病気やけがでどうしても働けなくなったときのために、休職制度を設けている会社は多いと思います。先に言ってしまうと休職制度は法的な義務ではなく、無くても問題はありません。元々公務員にあった制度を民間でも取り入れた、というような経緯を聞いたことがあります。無くても良いとは言え、優秀な人材の確保や定着を考えると必要と言えるのではないでしょうか。
さて病気などで休職していた人が復職する場合ですが、大体の就業規則は休職するまで就いていた職種で復職させる、という風に定めている場合が多いと思います。反対に言えばそれが出来なければ復職を認めないということになります。こういう決まりが常に通用するかというと、残念ながらそうではありません。
休職からの復職に関して争われた有名判例で「片山組事件」があります。土木建築を業とする会社で現場監督として働いていた労働者から、元々の仕事はできないが、他の仕事ならできると言って復職の申し出がありました。この申し出を会社が拒んだので争いになったという事件です。
裁判の結果をざっくり説明すると、労働者は職種や業務内容を特定せず労働契約を結んでいたので、現場監督以外の仕事もする可能性があったはず。元々の仕事はできないにしても会社には他に従事させる可能性のある仕事もあり、かつその仕事をするという申し出があったのでその通りにすべきだった、と判断しました。(ただこの判例は規模の大きな会社での結果です。あまり職種のない中小零細企業で、他の職種での復職を考えるのはとても難しいと思います。)因みにその後の裁判例では職場復帰の可能性を緩やかに判断しようとするものが少なくないことに注意すべきでしょう。
「片山組事件」は休職制度の説明で、就業規則セミナーでよく取り上げられる判例です。職種限定で採用された場合だと他の職種での復職は認めなくて良いなど、色々な知恵を教えてくれます。就業規則セミナーでは復職に関することで説明が終わることが多いのですが、この判例はそれだけに止まらずもっと奥深い問題を教えてくれます。それは次回のブログで説明したいと思います。