ハンガリーのブダペストからイスタンブールへの2泊3日の移動の後半は、ギリシアのテッサロニキからイスタンブールまでの約600キロ。まずテッサロニキからトルコの国境までは鉄道で移動。何度か乗り換えながらも、そこそこの長距離路線だった記憶があるが、客車2-3両編成くらいの列車。私が保育園生くらいの頃(昭和52~53年あたり)に走っていたのと同じくらい古そう。車窓もひたすらヒマワリ畑だったりと、日本の田舎のローカル線の雰囲気に近い。7月のギリシアは晴天が続くらしい。ひたすら窓から外をぼーっと眺めて時間をつぶした。今思えばかなり贅沢な時間である。

 

夕方ごろにトルコ国境の街に到着し、そこからイスタンブールまでの約300キロの道のりはトラックをヒッチハイクしようとした。最初は先ほど降りた鉄道駅の前で捕まえようとしたが、なかなか捕まらない。すると近くを通りかかったバイクのおじさんが私を見かねて街外れの国境まで乗せて行ってくれた。その後もしばらくトラックが捕まらなかったが、ついにトルコに帰るというトラックのおじさんが乗せてくれることになった。周囲のトラックとは明らかに2-3世代古い年季の入ったトラックだったが、積載する荷物も無く身軽そうだ。やれやれ助かったと思った。ところが、おじさんのトラックはかなり遅かった。周りの車たちが次々と抜き去っていく。ここからはイスタンブールまでは距離にして300キロくらいなので、夕方に出発しても、うまくいけば日付が変わる前にイスタンブールへ着くかなと思っていたが、そうはいかなそうだった。

夜8時くらいになると、おじさんはトラックを路肩に止めた。食事の時間である。それも自炊である。トラックのスペアタイヤが積載されているあたりに道具入れが設置されていて、ガスボンベや調理器具が入っていた。私にも何か作ってくれたが、デザートにスイカをいただいたこと以外はあまり記憶がない。食事までご馳走してくれて、本当にありがたかったが、早くイスタンブールへたどり着きたかった。

 

↑イスタンブールまで乗せてくれたおじさんと夕食のひととき。手前にはガスボンベ。折り畳みの椅子も貸してくれた。

 

その後トラックはゆっくりながらも順調にイスタンブールへ近づいた。いよいよ夜中になり、ウトウトしていたところで、おじさんに起こされた。「イスタンブールに着いたぞ。ここで降りなさい」と。あたりを見渡すと、高速道路の料金所のようなところであった。イスタンブール市街地からは少し離れた場所で、料金所の周りは何もなさそうだ。おじさんは目的地までもう少しトラックを走せるが、ここがイスタンブール市街地に一番近い場所らしい。とりあえずお礼を言ってトラックを降りた。さて市街地までまたヒッチハイクかなと思っていたら、料金所の端っこに停車しているパトカーが目に入った。このパトカーなら市街地まで連れて行ってくれるかもしれない。さっそく近づいて行って事情を話すと、ちょうど市街地の警察署に戻るところだったらしく、乗せてくれた。30分くらいで警察署に到着。深夜2時くらいだったので、明け方までロビーの長椅子を借りることにした。ここで3-4時間ほどウトウトした。そして明るくなってきたころ、寝不足でいつもより重いザックをよいしょと担いで、安宿のある地区に向かった。何人もの人の親切に頼った移動であった。

 

(つづく)