山本祥一朗の酒情報 -85ページ目

山本祥一朗の酒情報

山本祥一朗の酒情報

30年以上も前の拙著に『日本産ウイスキー読本』というのがある。そこでは当時のウイスキー会社の社長との対談を収めてあるが、ニッカの竹鶴威氏との話の中で、原酒の樽を作っていた職人さんが、元は桶屋だったが商売にならないのでウイスキーの樽作りに来たそうで、その仕事の一部である輪っかをはめる作業などを体験させてもらった、という話題が出した。今は機械で締めているが、縁の下の力持ちといった作業で、その他にも燃料をくべることなども体験したと話した。いわゆる労働の部分である。

NHKの『マッサン』を見ていると、ウイスキー造りのこのような隠れた部分の話を実感として思い浮かべる。マッサンがスコットランドでおそらく体験したであろう、このような下積みのウイスキー造りを日本でも、という気持ちはわからないではない。

竹鶴政孝氏が会長として存命の頃、ニッカの営業担当重役が「お客様の前でも会長は弊社の安いウイスキーを飲まれるのは困ります」とボヤいていたのを思い出す。安いウイスキーも、それなりに可愛いのである
(写真は樽作りの作業と燃料をくべる作業の筆者)

燗酒がいい季節になってきた。写真にあるのは東京の酒問屋の発案から作られた旗で、酒販店の店頭に飾られているもの。

そして右は、今は亡き佐々木久子さんに拙著を贈った際に、返事として受け取った私信。この人は、とことん燗酒に入れ込んでいた。

そもそも燗酒のルーツは、藤原冬嗣(775~826年)という人が嵯峨天皇に差し上げるのに寒いからと、酒を温めたのが初めとされている。その頃に中国では白楽天が「林間に酒を温めて紅葉を焚き……」と詠んでいる。つまり8~9世紀の頃が最初ではないか、といわれている。

その頃の記録からは重陽(ちょうよう)の節句(9月9日)から翌年の上巳(じょうみ)の節句(3月3日)が燗にいい季節だが、これらは旧暦のため、現在ではひと月ほど後になる。

電子レンジが発売されたばかりの頃に「サンケイスポーツ」から、目かくしで電子レンジでつけた酒と湯燗でつけた酒を同じ温度で見分けてほしい、と言われて立ち会ったことがあった。それを数回やって100%当てたところ、どうしてわかるのかと訊かれた。電子レンジでの酒は味がフラットでわかりやすい、と答えたことがあった。

最近になってクラフトビールが脚光を浴びつつあるようだが、かつて20年ほども前に長野県軽井沢で立ち上げたヤッホーブルーイングのクラフトビールを見に行ったことがある。

最初は「よなよなエール」などほんの少量を造っていたのが面白かったので、当時私が「酒のバスツアー」で酒蔵めぐりをやっていた企画に乗って、軽井沢のこのビール会社と近くの橘倉(きつくら)の日本酒の蔵元を訪ねるツアーを行った。宿泊は軽井沢の星野リゾートに一泊二日である。

このクラフトビールの会社であるヤッホーブルーイングが、9月にキリンビールと提携した。これでキリンビール社が「SPRING VALLEY BREWERY」の33.4%に当たる株を保有することになった。クラフトビールがこの機にどのような進展を見せるか、注目される。

写真は軽井沢の星野リゾートに泊まった時に浴場に掲げてあった看板。ビール会社の風呂場にふさわしい。