労働者は、会社の特定した労働時間によっては働くわけですが、会社側としては突発事案などで、柔軟に対応できるように労働時間を変更できるようにしておきたいものです。しかしこの変更は簡単に認められません。

 

変形労働時間制を採用している会社で、労働時間の変更について争われた裁判で「JR西日本(広島支社)事件」があります。判決の内容を簡単に説明すると、

 

①変形労働時間制で一度決めたシフトを後から変更する事は直ちに違法になる訳ではないが、やむをえない場合に限定的かつ例外的に認められるにとどまる。

②就業規則に労働時間の変更条項を定める場合、労働者から見て予測可能である程度に限定的、例外的変更事由を具体的に定めることが必要である。

③会社の就業規則の変更事由は抽象的な内容なので、労働時間の特定の要件は満たさず、その効力は認めらない。

 

以上から、会社が行った労働時間の変更は認められなかったのです。会社側からすれば、予期せぬ事態に対応するための柔軟性を確保したいところですが、変形労働時間制は「あらかじめ計画された」労働時間の配分を前提とする制度であり、事後的な変更の自由を認めるものではありません。

 

また変形労働時間制は、不規則な労働時間になりやすい制度であるので、労働者の私生活や健康なども配慮しなければなりません。その観点からも、安易な労働時間の変更は認められないのです。