『老化も進化』(講談社)という本で、これはいわば自伝だが、なかなかよく出来ている。昭和7年生まれで、この本を書いたのは50数年の役者人生を経てからのことだから、70歳を越えていた。「無名塾」という役者志望の若者を月謝無料で育てたり、その塾を一緒に支えていた妻を早くに亡くしたりした経験を綴ってあるが、芝居を演じることで人を喜ばせ、感動させることに全力でぶつかっていく様が心を打つ。
芝居を見て感動するのは、演者に酔わされることである。優れた美術に感動し、文学に感動するように、演劇に感動するのである。これは受ける側が、いわば酔った状態になることだといってもいいのではないか。
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