LOOK
DVDにて映画「LOOK」を鑑賞。
僕はこの映画が、たまにテレビでやっているような、監視カメラが撮った衝撃の映像集だと思っていた。
というのも、この映画のCMで、「ドキュメンタリー」という言葉を謳っていたからだ。
僕のように勘違いして、この映画を見た人は少なくないと思う。何か騙された気分だ。
実際は、「ドキュメンタリー風映画」であり、撮影を監視カメラが捉えた映像のように行い、作品にリアリティを持たせる手法を用いている。
作品の内容はしっかりしていると思うが、僕はこの手の映画があまり好きではない(「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、「クローバーフィールド」等)。でも、かなり前に、「ありふれた事件」という映画を見たが、その作品は面白かった。
採点/40点
アキレスと亀
DVDにて映画「アキレスと亀」を鑑賞。
僕は北野武が監督した作品をすべて見ているが、北野監督作の中では、比較的解り易い作品になっている。
タイトルの「アキレスと亀」とは、足の速いアキレスが、鈍足である筈の亀と競争しても勝てないことを証明する数式上のパラドックスを意味する。
このタイトルに色んな解釈があると思うが、僕は「アートという不可解なもの」と「アートに人生を翻弄されてしまった夫婦」の追いかけっこがタイトルの由来だと思った。
作品の中に、北野監督の描いた絵が沢山登場するが、あまりにも頻繁に出てくるので、「HANABI」の時のような強烈な印象は残らない。
しかし、北野監督の真骨頂は「暴力描写」と「間(ま)」だけだと思っていた僕にとって、この作品が新鮮に映ったのは事実だ。
僕はこの作品を全く期待していなかった。「DOLLS」の二の舞になると思っていたのだ。人にはそれぞれ得意分野がある。スコセッシが監督したラブコメは見たくないし、カーペンターが監督した社会派ミステリーなど誰も見たくないのだ。
僕の予想に反して、「アキレスと亀」は期待以上の出来だった。
でも、北野監督にまた(純粋な)暴力映画を撮ってほしいと願っているのは、僕だけじゃないと思う。
この作品を100点満点だと言う人もいるだろう。おすぎなら、10点と採点し酷評するかもしれない。
つまり、それがアートの本質だ。作品は100点でもあるし、10点でもある。
この作品の版権を10億円で買う人がもしいれば、この作品は10億円の価値があるのだ。所詮、アートの価値なんて不可解なもの(一部の金持ちと、詐欺師まがいの美術商)で決められている。芸術(アート)の価値なんて誰も分かっていない。北野武はそれを良く理解している。この作品は、北野監督の芸術論そのものだ。
採点/75点
ミッドナイトイーグル
テレビで放送した映画「ミッドナイトイーグル」を録画してあったので、夜更かしして見た。
何でこんなにカメラが寄るの。登山してる時も、銃を乱射してる時も、雪崩が起きた時も、もう役者の顔、どアップだよ。
もっと画面を広く使って!これ映画の基本だよ。テレビで見た僕でさえ、きつかったんだから、映画館でこの作品を見た観客は、スクリーン一杯に顔だけを映されたのだから、それはもう堪ったもんじゃない。
この監督がどうかは知らないが、テレビの業界から来た監督さんに、このタイプが多い。スクリーンサイズを意識せずに撮ってしまう。
ストーリーもどこかで聞いた事のあるようなお話。
大沢たかおをもっと活かせる筈なのになぁ。
先日、日本アカデミー賞でのコメントでも記載したが、映画には「おくりびと」みたいな情熱が大事なんだなぁ。
「こんなキャスト、こんなストーリー、こんな雰囲気で、どないでっしゃろ?」等という安易な考えで騙される程、観客は馬鹿ではありません。
採点/20点
第32回 日本アカデミー賞
今日は第32回 日本アカデミー賞について。
今回、ノミネートされた作品は比較的良質な作品が揃っていたと思う。
最優秀作品賞 おくりびと・・・誰も何も言えねぇー。文句ないでしょ。映画は情熱で撮るものなのだよ。
最優秀監督賞 滝田洋二郎・・・滝田監督はもっと評価されてもいい監督だ。僕はずっとそう思っていた。
最優秀主演男優賞 本木雅弘・・・作品への情熱、愛が他よりも勝っていた。そういうものが映画には大事である。
最優秀主演女優賞 木村多江・・・良かったね。木村さんの受賞が素直に嬉しい。心からおめでとう。
