野坂昭如を支える夫人の介護ぶり | 山本祥一朗の酒情報

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「野坂昭如の酒」については拙著『酒つながり』(社会評論社)の中に書いていて、当人にも贈ったが、その酒から身の回りの細々としたリハビリのことについては、夫人の野坂暘子さんが『リハビリ・ダディ』(中央公論社)に書いている。これが面白い。

野坂からの求愛で、宝塚の乙女時代から作家の女房に転身するも、野坂は直木賞を獲ったかと思えば、歌手として紅白歌合戦を目指すといったり、キックボクシングやラグビーをやったり、参議院、衆議院に立候補するなどいろんなことに首を突っ込む。

その挙げ句が要介護で78歳を迎えた時点での手記である。この手記を読むと、元気な頃のダンディーだった野坂のプライドを、傷つけないように心しながら介護する夫人の心情は実に見事である。

夫人は赤坂で画廊を経営し、その場所で月に2~3度、宝塚時代から唄っているシャンソンを披露しているとか。