その男は若い頃、堕落した生活を送っていた。
ぐれたことも、法を犯したこともなかったが、世の中を斜めから見て、いつもふて腐れているような男だった。
体制に対する反抗心は人一倍強いのに、正面切って反発することはなく、組織の命令を無視することで、従わない意志を表した。
そんな態度だから、男はどこに行っても、上からは睨まれ、仲間からは見放され、居場所をなくしては逃げだすことの繰り返し。
周りに誰もいない孤独な日々。
生活は荒み、「人生なんてこんなもんよ」と、うそぶくしかなかった頃、手を差し伸べる者がいた。
「私の身の回りのことをやってくれたら、衣食住は保証しましょう。余った時間で、自分の生活を立て直せばいい」
男は、そんな優しいことを言われた経験がなかったから、何も疑わずに、信じてしまった。
悪魔の囁きとも知らずに……。
それからが、真の地獄の日々。
悪魔は、表向きは資産家で慈善家で、世間に認められた有力者。
だが実態は、窮地に陥った者に巧みに近付き恩を売り、逃げられない様に囲い込んでは、奴隷のように扱う独裁者。
気付いた時には既に遅く、毎日罵倒・恫喝されながら、命令されるままに働くだけの日々。
悪魔の住処では、檻に入れられているわけでも、縄で繋がれているわけでもない。
それどころか、外出することもできる。
でもそれは、見せかけの自由、逃げ出すことはできない。
無理に逃げ出しても、恩を仇で返した愚か者として、誰からも相手にされないのだ。
世間は、老・資産家が、書生を一人面倒みているとしか思っていないのだから。
悪魔は、そこまで計算済みで、今日も男に無理難題を言いつける。
男は今日も、自分の人生を生きることなく、悪魔の世話に奔走する。
男は思う、世の中、上手い話などあるはずがなかったのだと。
人に優しくなれなかった自分が、人から情けを受けられるはずがないのだと。
若かったあの日、なぜ仲間と一緒に戦わなかったのかと。
後悔先に立たず、落ちた罠からは、二度と抜け出せない。
昨日の夕方、ブログを書いている最中に、僕自身が苦しかった時期のことを思い出しているうちに、想像が膨らみました。
でも、実際にありそうですよねぇ。
というか、2時間ドラマで出てきそうな感じですね。
こうなる前に、自力で何とかしたいものです(追記)。
では、また。