最優秀助演男優賞 山﨑努・・・スピーチが良かった。さすが名優。受賞に関して、誰も文句は言えないでしょう。
最優秀助演女優賞 余貴美子・・・受賞は以外だったが、僕は「ヌードの夜」の余さんが、好きです。
日本映画界を代表するスター達が勢揃いするアカデミー賞の会場。その中でも一際輝いていた俳優が何人かいる。堺雅人(映画界にその名を刻む役者になると思う)、広末涼子(可愛い過ぎるだろ)、吉高由里子(何だ、この存在感)の3人だ。この3人に、僕の目は釘付けになっていた。今後、一層の活躍を期待したい。
今回は、最優秀作品賞の「おくりびと」を撮った滝田洋二郎監督が最優秀監督賞を受賞した。当然の話だ。ずっと思っている事なのだが、最優秀作品賞を受賞した作品を撮った監督が、最優秀監督賞を受賞するのは当たり前の事だ。だから、最優秀監督賞というのはいらないと思うんですけど・・・・・・。そう思っているのは、僕だけでしょうか。
20世紀少年 第1章 終わりの始まり
先々週になるが、映画「20世紀少年 第1章」をDVDにて鑑賞した。
マンガを実写化するのには、それなりのコンセプトが必要だと思う。敢えて、マンガを実写映画化する必要があるのかという部分だ。
ただ、商業的な成功を収める為、売れているマンガを手っ取り早く映画化するという考えだけでは、良い作品が出来るはずがない。
僕はマンガの「20世紀少年」の大ファンだが、同じ映画化するのなら、せめて「MONSTER」みたいに、アニメとして製作して欲しかった。
ただでさえ荒唐無稽な話を、原作のキャラクターにそっくりな役者を配し、マンガの構図そのままのカットを採用して映画を撮れば、この程度のものしか出来ない事くらい、分からなかったのかなぁ。
第2章からは、原作と違う展開を期待したい。最終章である第3章まで、まだ見ていないので、この時点で評価するのはどうかと思ったが、取り敢えず純粋に「第1章」のみの評価をしてみました。あと、子役の演出が悪過ぎるよ。
採点/20点
PLATONIC SEX / 飯島愛
今更かもしれないが、飯島愛の「PLATONIC SEX」を読んだ。
昨年の12月に彼女が亡くなった事もあり、かねてから気になっていたこの本を購入し、もっと深く彼女を知りたいと思った。
僕と同世代の男性からすると、飯島愛は特別な存在だろう。
僕等はAV女優としての飯島愛、タレントとしての飯島愛。その2つの彼女の顔をリアルタイムで知っている。
僕は飯島愛が好きだ。AV女優としてではなく、バラエティー番組で毒舌を吐きながらも、何処か憎めない笑顔を振りまく彼女が、僕にはとても魅力的に映った。
確かに、彼女の人生は壮絶だった。その早過ぎた死を、悲惨に感じる人もいたかもしれない。
だけど、僕は彼女が可哀想だとは思わない。彼女は、36年という人生の中で、多くの人に愛され、時に傷付きながらも、他の誰より充実した人生を送ってきたと思うからだ。それはもう、ただ毎日をダラダラ生きている僕のような人間が羨ましくなる位、素敵な人生だったろう。
人の人生を、人が勝手に決め付けてはいけない。僕はせめて彼女は幸福な女性だったと思いたい。
そして、僕はクリスマスイブが来る度に、飯島愛を思い出すだろう。
この本の中で印象に残ったフレーズがある。
「入れたいの。あなたのお尻の穴に私の舌を入れさせて。神さま、お願い。」
このフレーズを聞いて、「飯島愛は変態!」だの、「女の癖に何て破廉恥な人間!」だの、「羞恥心はないのか!」だの・・・・・・。そういう批判しか出てこない人間は、本当の愛についてもっと深く考えるべきだ。
そして、性的な意味にしか考えが向かない自分自身こそが、本当はいやらしい人間なのだと知るべきだ。
僕は、この恋人に向けて書いた彼女の日記を読んで、涙が出た。
無垢で、繊細で、激しくて、それでいて優しい。
このフレーズに出合えただけでも、僕はこの本を読んで本当に良かったと思う。
採点/故人に哀悼の意を表して、100点満点。合掌。
たみおのしあわせ
映画「たみおのしあわせ」をDVDにて鑑賞。
役者が監督した作品は、当たり外れが激しい。
「そんなセンスでよく役者やっていけるな」というパターンと、「あんた、監督だけでも喰っていけるよ」というパターン。この作品は、正に「後者のパターンの奴や!」
