「ルーマニアのSFアニメーション」と言っても、
日本ではピンと来る方は多分おられないと思うのですが、
今回はそういった作品をご紹介いたします。
『デルタ宇宙計画』(1984)
Misiunea Spațială Delta
Delta Space Mission
La Mission Spatiale Delta
La Mision Espacial Delta
【監督】(Regia)
ヴィクトル・アントネスク(Victor Antonescu)
【脚本】(Scenariul)
アンドレイ・バカル(Andrei Bacalu)
ヴィクトル・アントネスク
【音楽】(Muzică)
ジョルジェ・コパチ(George Copaci)
【スタジオ】(Studioul)
アニマフィルム(Animafilm)
《資料》
http://www.imdb.com/title/tt2457504/
http://victor.tfm.ro/tag/misiunea-spatiala-delta/
Misiunea spațială Delta - Wikipedia Română
ロボットとロボット(Roboti și Roboti)
https://www.youtube.com/watch?v=11D2Cj6NSsw
ルーマニア史上初のSFアニメーションと言われる、
『デルタ宇宙計画』(Misiunea spațială Delta)は、
2年程前の記事で既に紹介していましたが、
当時はYouTubeなどの動画サイトにその映像が出ていませんでした。
デルタ宇宙計画(Misiunea spațială Delta, 1984)ルーマニアのアニメ
が、1年程前にYouTubeに出ているのを確認し、Twitterで紹介。
https://twitter.com/otsukasatoru/status/478159743446290433
で、最近色々と落ち着いたという事もあり、
今回やっと映像を伴って紹介する事ができました。
「デルタ宇宙計画」は、Wikipediaによると、
短編が4話まで制作されているそうですが、
その全てがYouTubeに出ています。
1:遺物(Relicva)
2:放浪からの脱出(Recuperare Ratata)
3:大海の惑星(Planeta Oceanelor)
4:ロボットとロボット(Roboti și Roboti)
各話はそれぞれ、8分くらいの様です。
(YouTubeに出ている順番と、Wikipediaでの順番はズレています)
作品を観た感想なのですが、
やはりというか、目の肥え過ぎている日本人には、
デザインをもうちょっと洗練させた方が良いかなとか、
主人公の風貌がそれ程魅力的に見えないとか、
色々とツッコミ所はあるかと思います。
厳密には、中々洗練されているデザインもあれば、
70年代ロボットアニメに出てきそうな洗練されていないデザインもあり、
ムラがある感じです。
でも、「ルーマニアでSFアニメ」といっても、日本では通常、
想像もできないですもんね。
何よりも、「ルーマニア史上初のSFアニメーション」ですから、
デザインの完成度はともかく、
記念碑的という意味では重要な作品ではないかと思います。
また、内容的には、適度にアクション性がある上に、
ギャグも盛り込まれており、中々見応えはあります。
主人公たちを補佐するロボット『ロビ』です↓
お茶目で愛嬌のある所が中々気に入っているのですが、
主人公たちの命を助けたり、調査対象を的確に分析したりして、
中々の大活躍です。
「宇宙戦艦ヤマト」の「アナライザー」とか、
「スター・ウォーズ」の「R2-D2」
などの流れを汲むロボットでしょうね。
これを見て「スター・ウォーズ」の「デス・スター」を思い出したのは、
私だけではない筈?↓
と思っていたら、
同じ題名の別のルーマニアのSFアニメーションを発見!!
『デルタ宇宙計画』(長編版)
Misiunea spațială Delta
【監督】(Regia)
【脚本】(Scenariul)
カリン・カザン(Călin Cazan)
ミルチャ・トイア(Mircea Toia)
【音楽】(Muzică)
カリン・イオアキメスク(ヨアキメスク)
Călin Ioachimescu
【制作会社】(Producție)
アニマフィルム
【時間】
68分(min)
https://www.youtube.com/watch?v=n5rEpI0DY6w
こちらは、長編アニメーション版となっておりますが、
アントネスクの短編版をまとめたものではなく、それとは別物です。
アメコミ的というか、バンド・デシネっぽく、
デザインは中々洗練されています。
メビウスとかの影響を受けているのでしょうか?
(メビウスの作品は余り見ていないので何とも言えないのですが・・・)
心象風景を描いた幻想的描写もあります。
監督は、短編版とは違って、ヴィクトル・アントネスクではなく、
カリン・カザンと、ミルチャ・トイアという人でした。
登場人物は、短編版にはいなかったものが多数出ており、
主人公の名は、ダン、
短編版では主人公の相棒的存在だった金髪の女性は、アンナ、
黒髪で黄色い肌の男は、ヤシヴォ、眼鏡の黒人女性は、アニカ、
というのが何とか判明しました。
因みに、セリフを聴けば分かるかと思いますが、
YouTubeに出ているのは、フランス語版です。
中でも、赤茶の髪に緑の肌をした女性、アルマの活躍度が高く、
実質主役といっても良いかも、と思いました↓
(「アバター」を思い出してしまいました)
アルマの相棒的存在の、蛙の様な生物は、意外と大活躍します↓
(騙し絵版画で有名なエッシャーの「カールアップ」を彷彿とさせる?)
