珍説・『豐葦(タカツキノアシ)原の瑞穂の国』(1) | 珍説・「豐葦(タカツキノアシ)原の瑞穂の国」 

珍説・「豐葦(タカツキノアシ)原の瑞穂の国」 

古事記に載る「豊葦原瑞穂之国」の解釈に付いて、第三の解釈があってもいいのではないかと思い、イネ科ヨシ属の(セイタカヨシ)の登場を願い、此処に珍説を披露するものです。

『古事記』の有名な文章、『豐葦原瑞穂国』に付いての、小生の珍説を書かせて戴く訳ですが、それには、〔〕(ヨシ)に付いての様々な準備と前書きが必要となりますので、暫くの間、お付き合いをして下さい。


 (一)葦(ヨシ)の種類及び(名前)呼び名に付いて 


日本各地の河岸や湿地に群生しているイネ科のヨシ属には、(ヨシ)(セイタカヨシ)(ツルヨシ)の三種類がありますが、此処では、その内の(ヨシ)と(セイタカヨシ)に付いて触れたいと思います。


先ず、その(名前)呼び名の〔葦(アシ)〕の件ですが、アシの音が〔悪しき〕に通じるので、それを忌み嫌って(ヨシ)と呼ぶようになったそうです。(時期は不明・・・)


従って、今日では多くの書物で(ヨシ)を使っていますが、このレポートでは昔の事柄にも触れる関係で〔葦(アシ)〕を使う時もあります。予めご了承下さい。


次の二枚の写真は、2004年10月に横浜市鶴見区の河川敷で撮った(ヨシ)の写真です。


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又、次の二枚の写真は、同日に鎌倉市笛田で撮った(セイタカヨシ)の写真です。



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これ等の写真からも分かるように、両者は(高さ)と(葉先の方向)とが著しく異なっております。


その辺のところを、平成2年4月発行の北隆館『野草大図鑑』から抜粋しますと・・・


ヨシ(アシ)  


山間から海辺に至るまで、広く水湿地に生育する。葉は二列につき、風向きによって片葉のヨシとなる。〔高さ〕100~300cm 


セイコノヨシ(セイタカヨシ) 


河岸や海辺の湿地に生え、葉の先がヨシのように垂れずに真っ直ぐに立つことが外観上の特徴である。〔高さ〕200~400cm 


と、書かれています。


これで、(ヨシ)と(セイタカヨシ)に付いてのおおまかな違いを申し上げましたが、(セイタカヨシ)に関しては、他に二つの名前がありますので、次に、それに付いても触れたいと思います。


一つ目の名前は(セイコノヨシ)です。


「西湖」とは中国の淅江省・杭州市にあり。中国十大景勝地の一つと云われる有名な湖で、その名に因んで(セイコノヨシ)と命名されたそうです。

花屋さんが広めた商売上の雅称かと思います。


そして、今一つの名前が(ウドノノヨシ)です。


大阪府高槻市の淀川右岸に群生し、「鵜殿の葭」がその語源で、毎年二月に行われている「鵜殿のよし原焼き」は余りにも有名です。


「鵜殿の葭」は雅楽の管楽器(ひちりき)のリードとして用いられ、又、彼のシーボルトが纏めた「出島の植物(1828)」にも、(ウドノノヨシ)が見られます。


説明が遅れましたが、この(セイタカヨシ)の語源は、読んで字の如く、背の高い(ヨシ)の事です。


以上で、(セイタカヨシ)(セイコノヨシ)(ウドノノヨシ)と云う三つの名前がある事を紹介して、この項を終ります。


 (ウドノノヨシ)に関しましては、予てから「鵜殿ヨシ原研究所」に問い合わせをしていましたところ、過日、ご返事を頂き感謝すると共に、その要旨「鵜殿に群生しているのは(ヨシ)で(セイタカヨシ)ではない」を理解するものですが、このレポートでは名前の列記を主としていましたので、変更なしで進みたいと思います。ご了承下さい。


 (二)名前は(セイタカヨシ)を使用する 


名前(呼び名)が三つもあると少々困った問題が生じます。個人でしたらどの名前を使ってもOKですが、公の場合はその様には行きません。


例えば、前項で紹介した『野草大図鑑』では(セイコノヨシ)(セイタカヨシ)と、併記方式をとっています。


それも、無難な一策ですが・・・


偶々、小生の手元に47都道府県の『植物誌』及びそれに準じる資料(1929~1998)が有りましたので、それに依って名前の頻度を調べたところ・・・


(セイタカヨシ)だけの単記方式                11冊

(セイコノヨシ)   〃                      7冊

(セイタカヨシ)(セイコノヨシ)の併記方式          11冊

(セイコノヨシ)(ウドノノヨシ)    〃             3冊

(セイタカヨシ)(セイコノヨシ)(ウドノノヨシ)の三記方式   1冊


と、あまり差の付く結果が出ませんでしたが、このレポートでは一応有利な(セイタカヨシ)を使わせて頂く事に致しました。ご了承下さい。 


尚、(セイタカヨシ)が分布していない都道府県の『植物誌』等は外しました。


さて、(セイタカヨシ)の三つの名前に付いて書きましたが、この件は次項に続く参考にもなると思います。よろしく、ご承知置き下さい。


                              (続く)