世の中の仕事には24時間勤務などの昼夜関係なく働くものもあります。例えば警察やビル管理などの仕事です。もちろん本当に24時間ずっと働いているのではなく、途中に休憩時間や仮眠時間が設けられています。さて、仮眠時間が休憩時間になるのかということが問題になることがあります。
労働法の世界における休憩時間とは、労働者が仕事から完全に解放され、心身を休めるために与えられる時間のことです。そして休憩時間は労働時間ではないので賃金が支払う必要はありません。休憩時間は本当に休憩時間か(労働時間ではないか?)という争いも多いのですが、仮眠時間が休憩時間になるのか?という争いもあります。
仮眠時間が労働時間に当たるのではということで争われた事案で大星ビル事件があります。月に数回24時間勤務のある会社で働いていた従業員が裁判を起こしたもので、概要は以下の通りです。
①24時間勤務中8時間は仮眠時間とされていた。
②睡眠中であっても警報等がなると直ちに対応することが義務付けられていた。
③会社は24時間勤務については時間外労働手当、深夜労働手当は支払われず、少額の「泊まり勤務手当」が支給されていた。
④従業員は仮眠時間は労働時間に当たるとして、時間外労働手当、深夜労働手当を請求した。
裁判所は、労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいうとし、仮眠時間中に作業を行わなかった場合でも、仮眠室で待機し、警報や電話等に対して直ちに対応することが義務付けられている場合は、その時間は会社の指揮命令下に置かれているとして、労働基準法上の労働時間に当たると判断しました。そして、労働者の割増賃金請求を認めました。
さらに、この判決の面白い所は、「労基法上の労働時間であるからと言って当然に労働契約所定の賃金が発生するものではない」と判示しているところです。仮眠時間は普通の労働時間と比べてそれほど忙しくはない(労働濃度が高くない)はずですよね。そうなると一定の泊まり勤務手当で済ませる合意は有効であるとしました。これは労働時間のうちどの部分についてどのような賃金を支払うかは労使の合意(私的自治)の問題であり、仮眠時間は拘束性が低いことを考慮したものと言えます。しかし、割増賃金については労使合意であっても不支給は認められないとされました。