まあ、この作品を監督した岩松了は、劇作家、演出家としても活躍している役者なので、映画監督としての才能があっても、何ら不思議な事ではないのだが・・・・・・。因みに、僕は役者としての岩松了も好きだ。
息子の結婚式に至るまでの、ある父子の話なのだが、ラストの展開がかなり良かった。
何よりも出ている役者が良い味を出している。原田芳雄、オダギリジョー、麻生久美子、大竹しのぶ、小林薫etc・・・・・・。
父親と息子の掛け合いなどは、原田芳雄とオダギリジョーでなければ間が持たなかったのではないかと思ったし、花嫁が麻生久美子でなければ、心揺れ動く父親の心情に感情移入出来なかったかもしれない。
役者から良い演技を引き出すというのも、監督の手腕に依るところが大きいと思う。
脚本のセンス、演出、キャスティング、音楽など、すべてが及第点に達している佳作です。
採点/85点
チェ 28歳の革命/39歳 別れの手紙
「チェ 28歳の革命」、「チェ 39歳 別れの手紙」の2本を映画館へ見に行った。
ゲバラ大好き(いつもゲバラのTシャツ着てる)、デル・トロ大好き(昔、試写会に足を運んで、本人に会いに行った)、ソダーバーグ大好き(「トラフィック」は大傑作)。
なのに、僕は2本とも、途中で少しだけ眠ってしまった。これだけのお膳立てが揃っているのに何故?
因みに、映画の中盤辺りで途中退席する観客に、僕はこの作品で初めてお目にかかった。
作り手側が、ゲバラをあまりにも尊敬するばかりに、事実だけを描こうとしたところに、この作品の欠点がある。
観客は、ゲバラが何処の戦場で、どういった戦いをしたのかという事を知りたいのではなく、ゲバラという人間そのものに興味があるのだ。
ゲバラの真実を知りたいのであれば、いくつものドキュメンタリー映画や本が出ているので、そちらを見れば良い。所詮、事実を基にして描かれた映画は、作り物でしかないのだから。
「出来事や事件を描くのではなく、人間を描く」というのは、脚本を書くうえでの基本中の基本だ。
多少の嘘が入っても良い。そういった意味では、NHKの大河ドラマとか、井上雄彦の「バガボンド」等は歴史に多少の嘘を織り交ぜ、作品として成功している良い例だろう。
僕は「28歳の革命」のラストシーンのような部分(エピソード)がもっと多く欲しいと思った。小さな出来事で良いから、ゲバラという人間を知る事の出来るエピソードをもっと取り入れて欲しかった。
デル・トロの演技はとても良かったし、「28歳の革命」、「39歳 別れの手紙」両作とも、ラストは好きな終わり方だっただけに、とても残念な気がした。
採点/45点
いのちの食べかた
「いのちの食べかた」というドキュメンタリー映画をDVDにて鑑賞。
牛、豚、鶏、魚、野菜、果物など、僕達が日常で食べているものがどうやって育てられ、どのように収穫されていくのかが描かれている。
タブーとされている屠殺シーンもある。
何のナレーション(説明)もなく、流れ作業で「生き物」が「食べ物」になっていく過程を、カメラはただ淡々と捉えていく。
「自分の手で生物の命を奪った者だけが、その生物を食する権利がある」と誰かが言っていた。
あるテレビ番組で、どこかの国の店先で生きたニワトリが売られている映像が流れていた。それを綺麗な若い女性が家に買って帰り、そのニワトリを絞め殺し、血まで抜き取って、解体する映像が流れた。
僕にはその若い女性がとても格好良く見えた。
彼女は多分、その鶏肉の一片たりとも無駄にはしないだろう。
僕等は、自分の手を汚す事なく、「生き物」を食べる事が出来る。
それは文明が進化していくうえで欠かせない事であり、それ自体が罪になるという事ではない。
問題は、僕等は、自分の食べているのは、「バラ」とか、「ヒレ」とか、「ロース」という認識しか持てない事であり、だから、簡単に食べ物を残すし、その事に対して、何の罪悪感も持たない。
実際には、僕等の食べているのは、かけがえのない幾つもの「命」なのだ。
それが分かれば、食べ物を残したり、暴食したりする事が減っていくと思う。
少なくとも、「大食い選手権」のような番組は少なくなるはずだ。
大人が見てもショッキングな映像が収録されているので、子供に見せるかどうかは意見の分かれるところだが、多くの犠牲のうえに自分達は成り立っているという事だけは子供達に知っておいてほしいと思う。
採点/75点