さらに,COLOURSは高高度飛翔ロケットの作成も視野に入れており,将来的には海打ちをしなければなりません.ですのでせっかくデータが取れても電源ラインが海に着水してショートして大電流でデータがロスト...そもそも電装部が海水に沈んでお釈迦になる...それを防ぐために水密機構を搭載しなければなりません.水密機構の要素技術実証もミッションの中に入れております.今回のHRの3号機の構造的な構想を軽く紹介したいと思います!

 

 

  2. ロケットの構造紹介

 今回のロケットの構造の特徴はやはり何と言っても電装部を乗せたチューブです.水密を達成しないといけないので水密ボックスなどを作らないといけないですが,今回は電装を乗せたチューブそのものを水密することになりました.かなりの試行錯誤を繰り返して今の形に落ち着きました.翠同様,電装部をすぐに取り出せるようにレール式にしています.

 

図3 電装部を乗せるチューブの3Dモデル

 

 カプラ,タンクマウントのところにOリングで水が入ってくるところをすべて水密するようにします.

 さらに以前までチューブの素材はポリカーボネートでしたが,今回はGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を用います.何と言っても軽い,丈夫!比重自体はポリカーボネートより大きいですが強度や,難燃性はGFRPに軍配が上がります.有限会社スリーホープさんから購入させていただきました!これからがんがんロケット製作に本格的に取り組んでいきます!

 

図4 GFRPチューブ

 

 今現在,ロケット全体の図です.かなり格好良くできていますね!

 

図5 ロケット全体

 

 

  3. 最後に

 今回は構造班のこだわりである「水密チューブ」についてご紹介しました.新しい素材,新しい構造への挑戦は試行錯誤の連続ですが,HR3号機を無事に打ち上げ,必ずミッションを達成できるよう,メンバー一同全力で開発を進めています.寒さが厳しくなってきましたが,熱い心で冬を乗り越えていきます!今後のCOLOURS PROJECTの活動にもぜひご注目ください!  それではまた,次回の記事でお会いしましょう.

良いお年を!!

 

 

 

みなさん,こんにちは.COLOURS電装長B3の坂本です.

今回は,私たちが打ち上げたハイブリッドロケット2号機「翠」の「データ記録」に関する実験結果についてお話しします.

ロケットの打ち上げは,ものすごい振動や衝撃との戦いです.せっかく空高く飛んでも,その時の貴重なデータを記録したメモリが衝撃で壊れてしまったり,書き込みが間に合わなかったりしては意味がありません.

そこで今回の実験では,FRAM(エフラム)という特殊なメモリを搭載して,無事にデータを持ち帰れるかどうかの検証を行いました.

 

 

 

そもそもFRAMってなに?

 

まずは,今回の主役であるFRAMについて少し説明しますね.

上の写真の真ん中にある小さな黒い四角いものがFRAMです.足が8本もあってクモみたいですね.

通常,パソコンなどで使われるメモリ(RAM)は,電源が切れるとデータが消えてしまいます.一方で,SDカードやUSBメモリなどは電源が切れてもデータは残りますが,データの書き込み速度が少し遅かったり,書き換え回数に制限があったりします.

FRAM(強誘電体メモリ)は,この両方のいいとこ取りをしたようなメモリです.

  1. 電源が切れてもデータが消えない

  2. 書き込みスピードがものすごく速い

  3. 衝撃や放射線に強い

前回の打ち上げでは,衝撃が原因と見られるデータの欠損が起きてしまいました.そこで今回は,より衝撃に強いこのFRAMを導入してみたのです.

 

 

 

 

 

 

 

実験の結果:予想外のハプニング!

今回のロケットは,離床(打ち上げ)から着陸まで約20秒でした.

FRAMは,ロケットが発射準備完了になったタイミング(アップリンクでのステータス変更時)から時間を0としてカウントし,データを保存する仕組みにしていました.

ドキドキしながら回収したデータを解析してみると……ちょっとしたトラブルが起きていました.

データを見ると,0秒から11秒までの記録があった後,突然時間が飛んでしまっていたのです.

原因を調査したところ,どうやら「マイコンのリセット」が起きてしまったようです.

ロケットが着陸した後,他団体のロケットの打ち上げの関係で,私たちが機体を回収しに行くまでに少し時間がかかってしまいました.その間に電池が切れかけてしまい,制御用コンピュータ(マイコン)の電源が落ちてリセットがかかったと考えられます.

その結果,最初に記録していた「一番重要な飛翔中のデータ」の上に,リセット後の新しいデータが上書きされてしまったのです.これは悔しすぎる!

それでも成果はあった!

「じゃあ,失敗だったの?」と思われるかもしれませんが,そうではありません.

残っていたデータをつぶさに解析すると,非常に重要なことが分かりました.

  1. パラシュート展開後のデータは生きていた

    私たちの撮影した動画と照らし合わせると,打ち上げから約10秒後にパラシュートが開いています.今回,回収できたデータには,パラシュートが開いてから着陸するまでの約5秒間のデータが綺麗に残っていました.

  2. 気圧データの推移

    記録されていた気圧のデータを見ると,一定の割合で数値が変化した後,一定値(着陸して動かなくなった状態)になっていました.これは,パラシュートによって機体が減速し,安全に着陸できたことを裏付けています.

 
 
 

まとめと今後について

今回の実験で一番確認したかった「FRAMはロケットの激しい振動や衝撃に耐えられるのか?」という点については,自信を持って「そうである.」と言える結果が得られました.

データの一部が消えてしまったのは電源管理やプログラムの問題であり,FRAM自体の性能はバッチリでした.

この実験で,FRAMがロケットの制御用メモリとして十分に信頼できることが確認できました.今回の反省点である電源周りやプログラムの問題を改善しつつ,次回のミッションではこの強靭なメモリをフル活用していきたいと思います.

これからも引き続き応援よろしくお願いします!