会社で働く場合、会社の業務命令に従って働くわけですが、何でもかんでも命令に従う必要はありません。当たり前ですが、会社の業務命令権は無制限ではありません。無茶苦茶な業務命令は業務命令権の濫用として違法・無効となります。また命令の強制は不法行為になります。

 

では、どのような場合に権利濫用となるかは次の通りです。

①業務命令自体が違法行為を命じるものである場合

②業務命令が懲罰的・報復的な目的でなされた場合

③労働者の人格権を侵害するような内容の命令である場合

④労働組合であることを理由とする差別的な命令である場合

 

業務命令に関する裁判例として「国鉄鹿児島自動車営業所事件」を挙げます。

・勤務する際に国労バッジの着用を禁止していたのに、これに従わなかった労働者に対し降灰除去作業に従事するよう業務命令を出した。

・炎天下での降灰除去の作業中、作業状況を監視され、給水を制止されるなどした。

・これに対し労働者が本件作業命令は懲罰的な報復であり、不法行為に当たるとして損害賠償を請求した

 

これに対し判決は

・降灰除去作業は、職場環境の整備のために必要な作業であり、社会通念上相当な程度を超える過酷な業務に当たらない。
・組合員バッジを着用したまま業務に就くという違反行為を行ったことから、降灰除去作業に従事させたことは、職務管理上やむを 得ない措置ということができ、違法、不当な目的でされたものとは認められない。
・給水を制止した行為も特に違法あるいは不当とはいえない。

 

この判決に対しては組合活動への嫌忌、懲罰目的や見せしめ的要素があるがこれらを見落としている、ひとの尊厳や思想良心の自由など憲法上の権利に対する視点に欠けているという批判があります。