「カールアップ」は確か英語だから、オランダ語ではどんな名前なのか?
と思って調べてみた所、日本語で紹介・解説しているブログを発見。
エッシャー「階段の家」 トリックアート絵画 - トリックアート ~だまし絵の美術館~
スーパーエッシャー展 - 中国茶-My Secret Pleasure-
架空の生物ながら、
「ペダルテルノロータンドモーヴェンス・セントロクラートゥス・アルティクロースス」
(Pedalternorotandomovens centroculatus articulosus)
という学名が付けられ(作者が勝手につけた?)、その他には、
「ヴェンテルテーフィエ」(Wentelteefje)
≪直訳「転げまわる雌の子犬」「オランダ風フレンチトースト」≫
「ロルペンス」(Rolpens)
≪直訳「巻きソーセージ」「回転する第一胃」≫
という通称があるそうです。
まあ、日本語訳するならば、「回転虫」とするのが無難ではないか、と。
因みに、「エッシャー」(Escher)も英語的な発音だと思いますけど、
地元オランダでは「エスヘル」と発音しているのかと思いきや、
意外と「エッシャー」と発音している様です。
http://ja.forvo.com/search/Escher/nl/
ついでにいえば、ディック・ブルーナの「ミッフィー」は、地元オランダでは、
「ナインチェ・プラウス」(Nijntje Pluis)
という名前だそうです。
(ゾーノミミゾーさんのブログで知ったんですけどね)
アルマの乗る小型機は、
「ファンタジーゾーン」の「オパオパ」を彷彿とさせる?↓
(地上では二本の足が出で、滑走時は、二足走行するのです)
因みに、「オパオパ」とは?
シューティングゲーム「ファンタジーゾーン」(1986)の主人公の名前です↓
https://www.youtube.com/watch?v=thlDTKcvHXE
主人公たちの乗る宇宙船(着陸状態)↓
人工知能でしょうか(今回の騒動の鍵を握る?)↓
(「2001年宇宙の旅」の「HAL 9000」みたいな?)
この記事を書いている時、
ルーマニアのSFアニメーションを他にも発見してしまいました。
https://www.youtube.com/watch?v=xgH-tPJXILY
『最後の任務』
Ultima Misiune
The Last Aassignment
La Última Misión
La Dernière Mission
というのですが、
「デルタ宇宙計画」にも関わっている、
ミルチャ・トイアと、カリン・カザンも、
このアニメーションの制作に携わっています。
制作スタジオは勿論、アニマフィルム。
10分ほどの短編ですが、動きが細かく丁寧な上に、
バンド・デシネの影響でも受けているのか、
デザイン的にも中々洗練されていると思います。
しかし、残念に思う所は、内容が地味で、
話が中途半端で終っている様な感じの上に、
切ない気分にさせられる後味の悪い結末であるため、
期待をし過ぎると裏切られる感じではあります。
その上、WikipedaやIMDbなどの映像資料サイトにも、
情報が出ていない様です。
YouTubeに出ている映像も、フランス語版です。
どこかの星に不時着した、救援を求めている女性宇宙飛行士↓
結局、この女性を救出するに至るまでお話は続かなかった。
親子3人で宇宙ロケットの旅をしていた少年↓
運悪く両親とはぐれ、木々が鬱蒼と生い茂る星に不時着。
その星に降り立った後、猛獣に遭遇。果たして彼は無事か?
最後に、走馬灯の様な場面が出てくるのが気になる・・・。
制作年については、YouTubeに1978年と出ていて、
もしその情報が正しいのであれば、この作品こそ、
ルーマニア史上初のSFアニメーションという事になるのですが、
実際はどうなのでしょうか。
音楽を担当したのは、
ロディオン・ラディスラウ・ロシュカ(Rodion Ladislau Roșca)
だそうですが、如何にもファミコンとかの、
初期のゲーム音楽っぽい所が印象的です。
ジョルジェ・コパチやカリン・ヨアキメスク共々、
彼らがどんな音楽活動をしているのか、いずれ、
詳細に調べて紹介できたら、と思っています。
『星の子ども』(1988)
Fiul stelelor
【監督】(Regia)
ミルチャ・トイア
【制作スタジオ】(O producţie a Studioului)
アニマフィルム
《資料》
Afise romanesti din templul filmelor de altadata (IV)
Listă de filme animate românești - Wikipedia Română
こちらは、映像がいまだに動画サイトに出ておらず、
基本情報も、殆ど監督の名前と制作年位しか分からず、
ポスターと思われる画像も幾つかネット上に出ているのみ・・・。
ポスター画像を見た限りでは、スターウォーズからの影響を感じました。
(ダース・ベイダー的なキャラクターとか)
残念なのは、主人公と思われる人物が、
余り魅力的に描かれていない所。
ミルチャ・トイアは、「デルタ宇宙計画」にも、「最後の任務」にも、
「星の子ども」にも携わっている様ですね。
でも、ネットの情報では、殆ど、
ルーマニアアニメーション史で語られる程度の存在の様です。
何だか勿体無い気がします。