社労士をしている者にとって、仕事で就業規則はよく出てきます。私も今まで多くの会社の就業規則の作成、変更をしてきました。
従業員は就業規則に従って仕事をするということは、空気のごとく当たり前なことなのですが、中には就業規則を見たことない、というより知らない人もいます。そういった人にも就業規則は適用されますが、なぜなのでしょうか。
就業規則の法的性質に関しては「秋北バス事件」が有名です。判例をまとめると、
1、就業規則が合理的である限り、会社と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立している。
2、労働者は個別同意の有無に関わらず、当然にその適用を受ける。
3,就業規則による労働条件の一方的な不利益変更は、原則認められないが、合理的なものである限り、個々の労働者は、同意しないことを理由として、その適用を拒むことはできない。
判例の考え方は約款説をあてはめたものと考えられています。約款説とは「保険契約約款などは、事前の開示と契約内容の合理性を要件として、当事者は約款で定める内容で契約を締結するという事実たる慣習(民法第92条)がある(約款理論)とし、就業規則についても同様に理解する」考えです。実務に当てはめると、合理的な就業規則を作成し周知しておけば、労働者は(就業規則を知らなかったとしても)その内容が労働条件になり就業規則が適用される、ということになります。
なお、約款説には根拠として必要性と許容性があります。
必要性とは会社が多数の労働者に適用する「定型的労働条件」を一律に定める合理的な理由があるか(必要か)という観点です。
必要性のポイントは労働条件の内容の補充や柔軟な労働条件設定があげられます。
許容性とはその就業規則の内容が、社会通念上労働者に一方的に適用することが許されるか(合理的か)という観点です。
許容性のポイントは適正な手続きや、内容がチェックされているかがあげられます。