近年、兵庫県知事の問題に絡んで内部告発という言葉をよく聞くようになったと思います。内部告発とは、組織内部の人間が、不正行為や違法行為を組織外の機関(報道機関や行政機関など)に通報することです。
会社の社員が内部告発すると、された会社の評判や売り上げが落ちる可能性があります。こう考えると内部告発は労働者が労働契約で負う会社の信用や名誉をみだりに傷つけてはならない義務(信用保持義務と言います)に違反しているように見えます。そうなると債務不履行になるし同時に懲戒処分の対象にもなり得ます。
しかし、正当な内部告発には表現の自由が保障されなければなりません。加えて会社の反社会的・違反行為を告発することは社会の共同利益のためにも必要とされることです。
内部告発に関して有名な判例で「トナミ運輸事件」があります。この事件のきっかけとなった内部告発は以下の要件を鑑みて、法的保護に値するとされ、告発した労働者に対して会社が行った人事上の不利益行為は違法であるとされたのでした。
①告発にかかる事実が真実であるか、真実であると信じるに足る相当な理由があること
②告発内容に公益性があること
③告発目的が公益性を実現することであること
④告発方法が不当でないこと
なお、内部告発については2004年に制定された公益通報者保護法で、一定要件を満たす公益通報について、法的保護が認められています。