プロ野球のシーズンが終わり、プロ野球選手の契約更改の時期に来ています。年俸が上がったり下がったり、というニュースがテレビなどで流れていますが、年俸制というのはプロ野球選手に限った話ではなく、会社で働く労働者でも適用されることのある制度です。
年俸制とは仕事の成果に応じた賃金を年単位で決定するものです。具体的には前年度の業務実績や評価が基準となり、昇給・据え置き・減俸のいずれかに決まります。(こう見ると、やはりプロ野球選手の契約更改交渉がイメージしやすいですね。)労使話し合って、次年度の年俸が円満に決まれば良いですが、なかなか決まらない、つまり合意できない場合も当然出てきます。こうした場合はどうなるのでしょうか。
合意できなかった年俸制での賃金決定に関して争われた裁判で「日本システム開発研究所事件」があります。会社の業績悪化により、年俸制で働いていた労働者に前年より低い年俸額を提示して、合意できなかった。そこで会社が一方的に次年度の年俸額を引き下げて支給した。これに対して労働者が前年度の年俸額を継続して支払うべきと主張して、前年度年俸額との差額を請求したものです。
裁判所は、会社が労働者との合意なしに年俸額を定める場合は、次の内容を就業規則で明示しており、かつその内容が公正なものである場合に限り会社に評価決定権があるとしました。
・ 年俸額決定のための成果・業績評価基準
・ 年俸額決定手続
・ 減額の限界の有無
・ 不服申立手続等が制度化
争われた会社は年俸制を根拠付ける就業規則が無かったため、労働者の請求が認められたのでした。またこの結果は年俸額決定について、会社の公正評価義務を認めたものと言えます。そして就業規則の定めによって会社の評価決定権が認められるための要件を具体的に示したものと言えるでしょう。