悪いことをしたら懲らしめる、罰せられる。こういうのは子供でも分かることです。会社で悪いことをすれば、その程度によっては懲戒処分を受けることになります。当たり前のことですが、これって法的にみれば、すごく深いものになります。

 

懲戒処分とは、職場における重大な不利益処分で、会社の課す一種の刑罰のようなものです。刑罰のようなものを課すので、何かしらの法的根拠が必要に思えますが、実は労働契約関係における懲戒については明文の規定が無いのです。「企業は懲戒権を持つ、どういう場合に懲戒できる」みたいに定めている法律は無い、ということです。ちなみに公務員については法律上の規定があります。

 

懲戒権をどういう風に根拠付けするか。この問題を考えるときに非常に有効なのは労働判例なのですが、労働判例がどのように述べているかというと「企業は、企業秩序定立権の一内容として、企業秩序を紊乱した者に対し、懲戒処分できる」としています。つまり企業秩序維持権を根拠として使用者に懲戒権があるとする、この考え方を企業秩序論と言います。

 

懲戒処分は、労働者にとってその後の人生に重大な影響を与えかねない処分です。だからこそしっかりとした法的根拠が求められます。そして就業規則で懲戒事由を明確に定め、懲戒権行使する場合には権利濫用にならないようにすることが厳しく求められるのです。