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山本祥一朗の酒情報

山本祥一朗の酒情報

読んだ本のことを訊かれることが多いので、続きとして書いておく。

『絶筆…日本人への遺言』(草柳大蔵)。これは著者が2007年7月に亡くなった後に海竜社から出た本で、付き合いのあった女性編集者がまとめたものである。

私は草柳さんが仙台放送で「サンデー・トーク」という日曜日の30分番組に呼ばれて、10月1日の日本酒の日に出掛けたことがある。それを10年ほど前の「山本祥一朗・酒の著作35周年」の会にビデオで放送した際にご連絡したところ、「出られないので代わりに娘を出席させる」との連絡を頂いた。

上記の本は、まさに「絶筆」にふさわしいまとまりようで、国家の根幹は教育にある、教育再興の最後の選択、難を知る、時を知る、足るを知る、退を知る、命を知る、人生常在戦場、わが事において後悔せず……といった見出しにある通り、ここには草柳さんのエッセンスがつまっている。共演した酒談義にも味があった。

嵐山光三郎という人は、週刊誌で有名人の顔真似をした写真を出すなどしているのを見て、イヤ味な奴だなあと思っていた。

それが『退歩的文化人のススメ』という本のタイトルに魅かれて、この本を読んでみたらこれがめっぽう面白い。

中のエピソードに、かみのやま競馬に仲間8人と行った時にS潮社のI井スバル君が3連単8万円の馬券を1,000円買って80万円になった。帰りの新幹線でI井君が「車内販売を好きなだけ買ってやる」というので、「じゃあ全部買ってくれ」といったらI井君は困った顔をした、という話などが披露されている。

このI井君には私も浅からぬ縁がある。I井君が最初に旅行雑誌の編集者だった頃、私に原稿依頼があったのだが、その後、山口瞳さんの紹介で新潮社へ移ってからも付き合いがあり、先年に出した『酒つながり』(社会評論社)の中で宮脇俊三さんと対談したのも、このI井スバルさんの段取りだった。石井スバルと名を出してもいいだろう、好漢である。
西村隆治著『灘の蔵元三百年――国酒・日本酒の謎に迫る』(径書房・1,700円+税)はなかなか読みごたえがある。

最初の「今、日本酒が新しい」にはじまって、「色、香り、味からみた日本酒」「日本酒の謎に迫る」「日本酒を楽しむ」「日本酒の歴史と文化」「国酒・日本酒の真相」「日本から世界へ羽ばたく日本酒」の全七章の中に、かなり細かく分析がなされている。

著者は沢の鶴十四代目ということで、先祖のことにも触れながら今とこれからを巨視的に語っているところに好感が持てる。

冒頭から、ソムリエが日本酒を見直したエピソードを重ねているが、日本酒と料理との相性を社員にも徹底し、燗の適温などを社員の名刺の裏面に印すなど、細めな配慮も行き届いている。

酒の仕事に携わる人にとっては必読の本ではないかと思う。